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September 18, 2014

フランキー・ヴァリとフォー・シーズンズ(68) 世紀の傑作「I've Got You Under My Skin」(全シングル紹介 その22)

ザ・フォー・シーズンズ/ザ・ワンダー・フー?/フランキー・ヴァリの全オリジナル・アナログ・シングル紹介の第22回。金字塔の登場だ。

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A) I'VE GOT YOU UNDER MY SKIN (C. Porter) PHW1-38757 #9
B) HUGGIN' MY PILLOW (B. Crewe - B. Gaudio) PHW1-32849
THE 4 SEASONS Featuring the 'sound' of Frankie Valli
A Bob Crewe Production
Arranged & Conducted by Artie Schroeck (Side A)
Philips 40393 [5/8/66]
45cat

「I've Got You Under My Skin(君はしっかり僕のもの)」(女性歌手が歌うと邦題は「あなたはしっかり私のもの」となる)は大作曲家コール・ポーター(1891~1964)の代表作の一つ(作詞も)で、初めて全編の音楽を手掛けたMGMミュージカル映画『踊るアメリカ艦隊(Born To Dance)』(1936年11月全米公開)のために書かれた(他に「Easy To Love」など)。

劇中では、主人公ノラ(エリノア・パウエル)と恋人同士だったテッド(ジェームズ・スチュアート)のことを好きになったルーシー(ヴァージニア・ブルース)が、テッドに向けてこの歌で愛を告げる。

ほかにオーケストラ演奏もあり、本人役でクラブのステージに登場する夫婦ダンス・ペア、ジョージズ&ジャルナが素敵なダンスを披露している。

彼ら(トレーガス夫妻)はザビア・クガート楽団と共にニューヨークのウォルドルフ・アストリア・ホテルに長年出演したりしていた。夫ジョージズが映画に出演したのはこれが唯一だったが、妻ジャルナの方は何本かの映画にも登場しているとのこと。そのジャルナさんは、何と現在103歳で、ご健在だそうだ。

『踊るアメリカ艦隊』で当初ルーシー役に予定されていたのは、フランセス・ラングフォードだった。彼女は既に前年、映画『夜毎八時に(Every Night At Eight)』に出演して劇中歌「I'm In The Mood For Love」を大ヒットさせ、エリノア・パウエルの主演によるMGMミュージカルの第1弾にあたる前作『踊るブロードウェイ(Bloadway Melody of 1936)』でも2曲ほど歌っていた(いずれもコール・ポーター作品ではない)。だが、最終的にルーシー役はヴァージニア・ブルースに決まり、ラングフォードには別の役があてがわれた。

劇中で歌う機会を逃したフランセス・ラングフォードは、すかさず8月7日にジミー・ドーシー楽団の伴奏を得てデッカにこの曲を録音した(筆者未聴)(Decca 939)。

ヴァージニア・ブルース自身も(映画とは別に?)10月5日、ブランズウィックに録音している(Brunswick 7765)。

瞬く間に人気曲となりラジオでのオンエアー率も急上昇、チャート上では、まずハル・ケンプ楽団(歌:スキネイ・エニス)のブランズウィック録音(9月2日)が10月に全米8位となった。

12月にはレイ・ノーブル楽団(歌:アル・ボウリー)のヴィクター録音(9月25日)が全米3位に。

この時代の傑出した表現として、リー・ワイリー(伴奏:ヴィクター・ヤング楽団)のデッカ録音(1937年2月10日)を挙げておきたい。

シンフォニックかつユニークなアレンジのものとしては、クラシックとポピュラーを縦断したモートン・グールド率いる楽団の1944年11月のコロンビア録音がある。

1950年代前半に入ると、ジャズ界で個性的な名演が続出する。例を挙げると……

スタン・ゲッツ・クォーテット
(1950年1月6日プレスティッジ録音、『STAN GETZ QUARTETS』所収)
レッド・ノーヴォ・トリオ(withタル・ファーロウ&チャーリー・ミンガス)
(1950年10月31日サヴォイ録音、『MOVE!』所収)
ペギー・リー
(1953年4月30日デッカ録音、『BLACK COFFEE』所収)
スタン・ケントン楽団
(1953年7月8日キャピトル録音、『PORTRAITS ON STANDARDS』所収)
チャーリー・パーカー
(1954年3月31日ヴァーヴ録音、『CHARLIE PARKER PLAYS COLE PORTER』所収)
ダイナ・ワシントンとクリフォード・ブラウンらオールスターズ
(1954年8月14日エマーシー録音、『DINAH JAMS』所収)

