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September 28, 2014

フランキー・ヴァリとフォー・シーズンズ(71) 「Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)」の真実 (全シングル紹介 その25)

(9月28日7:55追記:一部文章を手直しした)

(9月28日19:06追記:文中に引用した『ジャージー・ボーイズ』からの台詞の引用箇所について、映画を観て確認できたことがあり、訂正・補足を加えた)

『ジャージー・ボーイズ』公開! 

日付は変わってしまったが、映画は無事に9月27日公開となった。気になるのは地域によって上映館の数にバラツキがあり過ぎることで、北海道や東北、中国、四国など何故このように冷遇されているのか? 今後遅れてでも上映されればいいのだが。

首都圏でも、新宿ピカデリーが満員で入れなかったツイートがあったと思えば、ガラガラという声もあり、なかなかうまくはいかないようである。なにはともあれ、口コミで観客数が増えることを願うばかりである。私は、本日(27日)は所用で動けなかったため、明日(28日)家族で行く予定。一応座席は押さえておいた。

それでは、ザ・フォー・シーズンズ/ザ・ワンダー・フー?/フランキー・ヴァリの全オリジナル・アナログ・シングル紹介、その25に移ろう。もちろん映画でも大々的に取り上げられている稀代の名曲の登場である。映画での描かれ方には、「観る前に知っておいてほしいこと」の回で触れた、時系列を入れ換えることによるマジックが仕掛けられていることを念頭に置いた上で、映画を既にご覧になった方もこれからの方も、お読み頂きたい。これがこの曲にまつわる「真実」(一部推定含む)なので。

★★[FV-05]★★
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A) CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU (B. Crewe - B. Gaudio) 1-40375 #2
B) THE TROUBLE WITH ME (B. Crewe - B. Gaudio) 1-40376
FRANKIE VALLI
A Bob Crewe Production
Arranged by Artie Schroeck & Bob Gaudio (Side A)
Arranged by Charles Calello (Side B)
Philips 40446 [4/67]
45cat

とりわけ日本では、1982年から翌年にかけてボーイズ・タウン・ギャングがヒットさせた曲(オリコンでの最高は22位)として知られている「Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)」。彼らはサンフランシスコのディスコ・グループだが、このカヴァー・ヴァージョンはイギリス(最高4位)やオランダ(1位)などヨーロッパを中心にヒットした。本国アメリカでヒットしなかったのは、やはり大ヒットしたフランキー・ヴァリのオリジナルのイメージが強いからだろうか。

映画『ジャージー・ボーイズ』に注目が集まるにつれ、「ボーイズ・タウン・ギャングがオリジナルだと思っていたけど、フォー・シーズンズの曲だったのか」といったような内容の発言がネット上で目に付くようになった。いや、それ、違うんですけど…。

しかし、そう思わせてしまう要因は意外と近くにあった。『ジャージー・ボーイズ』のフライヤー裏面の解説は、次のように始まっている。

ザ・ビートルズ以前に世界を席巻し、音楽界の不滅の伝説を打ち立てた4人組――ザ・フォー・シーズンズ。代表曲「シェリー」「君の瞳に恋してる」は半世紀を経てなお世界中で愛され続ける名曲中の名曲だ。

こんな書き方をされては、よく知らない人は「君の瞳に恋してる」もこの4人組のヒット曲だと勘違いしてしまうではないか。これまでにも何度か触れてきたが、この曲について改めて定義すると――フォー・シーズンズとしての活動と平行してスタートした、リード・ヴォーカリスト:フランキー・ヴァリのソロ・プロジェクト(制作陣は共通)から生まれた大傑作、ということになる。

第4回「ボブ・クルー死去」の回でも触れたように、2012年2月にBS-TBSで放映された『SONG TO SOUL~永遠の1曲』#59は、番組全体がこの曲の特集となっていて、曲の成立についてフランキー・ヴァリ(歌)、ボブ・ゴーディオ(作曲・編曲)、アーティー・シュロック(編曲)の3人が詳しく説明してくれている(この曲には関与していないチャールズ・カレロも番組に登場し、フォー・シーズンズ全般のレコード作りの方法論について解説している)。長くなるが、字幕を引用しながら紹介しておく(句読点は筆者による)。

