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August 27, 2014

フランキー・ヴァリとフォー・シーズンズ(65) 全シングル紹介 その19

ザ・フォー・シーズンズ(ザ・ワンダー・フー?名義のものを含む)およびフランキー・ヴァリの全オリジナル・アナログ・シングル紹介の第19回。

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S2037a

S2037b

A) YOU'RE READY NOW (B. Crewe - B. Gaudio) YW1-38490 #112
B) CRY FOR ME (B. Gaudio) YW1-38491
FRANKIE VALLI
A Bob Crewe Production
Arranged by Herb Bernstein (Side A)
Smash S-2037 [3/66]
45cat

「The Sun Ain't Gonna Shine (Anymore)」「(You're Gonna) Hurt Yourself」に続くフランキー・ヴァリのソロ第3弾。この後はヴァリのソロ・シングルもフィリップスからリリースされることになるので、スマッシュからのリリースはこれが最後である。

UK鑑賞団体セッショングラフィーでは録音が1966年3月、マスター登録が3月29日、発売も3月となっているが、そんな早業が可能だったのだろうか。ちなみに45catの該当ページでは、発売は4月となっている。

1966年に入って初の録音ということで、制作陣にも変化が見られる。ニック・マーシ脱退後、ベーシストなどとしてピンチヒッターを務めていたチャールズ・カレロは、1966年に入りジョー・ロングが加入したのに伴い降板し、スタッフ・アレンジャー、プロデューサーとしてコロンビアと専属契約を結ぶ。

UK鑑賞団体セッショングラフィーによれば、その専属期間は1966年1月から1967年5月までとのことだが、チャーリー・カレロ・シンガーズを率いて「Vino Or Cappuccino/Tulips From Amsterdam」「The Blue Matador/September Rain (Here Comes The Rain)」という2枚のシングルをリリースしたのはそれぞれ1967年7月と9月のことなので、実際にはもう少し長かったのではないだろうか? カレロがコロンビア専属時代にプロデュースとアレンジを手掛けたシングルはかなりの数に上るが、トップ100に到達したのはシャーリー・エリスの「Soul Time」(67位)と、サンディ・リンザー&デニー・ランデルが書いたザ・サークルの「Penny Arcade」(95位)の2枚に留まっている。

カレロのコロンビアでの1960年代の仕事の中で最もよく知られ、評価も高いのは、1968年4月にリリースされたローラ・ニーロの移籍第1弾アルバム『ELI AND THE THIRTEENTH CONFESSION(イーライと13番目の懺悔)』におけるアレンジと共同プロデュースだろうが、この時点では既に、レーベル専属ではなくフリーランスとしての仕事だったのではなかろうか。

カレロがコロンビア専属となりフォー・シーズンズ/フランキー・ヴァリのセッションから離れた時期には、代わりにさまざまなアレンジャーたちが参加し、才能を発揮することとなった。今回「You're Ready Now」に抜擢されたのは、ブルックリン出身で当時ボブ・クルー周辺にいたハーブ・バーンスタイン。ほかにエディ・ランボー、ザ・ミッチェル・トリオ(=チャド・ミッチェル・トリオ)、レスリー・ゴア、ザ・ハプニングス、ザ・カウシルズなどを手掛け、ローラ・ニーロのヴァーヴ・フォーキャストからの1966年のデビュー・アルバム『MORE THAN A NEW DISCOVERY』でも全曲の編曲指揮を担当した。

冒頭からいきなり飛び出してきてタイトルを連呼する女性コーラスが、それまでと違うソロ・シンガーとしてのヴァリのスタンスを改めて強調するかのようなインパクトに溢れている。UK鑑賞団体セッショングラフィーでは、このバッキング・ヴォーカルを担当しているのは「ジ・エンジェルズ(バーナデット・キャロル、ペギー・サンティグリア、デニース・フェーリ)」と記載されている。

1963年のNo.1ヒット「My Boyfriend's Back」で知られる女性ヴォーカル・トリオ、ジ・エンジェルズはニュージャージー出身で、フォー・シーズンズとも当然繋がっている。何を隠そう、彼女たちはミュージカル/映画『ジャージー・ボーイズ』にも登場し、「My Boyfriend's Back」を歌うシーンもあるのである(「映画『Jersey Boys(ジャージー・ボーイズ)』“サントラ”盤到着!」の回でも触れたように、サントラ盤CDにもキミー・ゲートウッドのリード・ヴォーカルで収録されている)。そして彼女たちは、自分たちのレコードのほかにも、セッション・シンガーズとしてニール・ダイアモンド、トリニ・ロペス、ルー・クリスティ、トニー・オーランド、フランク・シナトラなどのレコーディングに参加しているという。

