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September 01, 2018

ほんとうに衝撃を受け、かつ今でも聞き続けている生涯のお気に入りアルバムを10枚(8日目)

過去7日間に続き、10日前のFacebookへの投稿を転載する。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ほんとうに衝撃を受け、かつ今でも聞き続けている(ごくたまにであっても)生涯のお気に入りアルバムを10枚。毎日ひとつずつジャケを投稿する。8日目/10日

Spinetta1

"Spinetta y Las Bandas Eternas"(レーベルなし、番号なし)

(続き)
86年にシエテ・デ・オロでブエノスアイレスに演奏旅行に行く1年前の85年7~8月、私はリーダーの齊藤一臣さんの鞄持ちのような形で、初めてブエノスアイレスの地に降り立った。初めて生で聴くオスバルド・プグリエーセ楽団は衝撃だったし、ほかにも印象的なライヴを観ることができた。レコードもいろいろ買ったが、それはタンゴだけではなかった。当時の日本では、アルゼンチンのロックについての情報など皆無だったが、やはり彼の地のロックがどういうものなのか気になった私は、スーパースター的存在のチャーリー・ガルシーア、美声のニト・メストレ(この2人はスイ・ジェネリスというフォーク・ロック・デュオで一緒だった)、レオン・ヒエコ(ニール・ヤング的な感じからスタートし、フォルクローレにも大胆にアプローチしていく)、セル・ヒラン(後述)のアルバムなどを適当に見繕って買ってきたのである。デビュー間もなかったフィト・パエスのファースト・アルバム『Del '63』のジャケットを手に取った記憶はあるが、この時は買わなかった。まさかその後シーンを牽引する存在になるとは思いもよらなかったな。
私が初めて「ラティーナ」に原稿を書いたのは85年12月号で、それは「ロックとタンゴの無関係な関係」という記事だった。そこでもそれらのレコードについて軽く触れているが、まだ全体像が見えておらず、今読み返すとかなり見当違いのことを書いていて恥ずかしい。その後もアルゼンチンのロックのことが気になったりはしていたが、現地でのレコード集めは、どうしてもタンゴを優先させていたので、あまり進まなかった。むしろ90年代に入り、西新宿のレコード店に中古盤がぽつぽつ入ってきたり(リストをみてオーダーすることも出来たりした)、ディスクユニオンやヴァージンメガストアなどに新譜CDが少しずつ入って来るようになってきて、ようやく見通しがよくなってきた。キーボードのチャーリー・ガルシーア、ギターのダビッド・レボン、ベースのペドロ・アスナール(パット・メシーニ・グループでも活躍)、ドラムスのオスカル・モロの4人組、セル・ヒランの92年の再結成アルバム『Seru Giran 92』、元MIAのリト・ビターレがペドロ・アスナールほかフォルクローレからジャズに至る多彩なゲスト陣を招いて完成させた『Juntando almas』(93年)といった傑作の登場も大きかった。チャーリー・ガルシーアと並ぶ大物でありながら、何となく全体像の見えにくかった(ルイス・アルベルト・)スピネッタがようやく視界に入ってきたのもその頃だった。
何故全体像が見えにくかったか。とにかくスピネッタほど変幻自在な存在もほかにいないからである。68年にスタートさせた最初のバンド、アルメンドラはサイケデリック、72年結成のペスカード・ラビオーソ(ダビッド・レボン在籍)はブルース・ロック、74年のインビシーブレはプログレ、77年にソロになってからはAORやニュー・ウェイヴ、80年のスピネッタ・ハーデはフュージョンと、その時期ごとのバンドで幅広いアプローチを見せたが、もちろん単純に分類できるわけではなく、それぞれにおいてさまざまな要素が複雑に絡み合っている。97年の『Spinetta y Los Socios del Desierto』ではロックの原点に立ち返ったようなソリッドなサウンドを展開していて驚かされた。そして00年代に入り、新たなバンド編成で更にリフレッシュし、充実したアルバムを連発していったのである。

Spinetta2

38.5cm×29.5cmの大型パッケージにCD3枚とDVD3枚、写真集2冊が収められたこのBOXは、2009年12月4日にブエノスアイレスのベレス・スタジアムで行われた、3時間以上におよぶ集大成的ライヴを収めた完全版。現在のバンドによる鉄壁のアンサンブルを基調に、彼のキャリアを彩ってきた各バンドの当時のメンバーも集結。チャーリー・ガルシーア、フィト・パエス、元ソーダ・ステレオのグスタボ・セラティ、人気ヒップホップ・ユニット、イリャ・クリャキ&ザ・バルデラマスで活躍する息子ダンテ・スピネッタら豪華ゲストも参加した一大絵巻だ。
アルゼンチン・ロック界の真のカリスマだったスピネッタは、数多くの名曲が詰まったこの素晴らしい記録を遺し、2012年2月8日に62歳でこの世を去ってしまった。こんな音楽家はもう現れないだろう。

オープニングの「Mi elemento」。

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