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September 05, 2014

フランキー・ヴァリとフォー・シーズンズ(66) ジョー・ロングと「Opus 17」(全シングル紹介 その20)

映画『ジャージー・ボーイズ』の紹介記事を雑誌「レコード・コレクターズ」9月号に書いたことは第63回でもお知らせしたが、その一部が、オフィシャル・サイトの「著名人コメント」に掲載された。やはり第63回で紹介した週刊文春の小林信彦氏や、お馴染みの湯川れい子さんほか実際に著名人の方々のコメントと並んでいるのは、何だか不思議な気分ですらある。

さて、ザ・フォー・シーズンズ/ザ・ワンダー・フー?/フランキー・ヴァリの全オリジナル・アナログ・シングル紹介の第20回として今回紹介するのは「Opus 17 (Don't You Worry 'Bout Me)/Beggers Parade」だが、ここで遂に新メンバー、ジョー・ロングの登場となる。

『ジャージー・ボーイズ』ではチャールズ・カレロと一緒くたにされ(二人同時に参加という、ありえない設定になっている)、正当に扱われていない感もはなはだ強いロングだが、1960年代後半から1970年代前半のグループを支えていく重要メンバーである。まず、参加までの経緯を紹介しておこう。

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ジョー・ロング(本名:ジョー・ラブラシオ)は1941年9月5日、イタリアからの移民2世の両親のもと、ニュージャージー州エリザベスに生まれた。6歳のときに父親からアコーディオンを買い与えられ、13歳までレッスンを受ける。その頃にはピアノも弾けるようになっていたが、野球や女の子への興味が強くなるにつれ、音楽からは心が離れてしまう。

父が病に倒れたため、18歳で進学をあきらめ、家計を背負うことになったが、勤務先のミシン製造会社:シンガーで、故障した機械に左手を巻き込まれるという事故に遭遇してしまう。何度も手術を受け、左手を失うことは免れたが、治療とリハビリには3年を要した。

療養中、音楽への興味が再熱したが、左手には障害が残ったため、もはやピアノをちゃんと弾くことはできなかった。そこでベースをいじってみようと思い、コントラバス(ウッド・ベース)を買い、ラジオから流れる音楽に合わせて弾き始めた。外出できるまでに体力が回復すると、ニューヨーク・フィルハーモニック・オーケストラの第1コントラバス奏者、アルフォンス・ストラーザからレッスンを受けるようになる。クラシックの演奏家を目指そうとしたものの、クラシック音楽を厳格に表現出来るほど、左手に力を入れることができなかった。音楽学校で指揮や和声、理論も学んだりしたが、結局はフェンダー・エレキ・ベースに持ち替え、ロックンロールを演奏することにした。ロングが左利き用のベースを弾くのは、不自由な左手をカバーするためだったのだ。

60年代の初め、ロングは自身のバンド、ザ・ロケッツを結成し、全米やカナダを廻るツアー生活が始まる。レパートリーは最新のR&Rや50年代のR&Bだった。次いで男性4人と女性1人から成るジ・アクセンツで活動。どちらのバンドも長続きできなかったのは、メンバーが次々に徴兵されてしまったのが原因のようだ。

その後は、友人であるアル&ジェット・ローリングの夫婦コンビ(二人はテナー・サックス奏者ジョージー・オールドのレビューに加わって1964年に来日している)がラスヴェガスを中心に展開していたレヴューに参加する。奥方のジェットはニュージャージー出身で、後に詳しく紹介することになるアレンジャー、アーティ・シュロックと組んでザ・グラス・ルーツのヒット曲「Lovin' Things」や、フォー・シーズンズのアルバム『NEW GOLD HITS』収録の「The Puppet Song」などを書いたりもしている。