ゴーディオ:フランキーがファルセットを歌わないなんて、誰が想像しただろう。我々はよく話し合った。ソロはフォー・シーズンズと違うものにすべきだと。彼はもっと色々な歌を歌える。その資質を生かしたのがあの曲だ。あの曲は3つの別々の曲から出来ている。技法的には、まず前半部がある。ちょっとポップでジャズ的な、面白いコードの前半部だ。それからホーンの間奏。あれは元々私が幼児番組用に作ったメロディだ。サビはキャッチーでポップな、一緒に歌えるものだ。3つのメロディが頭の中を漂っていた。それがひとつになった時にひらめいたんだよ。しかしソフトな前半部とはパワフルなサビがつながらない。どうにもできずに困った。仕方なくホーンの間奏でつないだ。すると、かつてないような曲になった。

シュロック:「君の瞳に恋してる」はジャズ志向の曲で、普通のロックンロールとは一味違う。私はずっとジャズをやっていたので選ばれたんだ。スタン・ケントン楽団のような音を作ってくれと言われた。最もビッグバンド的な部分は、あの「パーラ パーラ」というサビへの導入部だ。サビの歌を裏で支えるのがスタン・ケントン風のトロンボーン。あの「ダ パーパ パン」というトロンボーンがこの曲の鍵だ。これがケントン楽団風の雰囲気を生む、彼が使っていた手法なんだ。大編成のバンドを使った。別々に録音するのではなく、全てを一度に演奏した。ビッグバンドの熱い生演奏を、そのままレコードにしたかったからだ。全員で一斉に音を出したから、あのパワーとドライブ感が生まれたんだ。

この二人の言葉があれば、あとは何も付け加えることはない。そして、番組への登場は叶わなかったが、普遍的でスケールの大きなラヴ・ソングとして成立する上で、作詞のボブ・クルー(プロデュースも)が果たした役割ももちろん大きい。

そこで問題になるのが、この曲が果たしていつ録音されたのか、という疑問である。まずは番組での発言を見てみよう。

ヴァリ:レコーディングを終えた後、1~2年の間お蔵入りだった。リリースしてくれないんだ。私をソロにしたくなかったのだろう。

ゴーディオ:レコーディングの後消えてしまった。「いい曲だけどね」で終わりだ。しかし、プロデューサーのボブ・クルーがパーティーを開いた時のことだ。彼は自分の手がけた曲をみんなに聴かせた。この曲のラフ・ミックスをね。するとその場にいたDJたちが「この曲は何だ?」と一斉に目を輝かせた。それを見ればわかるよ。やはりあの曲はいい曲なんだとね。そこで僕たちは動き始めた。あの曲を無理矢理リリースさせた。レコード会社は渋々承知した。

ヴァリ:我々は強引にリリースさせただけでなく、個人的にスタッフを雇ってあのレコードのPRを行った。レコード会社が力を入れてくれないからセルフ・プロモーションをやったんだ。流行に敏感な街の全てのラジオ局にレコードを持って行き、PRしてもらった。それでようやくあのレコードはブレイクしたんだよ。

レコード会社が、ヴァリのソロ・レコードのリリースに消極的だったことは、第54回でも触れたとおりだが、当初はフィリップスではなく傍系のスマッシュからのリリースだったり、まともにプロモートしてくれないことはあっても、「リリースしてくれない」わけではなかった。しかも、これはソロ・シングルとして既に5枚目なのだ。

確かに1枚目の「The Sun Ain't Gonna Shine (Anymore)(太陽はもう輝かない)/This Is Goodbye」の時は、1965年6月の録音から9月の発売までにいささか時間が掛かっている。それでもそれ以降は、録音からリリースまでの流れはスムーズになっていた。1966年10月リリースの「The Proud One」にカップリングされた「Ivy」は3月か4月には録音されていたようだが、これは組み合わせのタイミングを計っていただけだろう。

「Can't Take My Eyes Off You」は、1967年4月7日にマスター登録され、同月にリリースされた。UK鑑賞団体セッショングラフィーは同年2月の録音としているが(カップリングの「The Trouble With Me」については後述)、ヴァリは「レコーディングを終えた後、1~2年の間お蔵入りだった」と言っているわけだから、さすがにこれはありえないだろう。1年と2年でも、違いは大きい。果たしてレコーディングは1965年だったのか、それとも1966年だったのか。時期を見極める上で、この曲のアレンジをアーティー・シュロックが手掛けている点が大きなヒントになりそうである。