このような感じで、死の1年前のほぼラスト・レコーディングであるパーカーはともかく、偶然かもしれないがそれぞれの代表作と言われるアルバムの一つに含まれているケースが多いのが興味深い。

そして、この曲にとって決定的な演奏が登場する。フランク・シナトラだ。

トミー・ドーシー楽団の専属歌手として人気を得、1942年に独立したシナトラは翌年コロンビアと契約、自身のレギュラー・ラジオ番組もスタートさせる。1944年の年間を通じてCBSラジオでオンエアーされていた『The Frank Sinatra Program』(ヴィムス・ビタミン提供のため『Vimms Show』と呼ばれた)もその一つだが、シナトラはその番組の中で「Easy To Love」と「I've Got You Under My Skin」をメドレーにして、アクセル・ストーダル楽団の伴奏で歌ったことがある。

このヴィムズ・ショーの音源のうち16曲は1982年に『PORTRAITS FROM THE PAST』というLPにまとめられ(Bravura 101)、1988年にはVディスク音源を追加してCD化されたが、そこにこのメドレーも含まれていた。2003年にはコロンビア/レガシーからの編集盤『SINATRA SINGS COLE PORTER』に含まれて公式初CD化、『THE LEGENDARY STANDARDS』という別の編集盤からのものをここで聴くことができる(Listenのボタンをクリック)。前半の「Easy To Love」はソロで歌うが「I've Got You Under My Skin」はほとんどのパートが混声合唱で歌われ、シナトラの歌も原曲のイメージを壊さない。

シナトラはその後一時期低迷するが、1953年にキャピトルと契約、最良の伴奏者となる名アレンジャー、ネルソン・リドルとの邂逅を経て、絶頂期を迎えようとしていた。そして1956年、それまでの10インチLPをカップリングしたものではなく最初から12インチLPとして企画された初のアルバム『SONGS FOR SWINGIN' LOVERS』(Capitol W653)が登場する。

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ちなみに私の持っているこのアルバム・ジャケットは、1957年にイラストが変更された後のもの。

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こちらがオリジナル・ジャケットだが、イラストの顔が貧相だというので差し替えられたのだった。

雑誌『レコード・コレクターズ』には創刊後しばらく、日本一のシナトラ通である三具保夫氏による「フランク・シナトラ・ディスコグラフィ」が連載されていた。2-5号(1984年1月)掲載の第9回から、このアルバムについての記述を引用する。

56年1月9日、10日、12日、16日の録音、アレンジと指揮はすべてN・リドル。これぞシナトラ=リドル・サウンドを確立し、歌うスタイリスト、シナトラのイメージを定着させた記念すべきアルバムである。ブラスとホーンを中心とする大編成のバンドをバックに第1コーラスをレガート風に、第2コーラスを力強くフェイクする、当時シナトラが得意としたスイング唱法の典型が聴かれる。(中略)声ののびと力強さ、スムースなリズムへの乗り、そしてスリリングな歌詞やメロディーの崩しかた、等々…ヴォーカル・ファン必携のアルバムである。白眉はシナトラのトレードマークにもなっている“I've Got You Under My Skin”(56/1/12)。

そう、この傑作アルバムを象徴するのが、B面トップに置かれていた「I've Got You Under My Skin」だった。印象的なリフから抑え気味にスタートし、小気味よいシナトラの歌を的確にサポートしていくバンドの演奏は、間奏部で劇的に盛り上がる。ミルト・バーンハートの見事なトロンボーン・ソロに至るまでの長い長いクレッシェンドは、シナトラの求めに応じたリドルが、ラヴェルの『ボレロ』をイメージして作り上げた。バルブ・トロンボーンのジョージ・ロバーツの提案で、彼がかつて参加したスタン・ケントン楽団の「23° N - 82° W(北緯23度西経82度)」(ビル・ラッソ作。1952年のアルバム『NEW CONCEPTS OF ARTISTRY IN RHYTHM』所収)も参考にされたという。

