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June 22, 2014

フランキー・ヴァリとザ・フォー・シーズンズ(55)

(6/23追記:第53回は全シングル紹介の第12回だったのだが、誤って第11回としてしまい、以後一つずつズレてしまっていた。前回が全シングル紹介の第13回、今回が第14回となるので、訂正しておく)

ザ・フォー・シーズンズ(ザ・ワンダー・フー?名義のものを含む)およびフランキー・ヴァリの全オリジナル・アナログ・シングル紹介の第14回。

★★★★★
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A) LET'S HANG ON! (Crewe - Randell - Linzer) PHW1-37252 #3
B) ON BROADWAY TONIGHT (Crewe - Gaudio) PHW1-32851
THE 4 SEASONS Featuring the "sound" of Frankie Valli
Produced by Bob Crewe
Arranged & Conducted by Charles Calello (side A)
Arranged & Conducted by Denny Randell (side B)
Philips 40317 [28/9/65]
45cat

ニューヨーク生まれで、ピアノからトランペット、トロンボーン、ギター、ベース、ドラムスまでこなすマルチ・プレイヤーでもあるデニー・ランデルは、ハイスクール時代からバンド活動を始め、1960年代初頭には自己名義のシングルも出していた。そのレコードを聴いたニューヨークの音楽出版者シャピーロ・バーンスタインが、彼をスタッフ・ソングライターとして雇い入れる。ランデルはそこでアレンジやプロデュースも手掛けるようになり、それを聴いたCBSレコードのプロデューサー、アル・カーシャがボブ・ゴーディオに紹介。ゴーディオはランデルにフォー・シーズンズのアレンジをやらないかと持ちかけ、ボブ・クルーに紹介。かくしてランデルはボブ・クルー・プロダクションズの一員となり、やはりカーシャから紹介された作詞家のサンディ・リンザーと1964年からソングライター・コンビを組むことになるのである。

作者のランデルとリンザーがプロデュースを、チャールズ・カレロがアレンジを手掛け、女性ヴォーカル・トリオのザ・トイズが歌った「A Lover's Concerto」は、1965年8月24日にボブ・クルーのダイノヴォイスからリリースされ、ビルボードで2位を記録する大ヒットとなった。原曲の「メヌエット ト長調 (Menuett G Dur BWV Anh.114)」は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハが1725年、2度目の妻アンナ・マクダレーナに贈った2冊目の『アンナ・マクダレーナ・バッハのための音楽帳 (Notenbüchlein für Anna Magdalena Bach)』(主に子供たちの音楽教育のために、バッハや後には妻のペンで、以降何年にもわたって雑多な曲目が書き足されていった)に書き加えられていた作品のひとつ。作曲者名が書かれていなかったため、長らく大バッハ作曲と伝えられてきたが、現在ではバロック音楽のオルガン奏者/作曲家クリスティアン・ペツォールトの作品として認識されている。

Toys

これはトイズのアルバム『THE TOYS SING "A LOVER'S CONCERTO" AND "ATTACK!"』(DynoVoice 9002-S)。ビートルズ「Yesterday」のカヴァー以外の全曲を書いたリンザー=ランデルがアルバム全体のプロデュースも担当。アレンジはカレロ。

モータウンとバロックを融合した画期的な「A Lover's Concerto」に続き、ボブ・クルーの手を借りて仕上げた「Let's Hang On!」で、このコンビは遂にフォー・シーズンズのシングルA面の座を手に入れた。彼らが初めてグループに提供した「Betrayed」が「Toy Soldier」のカップリングに起用されていたのは、第53回でご紹介した通りである。

カレロによれば、この曲が出来上がった時フォー・シーズンズはツアー中で、彼は楽譜を受け取ると家に持ち帰り、ヴォーカル・パートを書き、オーケストレーションを書き、クルー=ランデル=リンザー=カレロの“チーム”は、グループ抜きでスタジオ・ミュージシャンを使ってバック・トラックを録音した。カレロは「ゴーディオは曲を気に入っていたよ。曲を承認したとは思うけど、確かじゃない」と振り返る。

ランデルがカレロの書いたヴォーカル・チャートを持ってグループのツアー先のアトランティック・シティに出向き、各ヴォーカル・パートを指導した。その練習を終えたメンバーはスタジオにやって来ると、すべてのヴォーカルを録音し、すぐにツアーに戻っていった。そしてあのスローなイントロは、このヴォーカル録りのタイミングで、恐らくはボブ・クルーのアイディアで付け加えられた。