ローリング夫妻のバンドで働いていた1965年の恐らく9月頃、ロングはマネージャーのフランキー・フェイムから、トミー・デヴィートを紹介される。ちょうどニック・マーシが予告なしに突然フォー・シーズンズを辞めてしまったことで、デヴィートは代わりのメンバーを探していた。後釜を引き受けたチャールズ・カレロは、あくまでも“代役”だったからだ。フェイムはデヴィートに「君らに紹介できるヤツがいるよ。彼はベースが弾けるし、まるで年中風邪をひいているようなしわがれ声なんだ、ニックみたいに。彼だったらメンバーになれるんじゃないかな」と告げ、興味を持ったデヴィートとニュージャージー州ベルヴィルの楽器店で会うことになったのだ。ロングは少し楽器を弾いて見せ、デヴィートは「いい音してるな。他のメンバーに紹介するよ」と約束した。

翌週、他のメンバーたちとも会ったロングは、みんなに気に入られ、その場でグループ入りを打診された。それからまた1週間ほど経って、実家にいたロングのもとに、ノースかサウス・カロライナ州あたりをツアー中のデヴィートからいきなり「よう、飛行機に乗ってロサンゼルスで俺たちと合流できないか? バンドに入って欲しいんだよ」と電話が掛かってきた。LAでの仕事は2日か3日後に迫っていた。ロングは、アル&ジェット・ローリングとの仕事を辞めるには少なくとも2週間の猶予が必要だと説明し、デヴィートは怒った様子を見せながらも、最終的には渋々納得した。

ロングは参加当初、2週間の間にカレロからすべてのベースとヴォーカル・パートを教わることになっていた。ところがカレロからは「今日は無理だ、また明日」と先延ばしにされ続け、あっという間にウェスト・ヴァージニアの大学での本番当日を迎えてしまった。たった一度のリハーサルもしていないとロングは訴えたが、メンバーは「あぁ、ベストを尽くすんだな」と言うのみ。6,500人の観客を前に、ロングは「ズボンを濡らしながら」(本人談)初舞台をこなしたのだった。ロングをよりよい形で受け入れなければ、というゴーディオの反省もあり、さすがにその後2週間は、みっちりとリハーサルが行われた。

リリースの機会は逃したが自身のバンドでのレコーディング経験があり、スタジオ・ミュージシャンとしても働いていたロングにとって、記念すべきフォー・シーズンズでの初録音となったのが、「Opus 17 (Don't You Worry 'Bout Me)」というわけである。

★★★★★
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A) OPUS 17 (DON'T YOU WORRY 'BOUT ME) (S. Linzer - D. Randell) PHW1-38501 #13
B) BEGGARS PARADE (B. Crewe - B. Gaudio) PHW1-37503
THE 4 SEASONS Featuring the 'sound' of Frankie Valli
A Bob Crewe Production
Arranged & Conducted by Herb Bernstein (Side A)
Arranged & Conducted by Charles Calello (Side B)
Philips 40370 [29/4/66]
45cat

新ベーシスト、ジョー・ロングの初参加となった「Opus 17 (Don't You Worry 'Bout Me)」は1966年4月20日、ステア=フィリップス・スタジオで録音された。「Let's Hang On!」「Working My Way Back To You」と続いてきたサンディ・リンザー=デニー・ランデル作品のシングルA面への起用は、ひとまずこれが最後となる。アレンジは前回紹介したフランキー・ヴァリの「You're Ready Now」に続いてハーブ・バーンスタインが担当し、作者コンビによるモータウン・アプローチの完成形を、スケール豊かに仕立て上げた。第63回で触れたように、間奏のテナー・サックス・ソロをマイク・ペトリロが吹いている。

細かく動くロングのベース・ラインにも注目したいが、この曲の肝はホーン・セクションだろう。この曲は初めて聴いたときから、ダンヒル・サウンドっぽいと感じてきた。もちろんこちらが先なのだが、ダンヒルでスティーヴ・バリがプロデュースしジミー・ハスケルがアレンジした、グラス・ルーツやハミルトン・ジョー・フランク&レイノルズなどの一連のレコードに共通して感じるホーンの独特の響きには、この曲からの影響が少なからずあるのではないかと思えてならないのだ。