だが、フランキー・ヴァリの「You're Ready Now」に“エンジェルズとして”参加、という表記は正しくない。1966年の時点で彼女たちは契約の関係でその名前は使えず、ザ・ヘイローズ(The Halos)を名乗っていた(1967年からエンジェルズに戻る)。だがそれよりも何よりも、上記3人=エンジェルズではない。エンジェルズはメンバー・チェンジが頻繁だったが、バーナデットとペギー(「My Boyfriend's Back」のリード・ヴォーカル)との参加時期は重ならないし、ペギーと幼馴染で10代の頃一緒に歌っていたデニースは、エンジェルズには(少なくとも正式には)参加したことはなかったはずだ。それはともかく、ここで歌っているのは彼女たち3人なのだろう。ちなみにペギー・サンティグリアは、後にペギー・ファリーナの名前で「Beggin'(悲しきプロポーズ)」をボブ・ゴーディオと共作することになる。

彼女たちの強力なヴォーカルをバックに、ヴァリはダブル・トラック録音を駆使し、時にハモりながら、ガンガン歌っていく。だが残念なことに、この曲は100位にも入れずに終わってしまう。

ヒットしなかったのはイギリスも同様だったが、1970年になって突如としてノーザン・ソウル・シーンで注目を浴び、DJたちがプレイし始めた。そこでイギリスのフィリップスがシングルを11月に再発売したところ、12月12日付全英チャートにランク・イン。1971年初めには11位まで上昇し、13週間チャートに留まった。

この曲は、1967年6月発売の『FRANKIE VALLI - SOLO』(Philips PHM 200-247[mono]/PHS 600-247[stereo])のラストに収録されているが、その際にミックスし直されている。違いはほんの僅かで、よく聴かないと違いは判らない程度だが。そのほか、アルバムではフェイド・アウトが6秒ほど長くなっている(モノラル盤もステレオ盤も同じ)。

その後のベスト盤(手元にあるものでは『THE VERY BEST OF FRANKIE VALLI』(Curb/MCA MCA-3198)やCDでは、フェイド・アウトはまた短くなり、シングルより1~2秒長い程度となっている。

カップリングの「Cry For Me」は、第54回でご紹介した「The Sun Ain't Gonna Shine (Anymore)」のカップリング曲「This Is Goodbye」同様、ボブ・ゴーディオ単独作で、アレンジャーのクレジットがなく、米国ではアルバム未収録で、イギリスでのみ『FRANKIE VALLI - SOLO』に収録され、恐らくステレオ・ヴァージョンは存在しない、というもの。

A面の「You're Ready Now」同様、バーナデット、ペギー、デニースの3人がバッキング・ヴォーカルを受け持っていると思われるこのロッカバラードは、映画『ジャージー・ボーイズ』の中で重要な位置を占めている。後にジョー・ペシとなるジョーイ(ジョセフ・ルーソ)からフォー・ラヴァーズのメンバーたちに引き合わされたボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)が、ピアノに向かって披露するのがこの曲なのである(これもサントラCDに含まれている)。

ここで気になるのが、ゴーディオが当時、実際にこの曲をすでに書き上げていて、弾いてみせたのかどうかということ。もしそうだとすると、フォー・シーズンズのヒット曲を書き続けてきた間、ゴーディオは(ヴァリやボブ・クルーもだが)ずっとこの曲を温存してきたことになる。そんなことがあるのだろうか? グループ向きの曲ではないと、ずっと考えていたのだろうか。

(続く)

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August 16, 2014

フランキー・ヴァリとフォー・シーズンズ(64) 全シングル紹介 その18

9月27日公開の映画『ジャージー・ボーイズ』の日本オリジナル予告編が公開された。ナレーションは小林克也氏だ。

しかし、拙ブログをお読みいただいているみなさんには先刻ご承知のことと思うが、多くの紹介記事でフォー・シーズンズの代表曲の一つとして紹介されている「Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)」は、フォー・シーズンズではなくてフランキー・ヴァリのソロ曲である。そして、グループではなくてソロでのヒットだったということは、彼らを理解する上で極めて重要なのである。そのことは改めて強調しておきたい。