フォー・シーズンズ/ワンダー・フー?/フランキー・ヴァリの録音におけるアレンジは、1962年10月にシド・バースから引き継いで以降1965年11月まで、チャールズ・カレロがほとんどすべてを手掛けてきた。1964年にアルバム『RAG DOLL』のうち6曲、『THE 4 SEASONS ENTERTAIN YOU』のうち2曲をデニー・ランデルが担当したのが、唯一の例外と言える。

カレロが1966年1月からコロンビアと専属契約を結び、一時期離れることになったために、新たにハーブ・バーンスタインやアーティー・シュロックが起用された、というのがこれまでにも紹介してきた経緯である。だからこの曲に関してシュロックが「ずっとジャズをやっていたので選ばれた」のは、やはりカレロが離れた後、つまり1966年に入ってから、と考えるのが自然なように思える。

フォー・シーズンズ芸術の頂点と言える「I've Got You Under My Skin(君はしっかり僕のもの)」(1966年7月録音)のアレンジを手掛けたのがシュロックであることは、第68回でご紹介した。あの記事を書いた際にカレロの重要な証言を見落としていたのでここで補足しておくと、あのコール・ポーター作品の秀逸なアレンジのベーシックな部分を組み立てたのは、シュロックではなくゴーディオである。印象的な♪Never win...のハーモニーを考えたのも彼で、それらをシュロックが完璧なものにまとめあげた、ということである。ただしアレンジャーとしてクレジットされているのはシュロック一人だった。

「Can't Take My Eyes Off You」ではアレンジはシュロックとゴーディオの連名となっている。具体的な記述はないが、リズム・アレンジがゴーディオ、ホーン・アレンジがシュロックと考えて間違いはないだろう。本来は「I've Got You Under My Skin」でもそのように記載されるべきだったのではないだろうか。

それはともかく、このような経緯などから考え合わせると、「Can't Take My Eyes Off You」の録音は、「I've Got You Under My Skin」より前、1966年の春頃だったと考えると、つじつまが合うのではないか。それだと発売よりだいたい1年前ということにもなるし。

最終的に1967年4月にリリースされた「Can't Take My Eyes Off You」は、5月20日付ビルボード・ホット100で74位に初登場、以後53位→33位→17位→11位→8位→7位→3位→3位と順位を上げ、10週目となる7月22日付で2位に到達した。もちろんソロとして初の大ヒットである。ちなみに7月15日付と22日付は、フォー・シーズンズの次のシングル「C'mon Marianne」(5月22日発売)が最高位である9位をマークした週でもあった。

『ジャージー・ボーイズ』には、レーベルの重役に「Can't Take My Eyes Off You」のリリースを要求するゴーディオに対する、重役のこんな台詞がある。

「‘C'mon Marianne’をどうするかはわかるが、こっちの方は――ポップというにはハード過ぎるし、ロックというにはソフト過ぎる」

(9/28追記:この台詞は、Melcher Media/Broadway Books刊『Jersey Boys - The Story Of Frankie Valli & The Four Seasons』に掲載されたミュージカル版の台本の該当部分を私が訳したものだが、今日改めて映画を観たところ、「C'mon Marianne」うんぬんの前半部分はカットされていた。字幕では「ソフト過ぎる」の部分が確か「ヤワ」となっていた。また、Presidentを社長〔字幕は確かこちら〕ではなく重役と訳したのは、レコード会社〔この場合Mercury Record Productions, Inc.〕ではなく、その中の一部門であるレーベル〔Philips Records〕の長なので、社長とは呼ばないのではないか、という理由による)

もちろん「C'mon Marianne」もとびきりのナンバーでヒット・ポテンシャルは高かったのだが、従来のフォー・シーズンズの延長線上にある曲であることは確か。それに対して「Can't Take My Eyes Off You」は当時のフィリップスの首脳の理解の範疇を超えていたということだ。

だからこそ、渋々リリースを承諾しただけで動かないフィリップスに業を煮やしたヴァリたちはセルフ・プロモーションに乗り出し、見事に大ヒットへと結びつけたわけだ。そして様々なアーティストに取り上げられる不朽の名曲となった。400種にも及ぶというカヴァー・ヴァージョンについては、また機会があれば紹介する、かも知れない。

