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July 12, 2014

フランキー・ヴァリとザ・フォー・シーズンズ(59) バカラック=デイヴィッド=ディラン作品集 その1

第55回「Let's Hang On!/On Broadway Tonight」に続いてご紹介するシングルは、ザ・ワンダー・フー?「Don't Think Twice/Sassy」となるのだがその前に、「ボブ・ディランの47枚組BOX(その4)」の回でも簡単に触れた、このA面曲を含むアルバム『THE 4 SEASONS SING BIG HITS BY BURT BACHARACH... HAL DAVID... BOB DYLAN』(Philips PHM 200-193 [mono]/PHS 600-193 [stereo])をご紹介しておこう。

Ph193m_1

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Side 1 (B. Bacharach - H. David):
What The World Needs Now Is Love
Anyone Who Had A Heart
Always Something There To Remind Me
Make It Easy On Yourself
Walk On By
What's New Pussycat?

Side 2 (B. Dylan):
Queen Jane Approximately
Mr. Tambourine Man
Like A Rolling Stone
Don't Think Twice
(The Wonder Who)
All I Really Want To Do
Blowin' In The Wind

内容については、タイトルや曲目からも判るように、A面がバート・バカラック=ハル・デイヴィッド、B面がボブ・ディランのカヴァー集である。当初はディラン作品単独の企画だったものが、理由は定かではないが、この組み合わせに変更されたらしい。1965年11月に発売されたが、ビルボード・アルバム・チャートでの最高が106位と、フィリップス移籍後のアルバムとしては過去最低の結果に終わってしまった。

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売れなかった割に、彼らのフィリップス盤としては異例のことだが、レコード番号と盤はそのまま、1970年頃にジャケット・デザインが変更されている(参加していないジョー・ロングが写っている。ステレオ盤のみ)。この再プレス盤はレアだが、デザインは1988年のライノからの再発盤に流用されている。

アルバムの全曲をアレンジし指揮したチャールズ・カレロは、このアルバムについてこう語っている(原文はこちらの7ページ下から8ページ上に掛けて)。

「バカラックとディランの大失敗作は、私には理解できなかった部類のものだ。シーズンズはディランとはまるで無関係だったし、バカラックを歌えるほど音楽的に洗練されてもいなかった。これは私の意見だが、彼らはあのアルバムを決してリリースすべきではなかった。何かしらの契約上の問題を解消するためだったのかどうかは知らないが、私には悪いやり方としか思えなかった。ディランのカヴァーはボブ・クルーの発案だ。あれをやりながら、ばかげたアイディアだと思ったよ。私たちはフォーク・グループではなかったし、フォーク・ソングを聴く大学生のようなタイプでもなかったからね。私たちは基本的には学歴の低い、ストリート出身のイタリア系だった。60年代の若者たちが興味を持っていることについて、私たちもちょっと気にかけることだって出来たはずだ。どっちの方向に進んでいくのか、当時のフォー・シーズンズが真剣に考えていたとは思えない。彼らはヒットを放つことだけに注意を払っていた。60年代、ボブ・ディランとバート・バカラックは、モータウンの連中以上に人気のあるソングライターだった。クルーからそのアイディアの価値を説得されて、彼らはついて行ったんだろうね。そのアイディアがフランキーやボブ(・ゴーディオ)から出たとは、まったく考えられないよ」

当事者からの、かなり辛辣な意見である。当時のカレロが実際にこんな風に感じながら仕事をしていたとすれば、それはそれでプロフェッショナルとして立派だったと言うこともできるのかも知れないが…。

ただ、これが1965年の出来事と考えると、ディラン=フォークという図式で捕らえること自体に、すでに無理が生じ始めていたのではないか(当のカレロは、しっかりと時代/流行を見据えたフォーク・ロック・サウンドに仕上げている)。フォーク云々を言うのであれば、むしろピート・シーガーの「Where Have All The Flowers Gone(花はどこへいった)」やフィル・オクスの「New Town」(本人は正式に録音しておらず、後に復刻された1963年のデモ音源のみが存在していた)を含む1964年2月のアルバム『BORN TO WANDER』こそが当てはまるのではないか。決して悪いアルバムではないが、それこそブームに便乗したような居心地の悪さを感じてしまうのだ(アコースティック・ギターなど生楽器類の響きがきれいに捕らえられずに歪んでしまった録音のせいもありそうだが)。

一方のバカラックはどうだろうか。メロディやコード進行などに見られる“洗練”が、当時のフォー・シーズンズと相容れない要素だったとは、ちょっと思えない。秘蔵っ子だったディオンヌ・ワーウィックはもとより、後で紹介するルー・ジョンスンのようなR&B系の歌手、あるいはトム・ジョーンズにしても、ソウルフルだったりパワフルだったりもしているわけで、要はバランスの問題。あるいはアプローチ次第。フィル・スペクターもモータウンも大胆に呑み込んできた彼らにとって、踏み込めない聖域というわけでは決してなかっただろう。実際にこのアルバムの後も、グループやフランキー・ヴァリのソロでバカラックをカヴァーしたりしているのだから。