さて、ザ・フォー・シーズンズ(ザ・ワンダー・フー?名義のものを含む)およびフランキー・ヴァリの全オリジナル・アナログ・シングル紹介の第18回。

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Vj717a

Vj717b

A) PEANUTS (J. Cook) 62-2639
B) MY SUGAR (Crewe - Gaudio) 62-2917
THE WONDER WHO
Vee-Jay VJ-717 [2/66]
45cat

すでに倒産寸前となっていたヴィー・ジェイが、第61回で紹介したザ・ワンダー・フー?「Don't Think Twice」のヒットにあやかろうと、どさくさ紛れに出した便乗シングル。フォー・シーズンズでフランキー・ヴァリがローズ・マーフィー風の特異なファルセットで歌っていた2曲を、ザ・ワンダー・フーの名前で(「?」は付いていない)ちゃっかりリリースしたもので、当然のようにチャート・インはしなかった。

ファースト・アルバム『SHERRY & 11 OTHERS』からの「Peanuts」は、第44回でご紹介したプロモーション用片面シングルを含めれば、3回目のシングル化ということになる。そのプロモ盤はEPの販促用だったが、第44回での紹介時点で未入手だったEP2種の方は、その後入手できたので、ついでにご紹介しておく。

"THE 4 SEASONS SING" (Vee-Jay VJEP1-901) 12/1962 #108
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Ep1_901c

Ep1_901d

Side 1:
1. Never On Sunday (Towne - Hadjidakis)
2. Peanuts (J. Cook)
Side 2:
1. I Can't Give You Anything But Love (Fields - McHugh)
2. La Dee Dah (Crewe - Slay)

"THE 4 SEASONS SING" (Vee-Jay VJEP1-902) 3/1963 #123
Ep1_902a

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Ep1_902c

Ep1_902d

Side 1:
1. Why Do Fools Fall In Love? (F. Lymon - G. Goldner)
2. Silhouettes (F. Slay - B. Crewe)
Side 2:
1. Since I Don't Have You (Beaumont - Vogel - Verscharen - Lester - Taylor - Rock - Martin)
2. Alone (Selma - M. Craft)

1963年12月に発売された「Peanuts」のオフィシャル・シングルも第46回でご紹介した通り、カップリング曲の「Stay」に注目が集まってしまい、回収されてしまった。曲自体の人気はないわけではないのに、シングルとしては不運な運命をたどっている(私の見つけた盤も行方不明のまま、結局届かなかった)。曲については第24回を参照されたい。

カップリングの「My Suger」は、オリジナル・セカンド・アルバム『BIG GIRLS DON'T CRY』から。曲については第35回を参照いただきたい(大したことは書いていないが)。

★★★★★
Vj719a

Vj719b

A) STAY (M. Williams) 63-3320
B) MY MOTHER'S EYES (Gilbert - Bear) 65-8797
THE FOUR SEASONS
Produced by Bob Crewe (Side B)
Vee-Jay VJ-719 [3/66]
45cat

正真正銘、ヴィー・ジェイからの最終シングル。サード・アルバム『AIN'T THAT A SHAME AND 11 OTHERS』からカットされた「Stay」も、シングル化は3度目となるが(第46回および第48回参照)、何故この時期に再びシングルとして出したのかは、まったく意味不明。チャート・インもしていない。

カップリングの「My Mother's Eyes」は、第62回でご紹介した偽ライヴ盤『ON STAGE WITH THE FOUR SEASONS』からのシングル・カット。フォー・シーズンズ名義にはなっているが、完全にヴァリのソロで歌われる(その理由は後述する)。アルバムでは、ニック・マーシがヴァリを紹介した後、ミュート・トランペットやソプラノ・サックスがイントロのメロディーを奏で、歌が始まるのだが、このシングルでは何ともずさんなことに、MCばかりかイントロも切れていて、歌の直前からブチッと始まる。アウトロは終止の直前で不自然にフェイド・アウト。拍手と歓声は目立たないが、カットされてはいない。レーベルはもうやる気がなかったのだろうが、このいい加減な編集にはあきれてしまう。コレクターの方以外、このシングルを探す必要はないだろう。