件の番組は、こんな言葉で締めくくられていた。

ヴァリ:ボブ・ゴーディオとボブ・クルーがあの曲を書いてくれた時のことを覚えている。少し書いては電話をして、こんな感じだよと教えてくれた。素晴らしい時間だった。「君の瞳に恋してる」は私のために生まれた曲だから、ずっと歌い続けるよ。

カップリングの「The Trouble With Me」もクルー=ゴーディオ作品だが、これはカレロのアレンジなので、1965年の6月もしくは11月頃に録音されていたものと思われる。ちょっとバカラックっぽい雰囲気もある8分の6拍子のバラードで、クラシカルな大編成の混声合唱も入っている。

ここで気になることがある。それは、このレコードのピクチャー・スリーヴのことだ。フィリップスからリリースされた彼らのシングルにはピクチャー・スリーヴが付いているものが多いが、裏面のデザインはLPレコードの広告か白無地のものがほとんどで、最初のピクチャー・スリーヴ付だった「Ronnie/Born To Wander」(1964年3月)のみ表・裏とも同一デザインとなっていた。

それが、この「Can't Take My Eyes Off You」では、裏面にライナー・ノーツが掲載されているのである。

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「フランキー・ヴァリはフォー・シーズンズのリード・シンガーとして知られているが、ソロ・シンガーとしても高い能力を持ち…」という内容である。これは異例のことであり、売る気のなかった商品に対してレーベルのすることとは思えない。

さらにもう一つ、中古市場に出てくるフィリップスのオリジナル・シングルのうち、この盤のみ、ピクチャー・スリーヴが付属している確立が極めて低いのである。私は数ヶ月前に運よく、比較的きれいな状態のものを7.99$で入手できたが、たまにオークション・サイトに出ることはあっても、結構な値が付いてしまう。

このことを考えると、もしかするとヴァリたちが雇ったプロモーション・チームがフィリップスに(数量限定で?)作らせたものなのかも知れない。

そして、このシングルには黒いレーベルのファースト・プレスと、薄青色のレーベルのセカンド・プレスがあり、出回っている数は圧倒的に後者が多い。

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そして、私の持っている黒い盤(送り溝のマトリックスが機械打ちでA面が40375 1、B面が40376 2)と薄青色の盤(2枚あるがいずれもマトリクスは手彫りでA面が1-40375-2、B面が1-40376-2)とでは、音が違う!

薄青盤の方は、聴き慣れた音だが、それに比べて黒盤は低域が太く、より迫力のある音になっているのだ(バランスが整っているのは、薄青盤の方だろう)。そして何ということか、両面とも薄青盤と比べてフェイド・アウトがほんの僅かに早く、音が消えた瞬間にカタッというノイズのような音がかすかに聞こえる(よほどヴォリュームを上げるか、スピーカーに耳を寄せなければわからない程度)。一瞬リプロ盤を掴まされたかと思ったが、どうみても本物。そして「The Trouble With Me」は黒盤のみ、出だしのピアノの音が僅かに切れている。

黒盤は極初期に作られたのみで、すぐに音を補正した薄青盤に差し替えられた、ということなのだろうか。黒盤をお持ちの方がいらしたら、チェックしてみて頂きたい。

2曲とも、薄青盤の内容で1967年6月発売の『FRANKIE VALLI - SOLO』(Philips PHM 200-247[mono]/PHS 600-247[stereo])に収録されている。モノラル盤も作られた最後のアルバムだが、CD化に際しステレオ盤の左右チャンネルが逆になってしまった。様々なベスト盤に収められた各収録曲も同様で、本来は「Can't Take My Eyes Off You」のイントロのホーン・セクションは右、ドラムスは左なのだ。そしてアルバム全体に音質も落ちているが、とりわけ「The Trouble With Me」のマスターは保存状態が悪かったか、エース盤CDではイントロのピアノの音が揺れてしまっている。逆になっていた左右チャンネルを元に戻した上でリマスターされた日本盤CD『君の瞳に恋してる』(Rhino WPCR-27825)でも、さすがに音揺れは修正できていない。

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(続く)

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