シナトラはこの曲を、リプリーズ設立後の1963年には『SINATRA'S SINATRA』用にステレオで再録音、1993年の『DUETS』ではU2のボノとデュエット(録音は別々)するなど、何度か録音している。そんなシナトラのパフォーマンスを、1964年と思われるライヴ映像で観ておこう。

フランキー・ヴァリはシナトラ・ファンだったが、シナトラが定番としたこの曲をフォー・シーズンズが取り上げるようになった経緯は別のところにあった。『JERSEY BEAT - THE MUSIC OF FRANKIE VALLI & THE 4 SEASONS』のブックレットで、ボブ・クルーは次のようにコメントしている(オネエ風に訳してみた)。

「あたしは信心深い人間じゃないけど、フランキー・ヴァリ、ボブ・ゴーディオ、それにあたしという3人が一緒になれたことは、神さまの思し召しよね。何をやっても、魔法みたいにうまくいったわ。精神と才能とが信じられないほど結びついていたからよ。あたしは一生それをありがたいと思って、大事にするし、望み続けるわ。‘Sherry’以来のあたしたちのコラボレーション、その全てが好きよ。でもね、お気に入りの一つはあたしたちの作品じゃないの。それはコール・ポーターの歌。ラスヴェガスでフランク・シナトラのコンサートを観てから、ボブは‘I've Got You Under My Skin’が気になってどうしようもなかったのね。彼はシーズンズで録音したがっていたわ。あたしはそのアイディアがとっても気に入って、それで録音したの。結果? それはレジスにコメントしてもらうわ」

レジスとは、レジス・フィルビンのこと。米国テレビ界でトークショー司会者として長年活躍してきた人物だそうである(米国民なら誰でも知っているのだろう。日本でいえば、例えはあまりよくないが、みのもんた?)。

「フォー・シーズンズの歌は、その大半が彼ら自身か、彼らの同僚たちが彼らのために書いたものだ。だから誰も、もっとうまくなんて歌えない。彼らがどんな風に‘I've Got You Under My Skin’を料理するのか、聴くのがとても楽しみだった。そう、みんなシナトラやほんとうに偉大な歌手たちがあの曲を歌うのを聴いているからね。でもフランキー・ヴァリとフォー・シーズンズは、ほかのすべての持ち歌と同じようなやり方で自分たちのものにしたんだ。この素晴らしい歌に素晴らしいアレンジ、そして素晴らしいパフォーマンスがまた一つ。惚れたね」

フォー・シーズンズの「I've Got You Under My Skin」はステア=フィリップス・スタジオで1966年7月に録音され(マスター登録は8月となっている)、8月5日にリリースされた。アレンジはハーブ・バーンスタインではなく、初めてアーティー・シュロックが担当した。

アーティー・シュロックは1938年10月、ニュージャージーの音楽一家に生まれた。3歳でドラムスとピアノを始め、5歳から兄とステージに立つ。兄ハロルドがピアノ、アーティーがドラムスで、兄はタップ・ダンスも披露した。わずか8歳でジーン・クルーパに兄ともどもスカウトされ、ルイ・プリマなどとも共演。兄がやめてからは地元のローカル・バンドなどで様々な楽器を演奏、アレンジも手掛けるようになる。

まだ10代の頃、ラスヴェガス公演の合間に楽器店でハモンド・オルガンを試奏していたところ、たまたま店に居合わせたのがライオネル・ハンプトンだった。ハンプトンはすかさず店にあったピアノに向かい、ジャム・セッションが始まった。その場でスカウトされたシュロックは、その夜からハンプトン・バンドでピアノを弾くことになった。

ハンプトンの下を辞してからは、アレンジャーとしてニール・ダイアモンド、ラヴィン・スプーンフルなどのレコードを手掛けるようになる。「I've Got You Under My Skin」に起用されたのも、ジャズに精通しているところを見込まれたからなのかもしれない。