ただしこの曲は、ヴァリにとってとても重要な1曲である。1953年、若きフランシス・カステルッチオが、フランキー・ヴァリ(当時の綴りはFrankie Valley)を名乗って初めてリリースした曲だからである(だからここでもソロで歌われる)。コロナから出たオリジナル・シングル「My Mother's Eyes/The Laugh's On Me」(Corona 45-1234)はとても手に入らないが、第36回で紹介した初期音源編集盤のうち(3)『THE FANTASTIC FIRST YEARS』、(4)『THIS IS MY STORY - THE EARLY YEARS 1953-1959』、(5)『THE ANTHOLOGY』、(6)『TWO CLASSIC ALBUMS PLUS THE FOUR LOVERS AND RARE SINGLES』で聴ける。

映画『ジャージー・ボーイズ』でも、ヴァリ(ジョン・ロイド・ヤング)がこの歌を歌うシーンがあるが、強面のギャングのボス、ジップ・デカルロ(クリストファー・ウォーケン)の反応に注目してほしい。

1929年の映画『LUCKY BOY』の主題歌となった「My Mother's Eyes」は、ティン・パン・アレーのソングライターであるL. ウォルフ・ギルバート(作詞)とアベル・ベア(作曲)が前年に書いたフォックストロットで、主演のジョージ・ジェッセルが感情豊かに歌った。

ボストン出身で1923年に渡英したリード奏者、アル・スタリータは1928年、ピカデリー・ホテル専属のダンス・バンド、ザ・ピカデリー・プレイヤーズを率いる。この楽団がやはり1929年、コロンビアに「My Mother's Eyes」を録音しているが(歌手はハリー・シャルスン)、こちらは打って変わって軽快な演奏で、よりフォックストロットらしい。

このような古い曲を、フランキー・ヴァリがなぜデビュー曲として取り上げたかと言えば、フランク・シナトラと並んでヴァリに多大なる影響を与えたジミー・スコット(当時はリトル・ジミー・スコット)が、1951年にロイヤル・ルーストにこの曲を録音していたから、というのが大きな理由だろう。

フランキー・ヴァリの「My Mother's Eyes」はまったく売れなかったが、同年にR&B系のアルト・サックス奏者、タブ・スミスが録音したインストゥルメンタル・ヴァージョンは、1950年代後半から1960年代にかけて、ジャマイカのDJ、デューク・リードの人気ラジオ番組"Treasure Isle Time"のテーマ曲として使われ、ジャマイカではとても有名らしい。

1950年代後半以降、様々なジャンルのアーティストが、この曲を取り上げている。ソフト・トーンズ(1955年)、ピート・ルゴロ楽団(1956年)、ミルズ・ブラザーズ(1958年)、パティ・ペイジ(1959年)、ネリー・ラッチャー(1959年)、ケニー・ボール&ヒズ・ジャズメン(1961年)、ソニー・スティット(1963年)、トム・ジョーンズ(1967年)、エラ・フィッツジェラルド(1968年、メドレーの中の1曲として)、ナンシー・シナトラ(1969年)、ニール・リード(1972年)、ケヴィン・コイン(1976年)、ウィリー・ネルスン(1981年)といった具合だ。

ヴァリも1967年に、ソロ・アルバム『FRANKIE VALLI - SOLO』のために3度目の録音を果たすことになる。その際にプロモーション・オンリーのシングルも制作されるので、ヴァリの3つのヴァージョンの比較については、その盤を紹介する際に、改めて見ていくことにしよう。

(続く)

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August 13, 2014

フランキー・ヴァリとフォー・シーズンズ(63) 全シングル紹介 その17

クリント・イーストウッド監督の映画『ジャージー・ボーイズ』の試写での評判はすこぶる好評のようで、週刊文春でも小林信彦氏が絶賛されていた。

前回もお知らせしたように、私が書いた紹介記事の掲載された雑誌「レコード・コレクターズ」9月号も本日発売されたので、ぜひご一読いただきたい(P194「イーストウッド監督が描くフォー・シーズンズの知られざる壮絶な人間ドラマ」)。

それでは、ザ・フォー・シーズンズ(ザ・ワンダー・フー?名義のものを含む)およびフランキー・ヴァリの全オリジナル・アナログ・シングル紹介の第17回。

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S2015b

A) (YOU'RE GONNA) HURT YOURSELF (B. Crewe - C. Calello) YW1-37523 #39
B) NIGHT HAWK (B. Crewe - B. Gaudio) YW1-37524
FRANKIE VALLI (side A)
THE VALLI BOYS (side B)
A Bob Crewe Production
Arranged & Conducted by "Calello"
Smash S-2015 [12/65]
45cat

