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August 01, 2014

フランキー・ヴァリとフォー・シーズンズ(62) 偽ライヴ盤と「Little Boy」(全シングル紹介 その16)

7月某日、幸運にも『ジャージー・ボーイズ』の内覧試写会に招かれ、一足早く映画を観ることができた。クリント・イーストウッド監督の手腕はさすがで、想像以上の素晴らしい出来栄えだったことをまずはお伝えしておく。詳しくは、8月15日発売の雑誌「レコード・コレクターズ」9月号に映画評を書いたので、そちらをチェックしていただきたい。

前回触れたその『ジャージー・ボーイズ』のサウンドトラック盤だが、タワーレコード渋谷店サントラコーナーにて、面出ししてあった現物を確認、やはり私がアマゾンから購入した黒っぽいデザインとは異なる、“COCKTAILS BAR”という赤いネオンサインなどの写った別ジャケットだった。

Jerseyboys

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私の購入したもの(写真上)はUS盤、タワレコにあったもの(写真下)はEU盤で、果たしてその違いだけによるものなのかどうかはわからない。

では、前回ご紹介したザ・ワンダー・フー?の「Don't Think Twice/Sassy」に続く、ヴィー・ジェイからのフォー・シーズンズのシングル「Little Boy (In Grown Up Clothes)/Silver Wings」の紹介に移る前に、このA面曲を含むアルバムをご紹介しておこう。

1965年11月には、ザ・フォー・シーズンズのアルバムが3枚も発売になった。1枚は、第59回以来ご紹介してきた『THE 4 SEASONS SING BIG HITS BY BURT BACHARACH... HAL DAVID... BOB DYLAN』(Philips PHM 200-193 [mono]/PHS 600-193 [stereo])、もう1枚は「Girl Come Running」「Let's Hang On!」の初収録となった、フィリップス初のベスト・アルバム『THE 4 SEASONS' GOLD VAULT OF HITS』(Philips PHM 200-196[mono]/PHS 600-196[stereo])、そして残る1枚(発売はおそらく『GOLD VAULT OF HITS』よりも先)が、ヴィー・ジェイから発売された『ON STAGE WITH THE FOUR SEASONS』(Vee-Jay VJ 1154[mono]/VJS 1154[stereo])である。

Lp1154m_1

Lp1154s_1

Side 1:
Blues In The Night (Mercer - Arlen)
Just In Time (Styne - Comden - Green)
Little Boy (In Grown Up Clothes) (Crewe - Gaudio)
I Can Dream Can't I? (Kahal - Fain)
How Do You Make A Hit Song? (H. Beebe - W. Heyer)
Side 2:
Medley: By Myself (Dilworth - McCleod - Shilkret) / Jada (Carleton) / We Three (Robertson - Cogane - Meysels)
Day In Day Out (Mercer - Bloom)
My Mother's Eyes (Gilbert - Baer)
Mack The Knife (Weill - Brecht - Blitzstein)
Come Si Bella (De Palma - Calello)
Brotherhood Of Man (Loesser)

CDでのトラック分けは、今回のライノからの18枚組『THE CLASSIC ALBUMS BOX』収録盤では上記の通り11トラックだが、『AIN'T THAT A SHAME』との2 in 1だったエース盤では、「Blues In The Night」が始まるまでの部分が「Introduction」、「How Do You Make A Hit Song」の前のメンバー紹介部分が「Individual Introductions」として別個のトラックになっているほか、メドレーの3曲もそれぞれ別のトラックに分けられ(「Jada」と「We Three」との切れ目が実際よりも8秒前にズレてしまっている)、「Brotherhood Of Man」も本編とリプライズ部分とに別れ、全部で16トラックとなっている。

このアルバムがリリースされた経緯については第6回でも紹介したが、これはヴィー・ジェイとの契約消化のためにボブ・クルーがプロデュースした擬似ライヴ音源で、実際にはスタジオ録音(MC含む)に拍手と歓声をかぶせたもの。(クルーのライナーによれば)30人編成のオーケストラ(ビッグ・バンド)をバックに、主にスタンダードを歌うという、それはそれで興味深い内容になっている。アレンジと指揮はチャールズ・カレロ。

レコーディング・エンジニアはビル・マクミーキンなので、オルムステッド・スタジオでの録音と見て間違いないだろう。UK鑑賞団体セッショングラフィーでは、アルバムの録音年を1963年と推測しているが、彼らがレコーディングにこのエンジニアとスタジオを使うようになるのは1964年夏もしくは秋以降なので、1964年後半から1965年前半にかけてのどこかでの録音と考えるのが、自然なような気がする。