問題があるとすれば、組み合わせの悪さだろう。それぞれが素材としては充分に魅力的だとしても、方向性の大きく異なる2組を並べて取り上げようとすれば、アルバムとしてのイメージはぼやけてしまう。そのことが災いしたように思えてならない。それだけに、当初ディランのみのカヴァー企画だったものが、なぜバカラック=デイヴィッド作品とのスプリットという形になったのか、その理由が知りたいところだ。

まずはA面に収められたバカラック=デイヴィッド作品について。

バート・バカラックは1962年2月、作曲とアレンジを手掛けたザ・ドリフターズ「Mexican Divorce」(作詞はハル・デイヴィッドではなくボブ・ヒリアード)の録音スタジオにいた。そのセッションに参加していたうちのひとりがディオンヌ・ワーウィックで、力強さと繊細さを併せ持ったその声がいたく気に入ったバカラックは、彼女をデモ録音のための歌手に起用した。最初に録音したのが「Make It Easy On Yourself(涙でさようなら)」である。このデモ録音を気に入り、バカラックに編曲まで依頼したのがR&B歌手ジェリー・バトラーで、6月にヴィー・ジェイからリリースされたシングルはビルボードのポップ・チャートで20位、R&Bチャートでは18位まで上昇した。

セプターと契約したディオンヌは、「Make It Easy On Yourself」でデビューすることを熱望していた。ところが、すでにバトラーがレコーディングしてしまったことをバカラックとデイヴィッドから聞かされると大きなショックを受け、捨て台詞を吐いて飛び出していった。するとデイヴィッドは「おい、今の言葉は新曲のタイトルになるぞ」とバカラックに告げ、早速曲作りを開始。それが実際に彼女のデビュー曲となった「Don't Make Me Over」で、10月に発売されると全米21位を記録した。

ちなみに、「Make It Easy On Yourself」のディオンヌによるデモ録音は彼女の1963年のファースト・アルバム『PRESENTING DIONNE WARWICK』にそのまま収められ、改めて1970年のライヴ録音がシングルとなった。1965年にはザ・ウォーカー・ブラザーズがカヴァーし、9月に全英で1位、12月に全米で16位のヒットとなっている。

1963年にやはりディオンヌがデモ録音していた「(There's) Always Something There to Remind Me(愛の想い出)」(フォー・シーズンズの盤では"(There's)"が取れている)は、R&B歌手のルー・ジョンスンが1964年7月にシングルとしてリリース。それまでにも「Reach Out For Me」などのバカラック作品を歌っていたものの、ヒットに恵まれなかったジョンスンは、この曲もチャートの49位に送り込むのがやっとだった。実力はありながら、タイミングが合わなかったのだ。

翌1964年9月、イギリスの女性歌手サンディ・ショウがカヴァーし11月に全英1位に輝く。南アフリカやカナダでも1位となるなど各国でもヒットを記録したが、何故か全米では52位と惨敗。1983年になり、エレクトロ・ポップ・デュオのネイキッド・アイズによるカヴァーが初めて全米で10位まで到達した。

「Anyone Who Had A Heart」「Walk On By」はどちらもディオンヌ・ワーウィックのためのオリジナルで、1963年11月リリースの前者は全米8位、1964年4月リリースの後者は同6位と、どちらも大ヒットを記録している。

「What The World Needs Now Is Love(世界は愛を求めてる)」は1965年、ディオンヌのために書かれた曲だが、彼女が断ったため、ジャッキー・デシャノンが3月23日に録音。4月15日にリリースされたシングルは5月にビルボードで7位まで上昇した。ディオンヌも結局翌年にこの曲を録音している。

「What's New Pussycat?(何かいいことないか子猫チャン)」は、1965年6月公開の同名コメディ映画主題歌としてトム・ジョーンズが歌った。同月にリリースされたシングルは全米3位と、これも大ヒット。

当時も今もバカラックの人気作に数えられるような曲ばかり6作品が選ばれていたわけだが、カレロの施したアレンジは、驚くほど原曲に忠実で、逆に言えば、それまでのフォー・シーズンズにしばしば見られた意外性のあるアレンジとは程遠いものだった。

そして、フランキー・ヴァリはこの6曲で一切ファルセットを使わず、地声で歌い通している。これこそ「意外性」と言うべきだろうか。それだけに、グループよりもヴァリのソロに近い雰囲気とも言える。

なお、第57回にも書いたとおり、「What The World Needs Now Is Love」のモノラル・ヴァージョンには入っているギターの最初の一ストロークが、すべてのステレオ・ヴァージョンでは欠けてしまっている。つまり、

♪ジャーッ ジャジャジャッ ジャッ ジャッ ジャジャッ

の頭の「ジャーッ」がなくて「ジャジャジャッ」から始まっているのである。

(続く)

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