この曲では、ヴァリがほとんどファルセットを使わずに地声で歌い、ボブ・ゴーディオをメインに他のメンバーのハーモニーがファルセット混じりで付けられているのも、新しい試みと言える(ヴァリのファルセットも重ねられているかも知れないが、全く目立たない)。最後にヴァリのファルセットが出てきたと思ったらいさぎよくフェイド・アウトしてしまうところもいい。

「僕のことは気にしないで」というサブタイトルの通り、これは失恋の歌だが、「作品17」というクラシックにありがちなタイトルには意味があるのだろうか? 第55回で紹介したザ・トイズの「A Lover's Concerto」でモータウンとバロックの融合を実現させた経験を持つ作者のランデルは、メロディーはまったくのオリジナルと前置きしながら、わざとクラシックっぽさを出すために名づけたと語る。

では、これは17番目の作品なのか?

1. Sherry
2. Big Girls Don't Cry
3. Walk Like A Man
4. Ain't That A Shame
5. Candy Girl
6. Dawn (Go Away)
7. Ronnie
8. Rag Doll
9. Save It For Me
10. Big Man In Town
11. Bye Bye Baby (Baby Goodbye)
12. Toy Soldier
13. Girl Come Running
14. Let's Hang On!
15. Little Boy (In Grown Up Clothes)
16. Working My Way Back To You
17. Opus 17 (Don't You Worry 'Bout Me)

ヒットしなかったゴーンからの「Bermuda」は除き、「Sherry」以降のフォー・シーズンズ名義のシングルからクリスマス・シングル「Santa Claus Is Comin' To Town」と、ヴィー・ジェイがメンバーやボブ・クルーに断りなく勝手にリリースした「New Mexican Rose」以降のものを外すと、上記のリストのようになり、「Opus 17」は文字通り「作品17」となる。実際にこのように計算したのかどうかはまったくわからないが。

チャート上の成績は13位が最高だったが、フォー・シーズンズを代表する屈指の名曲となったこの曲は、オリジナル・アルバムには未収録。アルバム初収録となった1966年11月発売のベスト盤『2nd VAULT OF GOLDEN HITS』(Philips PHM 200-221[mono]/PHS 600-221[stereo])のステレオ盤にはしっかりとステレオ・ヴァージョンで収録されている。

Ph221s_1

カップリングの「Beggars Parade」はボブ・クルーとボブ・ゴーディオが合作したフォーク・ロック調の曲で、チャールズ・カレロがベースとアレンジを手掛けていた1965年10月録音のアルバム『WORKING MY WAY BACK TO YOU』からのシングル・カット。この曲でもヴァリはほとんどファルセットを使わず、淡々と歌っている。

(続く)

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Comments

ジョー・ロング
今でも彼がロックの殿堂に名前が記されないのが
不満です。
彼の生い立ち初めて知りました
さすが鳩サブローさんですね

今回で第65回目
これまでのご苦労お察しします
最早私のバイブルです
これからも楽しみにしてますので
お体に気を付けて頑張ってください

映画ジャージー・ボーイズの最終日は
いつごろになるのかご存じでしたら教えて
いただけないでしょうか
それに合わせて上京しようかと考えています

Posted by: とぜんね | September 05, 2014 at 12:23 PM

先の質問でジャージー・ボーイズの上映は鹿児島でも公開されるのがわかりましたので
お知らせします。

Posted by: とぜんね | September 07, 2014 at 03:18 PM

とぜんねさん、
いつも励ましのお言葉をありがとうございます。
鹿児島でも上映されるとのこと、よかったですね。
上映期間については、動員数や評判で変わってくるのではないかと思います。
今のところ試写会での評価は、気持ち悪いくらいに(?)絶賛の嵐といった感じで、このまま盛り上がってくれたらいいんですけどね。

Posted by: さいとう(鳩サブロー) | September 07, 2014 at 06:06 PM

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