当時の彼らがステージでヒット曲を歌わなかった、とは到底考えられないのだが、ヒット曲以外に実際に披露されていたレパートリーはこんな感じだったのだろうか(「Brotherhood Of Man」はテレビ出演時の映像が残されている)。持ち歌といえばフランキー・ヴァリ(綴りはValley)1953年のソロ・デビュー・シングル「My Mother's Eyes」、そして1959年3月にフランキー・ヴァリ(Valle)&ザ・ロマンズ名義で出した「Come Si Bella」ぐらいなのだから。

これまでのフォー・シーズンズのスタジオ録音のレパートリーといえば、フランキー・ヴァリのファルセットを多用したリード・ヴォーカルに、他の3人のハーモニー・コーラスが付くパターンがほとんどだったが、ここではヴァリも含む全員のハーモニーで進行していく曲もあれば、「Mack The Knife」のようにトミー・デヴィートがリード・ヴォーカルをとるという他に例のない曲もある。

ユニークなのは「How Do You Make A Hit Song?」で、まさに“ヒットソング”である「Sherry」の曲作りの秘密や各メンバーの貢献度などが、実際に「Sherry」を引用しながら、4人のメンバーそれぞれの語りと歌で紹介されていくのだ。ハンク・ビービー(作曲)とビル・ヘイヤー(作詞)による書き下ろしと思われるが、LP時代から今回の18枚組BOXに至るまで、へイヤー(Heyer)のスペルが誤ってHyerとクレジットされている。アメリカ合衆国では主に1950年代から70年代にかけて、企業の従業員の士気を高めることを目的として上演されたインダストリアル・ミュージカルなるものが作られていて(ノイズ系などのインダストリアル・ミュージックとは全く別物なので注意)、ビービーとヘイヤーはコンビを組んでそんな作品を手掛けていたようだ。

普段とは違うフォー・シーズンズの姿(日頃から彼らのステージに接している観客にとってはこれが普通?)が楽しめるという意味では、決して悪いアルバムではない。それだけに、音の悪い拍手と歓声が邪魔だ。ステレオ盤でも拍手と歓声は真ん中からしか聞こえてこない、というのも気持ち悪い。こういうコンセプトのスタジオ録音盤、としてリリースされていれば、評価も違っていただろう。

★★★★★
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Vj713d

A) LITTLE BOY (IN GROWN UP CLOTHES) (Crewe - Gaudio) 65-8821
B) SILVER WINGS (Bob Crewe) 65-8822
THE FOUR SEASONS
Produced by Bob Crewe (side A)
Vee-Jay VJ-713 [11/65]
45cat

レーベル面の色は茶色と黒の2種類があるが、茶色がオリジナル。「Little Boy (In Grown Up Clothes)」はアルバム収録曲の中では唯一のオリジナルで、クルーとゴーディオの合作による、いつものフォー・シーズンズらしいサウンド。ただし、ホーン・セクションが入っている点が、ここまでゴーディオが書いてきたシングル曲と異なる。このホーン・セクションの導入は、アルバムの他のビッグ・バンド・サウンドに合わせたとも、そこからヒントを得たとも言えそうだが、「Let's Hang On!」の後「Working My Way Back To You」「Opus 17 (Don't You Worry 'Bout Me)」と、ホーンをフィーチャーした出来の良いシングル(いずれもゴーディオ作品ではない)が続くことを考えると、微妙な位置にあると言えそうだ。録音は1965年の前半だろうか?

“ライヴ盤”からのシングル・カット(とは書かれていないが)にもかかわらず、拍手や歓声が一切入っていないことを、当時のファンはどう思っていたのだろう(歌と演奏はアルバムとまったく同一である。しかもフェイド・アウト)。アルバムではヴァリの曲紹介につづくカウントの終わりとイントロのピアノの最初の音が被っているのだが、この重なった部分は声が消せなかったようで、テープ編集でピアノの音を無理やりつなげたために不自然なノイズが入る。チャートでは何とか60位まで上がったものの、ベスト盤に収められることもほとんどないこの不幸なシングルは、少なくとも2007年の『JERSEY BEAT - THE MUSIC OF FRANKIE VALLI & THE 4 SEASONS』で聴く限り、冒頭のノイズが目立たなくなるほどにマスターの保存状態は悪い。

カップリングの「Silver Wings」は、1963年8月のベスト盤『GOLDEN HITS OF THE 4 SEASONS』で初お目見えしていたボブ・クルーのちょっとトロピカル風味の作品。クルーが単独で曲を書くことはあまりないが、実際には誰かが手伝ったのではないだろうか。歌詞は書けても、曲がどこまで書けるのかはちょっと疑問なのだ。

(続く)

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