第54回で紹介した「The Sun Ain't Gonna Shine (Anymore)/This Is Goodbye」に続くフランキー・ヴァリのソロ第2弾シングル。1965年10月には、フォー・シーズンズの次のシングルとなる「Working My Way Back To You/Too Many Memories」が、他のアルバム収録曲と共に録音されていたが、11月録音のこちらのシングルの方が一足早く、12月に発売。チャート・アクションは、100位にすら入れなかった前作よりもはるかに良く、ビルボードのシングル・チャートで39位まで上昇した。

「(You're Gonna) Hurt Yourself」はフランキー・ヴァリのソロ名義だが、ニック・マーシから交代したチャールズ・カレロを含むフォー・シーズンズのメンバーもバック・ヴォーカルで参加している。そのカレロが作曲と編曲指揮を担当。ベースとドラムスが刻むモータウン風のグルーヴ感あふれるリズムに乗せて、ホーン・セクション、ヴィブラフォン、エレクトリック・ピアノなどがかぶさっていく。バック・ヴォーカルとの絡みはあっても、ファルセットを使わないヴァリのヴォーカルは、グループとは異なる色合いを表現している。

この曲は、1967年6月発売の『FRANKIE VALLI - SOLO』(Philips PHM 200-247[mono]/PHS 600-247[stereo])にもそのまま収録された。

カップリングの「Night Hawk」は、やはりボブ・クルー=ボブ・ゴーディオ合作だったザ・ワンダー・フー?の「Sassy」と同傾向のインストゥルメンタルで、この曲のみ、ザ・ヴァリ・ボーイズ名義となっている(アレンジはカレロ)。「Sassy」はキーボード主体だったが、こちらはギター、ベースも使われている。冒頭の"Here comes the night hawk, time to fly!"という低音の語りは、カレロだろうか。ハンドクラップと加工されたスネアの音が主体のリズムは、後年盛んになるリズムボックスの使い方を先取りしたような感じだ。終盤ではヴァリ(ファルセット)とシーズンズのメンバーによるハミングも使われている。

この曲はまったく未復刻で、このシングルでしか聴けない。YouTubeに音がアップされているので、埋め込んでおく。

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A) WORKING MY WAY BACK TO YOU (S. Linzer - D. Randell) PHW1-37525 #9
B) TOO MANY MEMORIES (B. Crewe - B. Gaudio) PHW1-37526
THE 4 SEASONS Featuring the "sound" of Frankie Valli
A Bob Crewe Production
Arranged & Conducted by Charles Calello
Philips 40350 [11/1/66]
45cat

1965年10月、ベース&低音ヴォーカルが脱退したニック・マーシから代役のチャールズ・カレロに交代後のフォー・シーズンズとしては初のセッションが、ステア=フィリップス・スタジオで行われ、合計9曲が録音された。カレロは当然ながら、全曲のアレンジも出掛けている。これらは1966年1月に、アルバム『WORKING MY WAY BACK TO YOU』(Philips PHM 200-201[mono]/PHS 600-201[stereo])としてリリースされた。

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ただし曲数が足らず、1965年3月リリースの『THE 4 SEASONS ENTERTAIN YOU』(Philips PHM 200-164[mono]/PHS 600-164[stereo])に収録されていた3曲(以下曲目の★印)がそのまま再収録された。

Side 1:
1. Working My Way Back To You (S. Linzer - D. Randell)
2. Pity (B. Crewe - M. Petrillo)
3. I Woke Up (B. Crewe)
4. Living Just For You (Nick Massi) ★
5. Beggars Parade (B. Crewe - B. Gaudio)
6. One Crown Cried (B. Crewe - S. Linzer) ★
Side 2:
1. Can't Get Enough Of You Baby (S. Linzer - D. Randell)
2. Sundown (M. Petrillo - A. Bernstein)
3. Too Many Memories (B. Crewe - B. Gaudio)
4. Show Girl (B. Crewe - B. Gaudio) ★
5. Comin' Up In The World (B. Crewe - L. Santos)
6. Everybody Knows My Name (B. Gaudio)

第57回で18枚組『CLASSIC ALBUMS BOX』収録の本アルバムのCDを紹介した際、『ENTERTAIN YOU』から3曲が再録された件について、

曲数が足りないのなら、オミットされていた「A Sunday Kind Of Love」を復活させるとか、シングル曲を入れるなどの手もあったはずだが、コンセプト(があったとは思えないが…)に合わないとでも判断されたのだろうか?