それにしても、何と大胆かつ芸術的なアレンジなのだろう! ピアノとチェロによるゆるやかな導入、そこにストリングスがかぶさり、リットしながらホーンとシンバルが鳴り響く。美しいファルセットと共にドラムスがインテンポでビートを刻み、フィルインして最初のコーラスへ、というイントロだけでも、シンプルなようで奥が深い。効果的に使われるチューブラー・ベルズ、終盤の大胆なブレイクとバディー・サルツマンの切り裂くようなフィルイン、その後♪Never win...と繰り返す印象的なヴォーカル・ハーモニー…、様々な要素が交錯していく魔法のような時間。

ビルボード・シングル・チャートでの最高は9位だったが、私はフォー・シーズンズで1曲だけ選べと言われたら、ためらわずにこの録音を挙げる。

この曲はオリジナル・アルバムには未収録。第66回で紹介した「Opus 17 (Don't You Worry 'Bout Me)」と同様、1966年11月発売のベスト盤『2nd VAULT OF GOLDEN HITS』(Philips PHM 200-221[mono]/PHS 600-221[stereo])がアルバム初収録となった。

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ところがシングルとこのベスト盤とでは、長さが違うのである。

どちらも演奏時間は3:37と表記されているが、シングルの方がフェイド・アウトが長く、実測で3:44だった。アルバムはステレオ盤(ステレオ・ヴァージョンで収録)しか確認できていないが、表記通りの長さで、恐らくモノラル盤も同様と思われる。1968年のベスト『EDIZIONE D'ORO (GOLD EDITION)』も同一、1975年のベスト『STORY』収録のものは一応ステレオだが両チャンネルの音がほぼ中央に寄せられていた。

各種編集盤CDに収録されているステレオ・ヴァージョンはLPと同じだが、英エースから出た『EDIZIONE D'ORO』のCDに収録されたモノラル・ヴァージョンは、シングルと同じ長さだった。

今年1月のフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ初来日公演でも、当然のようにこの曲は演奏されたが、シナトラへのトリビュートと称して、途中にリドル編曲の間奏部分を挟み込むという粋な演出がなされていた。

カップリングには、1964年7月発売のアルバム『RAG DOLL』から、ボブ・クルーとボブ・ゴーディオの共作「Huggin' My Pillow(夢の中のきみ)」が引っ張り出されてきた。もともとこの曲は出来もよく、「Ronnie/Born To Wander」に続くシングルとして当時リリースされるはずだったが、傑作「Rag Doll」が出来上がったためにシングル化は見送られ、アルバムに収録されるに留まっていたのだった。

アルバムに編曲者のクレジットがなかったためか、このシングルにも記載がないが、アレンジはチャールズ・カレロである。この曲にステレオ・ヴァージョンは存在せず、アルバムのステレオ盤には擬似ステレオで収録されていた。第51回も参照のこと。

(続く)

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Comments

(君はしっかり僕のもの)
やはりアレンジですね 私も好きな曲のひとつです
そしてBsideの(夢の中のきみ)これも好きなんです。 両面ヒットしてもいいくらいなのにチャート・インしてないんですよね
以前コメントしましたがChristine Quaiteの
バージョンをいつか聴けたらなぁと思ってます

Posted by: とぜんね | September 19, 2014 at 02:10 AM

とぜんねさん、すみません。
以前コメント頂いていたことを失念していました。

ヘレン・シャピーロ・フォロワーの一人として1962年にマイナー・レーベルのオリオールからデビューしたクリスティーン・クアイト。イギリス本国ではまったくヒットに恵まれず、アメリカで「Tell Me Mama」が1964年5月に85位まで上がったのが唯一のヒット。
1964年にオリオールで「Huggin' My Pillow」を録音したが、アセテート盤のみで発売されないまま、レーベルはつぶれてしまった。

ということですね。確かに聴いてみたいですね。

Posted by: さいとう(鳩サブロー) | September 21, 2014 at 12:50 AM

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