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September 02, 2018

ほんとうに衝撃を受け、かつ今でも聞き続けている生涯のお気に入りアルバムを10枚(9日目)

ほんとうに衝撃を受け、かつ今でも聞き続けている(ごくたまにであっても)生涯のお気に入りアルバムを10枚。毎日ひとつずつジャケを投稿する。9日目/10日

Villavicio

Javier Calamaro y su Orquesta Pirata presentan "Villavicio" (Típica 077-02)

(続き)
昨日スピネッタのライヴBOXを取り上げた際、私が初めて「ラティーナ」に寄稿したのは、85年12月号に掲載された「ロックとタンゴの無関係な関係」という記事だったと書いた。そこでは、ロックがレゲエやアフリカン・ビートなどを取り入れるようにタンゴのリズムを導入することは不可能だ、などと書いている。もちろん、20世紀の前半にブエノスアイレスからパリ経由で世界に広まったタンゴのリズムは、さまざまな形で各国のポピュラー音楽に取り入れられているし(「黒ネコのタンゴ」や「だんご3兄弟」も、分類としてはここ)、ロックに限っても、ルイス・フューリーの「ハスラーズ・タンゴ」やスラップ・ハッピーの「カサブランカ・ムーン」のような例はある(よく聴けばどちらも「ラ・クンパルシータ」をモチーフにしている)。私がそこで話題にしたのは、オスバルド・プグリエーセに代表されるアルゼンチン・タンゴのリズムの「揺れ」の特殊性についてである。タンゴには基本的にパーカッションが入らず、ピアノの特に左手と、アルコ(弓弾き)を多用したコントラバスを中心に組み立てられたリズムが、曲の中で揺れながらめまぐるしく変化していく。そのような特殊性ゆえに、反復するビートを基本とするロックやアフロ系音楽とは容易に相容れない、ということを言おうとしていたのである。例外はやはりピアソラだが、70年代のエレクトリックな編成によるジャズ=ロック的なアプローチは、彼が多用してきた3-3-2のリズムを援用することで可能となった。
そんなことを書いたりしていただけに、特に90年代末以降、アルゼンチンやウルグアイのロック系ミュージシャンがタンゴに大胆にアプローチしたり、タンゴ・エレクトロニコという新しいジャンルまでが登場したことを考えると、感慨深かったりするのだ。トム・ウェイツのようなダミ声でタンゴが本来持っていた猥雑な雰囲気を再現する怪人ダニエル・メリンゴ(元ロス・アブエロス・デ・ラ・ナダ)の登場はとりわけ衝撃的だった。女性ヴォーカルのドロレス・ソラーとソングライターのアチョ・エストルのユニット、ラ・チカーナもコンセプトはやや近い。スピネッタが組んだバンドの一つ、ペスカード・ラビオーソのメンバーだったキーボードのカルロス・クタイアの描く架空サントラ的世界もユニークだ。ヴォーカリストのフアン・カルロス・バリエートは90年代から、キーボードのリト・ビターレと組んでタンゴやフォルクローレの新解釈に取り組んでいる(当初はタンゴ・ファンからボロクソに言われていたらしい)。
ロス・アブエロス・デ・ラ・ナダでメリンゴと同僚だったアンドレス・カラマーロは、タンゴやフォルクローレ、ボレロなどで構成されたスペイン録音の『El Cantante』を2004年にリリースしているが、今日紹介するハビエル・カラマーロはその弟。オルケスタ・ティピカ(標準的楽団)ならぬオルケスタ・ピラータ(海賊楽団)を率いて、本格的なタンゴに挑戦する。レパートリーはオリジナル(キーボードとアレンジのレアンドロ・チアーペとの合作)と、アニバル・トロイロ作品を中心とした歌のタンゴで構成されている(エルナン・フィゲロア・レジェスのフォルクローレも1曲)。その歌いっぷりは堂々としたもので、歌も演奏も、タンゴっぽさとロックっぽさの重なり合い具合が絶妙。トロイロ=カトゥロ・カスティージョ作「La última curda(最後の酔い)」にはルベン・フアレスがバンドネオンで、「Yuyo verde(みどりの草)」には女ゴジェネチェの異名を取るアドリアナ・バレーラがゲスト参加。この『Villavicio』は2006年のアルバムだが、カラマーロは2014年にタンゴ・アルバム第2弾『La vida es afano』をリリースしている。

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