と書いたが、よくよく見てみれば、コンセプトらしきものが、ないわけではなかった。作者クレジットをよく見ると、カヴァー曲は皆無で、メンバーや周辺のソングライターによる書下ろしと思われる作品でまとめられていたのだった。

再録された3曲も同様で、すでにジャケット写真にも写っていないニック・マーシが書いた「Living Just For You」があえて選ばれたのは、大切なメンバーであり友人でもあった彼への感謝の気持ちも込められているのかも知れない。

「Pity」と「Sundown」を作曲したマイク・ペトリロはニューアーク出身、ヴァリたちの古くからの友人で、テナー・サックス奏者としてもこの後の「Opus 17 (Don't You Worry 'Bout Me)」でソロを吹いたりしている。作曲家としては、後に「Tell It To The Rain(雨に言っておくれ)」や「Electric Stories」といったシングル曲も手掛けるようになる。

その「Sundown」をペトリロと共作(作詞)したアラン・バーンスタインは、これが唯一のコラボレーション。作詞家として、フランク・シナトラやトニー・ベネットらも取り上げた「Yellow Days」(1966年出版。原曲は前年のメキシコのTVドラマ主題歌)や、チャールズ・カレロが共同プロデュースを手掛け1976年にヒットしたエンゲルベルト・フンパーディンクの「After The Lovin'」などを手掛けている。

クルーとラリー・サントス(第45回で紹介した「Candy Girl」の作者)の共作「Comin' Up In The World」は、サントス自身が1969年のアルバム『JUST A MAN』でセルフ・カヴァーすることになる。

サンディー・リンザー=デニー・ランデルの「Can't Get Enough Of You Baby」もキャッチーな曲。彼らがプロデュースを手掛けたザ・トイズでも直後に取り上げられ、1966年4月にB面ながらシングルになっている。

そして、そのリンザー=ランデルによる、「Let's Hang On!」(クルーとの合作)に続く傑作となったのが、アルバムのタイトル曲であり、A面の1曲目であり、シングル・カットされた(1966年1月11日発売)「Working My Way Back To You(君のもとに帰りたい)」である。

イントロのよく動くベース・ラインから徹底的に考え抜かれていて、全体の構成も完璧。ヴォーカル・ハーモニーにも新しさがあり、マーシからカレロへの交代がいい方向に作用したと言えそうだ。これもまた、彼らを代表する1曲である。

なお、シングルでもアルバムでも演奏時間が2:51となっているが、これは誤りで、実測では3:02ぐらいである。

ビルボードでの順位は3月5日付けの9位が最高だったが、1979年の暮れ、黒人ヴォーカル・グループのスピナーズがディスコ・アレンジでカヴァーし(プロデュースとアレンジを手掛けたマイケル・ゼーガーが書いた「Forgive Me, Girl」とのメドレー)、1980年3月にビルボードのポップ・チャートで2位、ソウル・チャートで6位の大ヒットとなった。

ボブ・ゴーディオも負けてはいない。間奏のトランペットがちょっとバート・バカラックっぽい、カップリングの「Too Many Memories」(クルーとの合作)も面白い曲で、彼の作風も確実に進化していることがわかる。

この曲ではヴァリはほとんどファルセットを使わず、地声で通しているが、ソロっぽいかと言われればまったくそんなことはない。やはりグループとソロとでは、アプローチは明確に違うのだ。実験精神というか遊び心のようなものが、この時期のフォー・シーズンズの曲には時々現れるのだ。

(続く)

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August 01, 2014

フランキー・ヴァリとフォー・シーズンズ(62) 偽ライヴ盤と「Little Boy」(全シングル紹介 その16)

7月某日、幸運にも『ジャージー・ボーイズ』の内覧試写会に招かれ、一足早く映画を観ることができた。クリント・イーストウッド監督の手腕はさすがで、想像以上の素晴らしい出来栄えだったことをまずはお伝えしておく。詳しくは、8月15日発売の雑誌「レコード・コレクターズ」9月号に映画評を書いたので、そちらをチェックしていただきたい。

前回触れたその『ジャージー・ボーイズ』のサウンドトラック盤だが、タワーレコード渋谷店サントラコーナーにて、面出ししてあった現物を確認、やはり私がアマゾンから購入した黒っぽいデザインとは異なる、“COCKTAILS BAR”という赤いネオンサインなどの写った別ジャケットだった。

Jerseyboys

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私の購入したもの(写真上)はUS盤、タワレコにあったもの(写真下)はEU盤で、果たしてその違いだけによるものなのかどうかはわからない。

では、前回ご紹介したザ・ワンダー・フー?の「Don't Think Twice/Sassy」に続く、ヴィー・ジェイからのフォー・シーズンズのシングル「Little Boy (In Grown Up Clothes)/Silver Wings」の紹介に移る前に、このA面曲を含むアルバムをご紹介しておこう。

1965年11月には、ザ・フォー・シーズンズのアルバムが3枚も発売になった。1枚は、第59回以来ご紹介してきた『THE 4 SEASONS SING BIG HITS BY BURT BACHARACH... HAL DAVID... BOB DYLAN』(Philips PHM 200-193 [mono]/PHS 600-193 [stereo])、もう1枚は「Girl Come Running」「Let's Hang On!」の初収録となった、フィリップス初のベスト・アルバム『THE 4 SEASONS' GOLD VAULT OF HITS』(Philips PHM 200-196[mono]/PHS 600-196[stereo])、そして残る1枚(発売はおそらく『GOLD VAULT OF HITS』よりも先)が、ヴィー・ジェイから発売された『ON STAGE WITH THE FOUR SEASONS』(Vee-Jay VJ 1154[mono]/VJS 1154[stereo])である。

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Side 1:
Blues In The Night (Mercer - Arlen)
Just In Time (Styne - Comden - Green)
Little Boy (In Grown Up Clothes) (Crewe - Gaudio)
I Can Dream Can't I? (Kahal - Fain)
How Do You Make A Hit Song? (H. Beebe - W. Heyer)
Side 2:
Medley: By Myself (Dilworth - McCleod - Shilkret) / Jada (Carleton) / We Three (Robertson - Cogane - Meysels)
Day In Day Out (Mercer - Bloom)
My Mother's Eyes (Gilbert - Baer)
Mack The Knife (Weill - Brecht - Blitzstein)
Come Si Bella (De Palma - Calello)
Brotherhood Of Man (Loesser)

CDでのトラック分けは、今回のライノからの18枚組『THE CLASSIC ALBUMS BOX』収録盤では上記の通り11トラックだが、『AIN'T THAT A SHAME』との2 in 1だったエース盤では、「Blues In The Night」が始まるまでの部分が「Introduction」、「How Do You Make A Hit Song」の前のメンバー紹介部分が「Individual Introductions」として別個のトラックになっているほか、メドレーの3曲もそれぞれ別のトラックに分けられ(「Jada」と「We Three」との切れ目が実際よりも8秒前にズレてしまっている)、「Brotherhood Of Man」も本編とリプライズ部分とに別れ、全部で16トラックとなっている。

このアルバムがリリースされた経緯については第6回でも紹介したが、これはヴィー・ジェイとの契約消化のためにボブ・クルーがプロデュースした擬似ライヴ音源で、実際にはスタジオ録音(MC含む)に拍手と歓声をかぶせたもの。(クルーのライナーによれば)30人編成のオーケストラ(ビッグ・バンド)をバックに、主にスタンダードを歌うという、それはそれで興味深い内容になっている。アレンジと指揮はチャールズ・カレロ。

レコーディング・エンジニアはビル・マクミーキンなので、オルムステッド・スタジオでの録音と見て間違いないだろう。UK鑑賞団体セッショングラフィーでは、アルバムの録音年を1963年と推測しているが、彼らがレコーディングにこのエンジニアとスタジオを使うようになるのは1964年夏もしくは秋以降なので、1964年後半から1965年前半にかけてのどこかでの録音と考えるのが、自然なような気がする。

当時の彼らがステージでヒット曲を歌わなかった、とは到底考えられないのだが、ヒット曲以外に実際に披露されていたレパートリーはこんな感じだったのだろうか(「Brotherhood Of Man」はテレビ出演時の映像が残されている)。持ち歌といえばフランキー・ヴァリ(綴りはValley)1953年のソロ・デビュー・シングル「My Mother's Eyes」、そして1959年3月にフランキー・ヴァリ(Valle)&ザ・ロマンズ名義で出した「Come Si Bella」ぐらいなのだから。

これまでのフォー・シーズンズのスタジオ録音のレパートリーといえば、フランキー・ヴァリのファルセットを多用したリード・ヴォーカルに、他の3人のハーモニー・コーラスが付くパターンがほとんどだったが、ここではヴァリも含む全員のハーモニーで進行していく曲もあれば、「Mack The Knife」のようにトミー・デヴィートがリード・ヴォーカルをとるという他に例のない曲もある。

ユニークなのは「How Do You Make A Hit Song?」で、まさに“ヒットソング”である「Sherry」の曲作りの秘密や各メンバーの貢献度などが、実際に「Sherry」を引用しながら、4人のメンバーそれぞれの語りと歌で紹介されていくのだ。ハンク・ビービー(作曲)とビル・ヘイヤー(作詞)による書き下ろしと思われるが、LP時代から今回の18枚組BOXに至るまで、へイヤー(Heyer)のスペルが誤ってHyerとクレジットされている。アメリカ合衆国では主に1950年代から70年代にかけて、企業の従業員の士気を高めることを目的として上演されたインダストリアル・ミュージカルなるものが作られていて(ノイズ系などのインダストリアル・ミュージックとは全く別物なので注意)、ビービーとヘイヤーはコンビを組んでそんな作品を手掛けていたようだ。

普段とは違うフォー・シーズンズの姿(日頃から彼らのステージに接している観客にとってはこれが普通?)が楽しめるという意味では、決して悪いアルバムではない。それだけに、音の悪い拍手と歓声が邪魔だ。ステレオ盤でも拍手と歓声は真ん中からしか聞こえてこない、というのも気持ち悪い。こういうコンセプトのスタジオ録音盤、としてリリースされていれば、評価も違っていただろう。

★★★★★
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A) LITTLE BOY (IN GROWN UP CLOTHES) (Crewe - Gaudio) 65-8821
B) SILVER WINGS (Bob Crewe) 65-8822
THE FOUR SEASONS
Produced by Bob Crewe (side A)
Vee-Jay VJ-713 [11/65]
45cat

レーベル面の色は茶色と黒の2種類があるが、茶色がオリジナル。「Little Boy (In Grown Up Clothes)」はアルバム収録曲の中では唯一のオリジナルで、クルーとゴーディオの合作による、いつものフォー・シーズンズらしいサウンド。ただし、ホーン・セクションが入っている点が、ここまでゴーディオが書いてきたシングル曲と異なる。このホーン・セクションの導入は、アルバムの他のビッグ・バンド・サウンドに合わせたとも、そこからヒントを得たとも言えそうだが、「Let's Hang On!」の後「Working My Way Back To You」「Opus 17 (Don't You Worry 'Bout Me)」と、ホーンをフィーチャーした出来の良いシングル(いずれもゴーディオ作品ではない)が続くことを考えると、微妙な位置にあると言えそうだ。録音は1965年の前半だろうか?

“ライヴ盤”からのシングル・カット(とは書かれていないが)にもかかわらず、拍手や歓声が一切入っていないことを、当時のファンはどう思っていたのだろう(歌と演奏はアルバムとまったく同一である。しかもフェイド・アウト)。アルバムではヴァリの曲紹介につづくカウントの終わりとイントロのピアノの最初の音が被っているのだが、この重なった部分は声が消せなかったようで、テープ編集でピアノの音を無理やりつなげたために不自然なノイズが入る。チャートでは何とか60位まで上がったものの、ベスト盤に収められることもほとんどないこの不幸なシングルは、少なくとも2007年の『JERSEY BEAT - THE MUSIC OF FRANKIE VALLI & THE 4 SEASONS』で聴く限り、冒頭のノイズが目立たなくなるほどにマスターの保存状態は悪い。

カップリングの「Silver Wings」は、1963年8月のベスト盤『GOLDEN HITS OF THE 4 SEASONS』で初お目見えしていたボブ・クルーのちょっとトロピカル風味の作品。クルーが単独で曲を書くことはあまりないが、実際には誰かが手伝ったのではないだろうか。歌詞は書けても、曲がどこまで書けるのかはちょっと疑問なのだ。

(続く)

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