UK鑑賞団体セッショングラフィーによれば、この曲は1965年8月にステア=フィリップスとオルムステッドという二つのスタジオで録音されている。どちらがどちらかは判らないが、片方でバック・トラックが録音され、もう片方でヴォーカルとイントロが録音されたのだろう。そしてカレロは「次のレコード(注:10月録音の「Working My Way Back To You」のことを指すと思われる)ではニック・マーシは去り、私がバンドに加わっていた」と締めくくっている。

そう、脱退したマーシがベーシストとして、ヴォーカリストとして、そしてヴォーカル・アレンジャーとして担っていた役割は、そのすべてを熟知していたカレロがそのまま引き継ぐことになるのだが、ヴォーカル・アレンジに関しては、それ以前から受け持つこともあったのかも知れない(クレジット上はアルバム『THE 4 SEASONS ENTERTAIN YOU』まで)。

と、ここで大きな疑問が生じる。マーシがフォー・シーズンズを脱退したのは6月ではなかったのか?

これまでの各記事でマーシの脱退時期を6月としていたのはセッショングラフィーに、アルバム『THE 4 SEASONS SING BIG HITS BY BURT BACHARACH / HAL DAVID / BOB DYLAN』のための11曲(ザ・ワンダー・フー?名義での「Don't Think Twice」を除く)の録音日を9月15日とした上で、「チャールズ・カレロによれば、ニック・マーシはすべてのトラックで演奏し、1965年6月にグループを脱退したので、これは恐らくボブ・クルーがマスターを登録した日付と思われる」と記載されていたからだ。

脱退時期についてネットで検索したところ、「9月」と書かれたバイオグラフィーを見つけたが、他の記述は正確ではなかったので、あまり信用できない。いずれにしても、6月ではなく8月頃と仮定してみると、いろいろとつじつまが合う。ウィキペディアの「Let's Hang On!」の項でも、この曲をマーシの参加した最後のシングルとしている。ということで、第53回で「Girl Come Running」を紹介した際の「結果的に彼の参加したフォー・シーズンズとしてのシングルはこれが最後となってしまう」という一文も訂正しておいた方がよさそうだ。

ランデルやリンザーもそうだろうが、この時期クルーやカレロは、モータウンの一連のヒット曲を強く意識していた。「私たちはモータウンのレコードを聴いて、あんな風にしたいと思った。同じミュージシャンを使っていなかったからこそ、そして同じ機材でも同じ音響でもなかったからこそ、モータウンを模倣していたんだ。決して複製できなかったあのサウンドを手に入れようと、私たちはやっきになっていた。でもそうやっていくうちに、私たちは独自のものを作り上げたんだ」とカレロは言う。

もちろんカレロが聴いていたのはモータウンだけではない。「Let's Hang On!」のスローなイントロからインテンポになるところで飛び出してくる印象的なファズ・ギターは、ザ・ローリング・ストーンズの「(I Can't Get No) Satisfaction」からヒントを得ている。

1960年代のストーンズのイメージを決定付けたこの曲は、アメリカ合衆国先行で1965年6月5日に発売され、7月10日付ビルボードから4週連続で、彼らにとって初の全米第1位を獲得している(本国イギリスでの発売日は8月20日)。そんな旬のヒット曲からすかさずアイディアを頂戴するあたりも、ヒット・レコード“製造”の最前線にいたカレロらしい。しかも「(I Can't Get No) Satisfaction」自体がモータウンを下敷きにしたりしているので、違和感もないわけだ。

「Let's Hang On!」ではホーン・セクションも効果的に使われている。ホーンの導入はシングルA面では実に「Ain't That A Shame」以来のこと。これ以降のモータウン風路線ではホーンが多用されるようになるが、カレロは「サックスが2本の時には、ジョー・ファレルを使った。彼は有名なジャズ・ミュージシャンだったけど、ポップ・ミュージックを理解できるぐらい、まだ充分若かったんだ」と言っている。

とにかく曲の作りは明快、ファルセットもコーラスも鮮やかで、新しい魅力に溢れた「Let's Hang On!」は9月28日に発売され、12月11日付ビルボードで3位に到達した。トップを阻んだのはビートルズ、ではなくてザ・バーズの「Turn! Turn! Turn!」(1位)とザ・スプリームズの「I Hear A Symphony(ひとりぼっちのシンフォニー)」(2位)だったが、いずれにしても1960年代のフォー・シーズンズを代表する重要な1曲となり、コンサートのフィナーレを盛り上げる定番の人気曲となった。

オリジナル・アルバムには未収録で、リリース2か月後の11月に出たベスト盤『THE 4 SEASONS' GOLD VAULT OF HITS』のA面1曲目に収録。この時点でステレオ・ヴァージョンはなく、ステレオ盤にもモノラルで収録された。

第7回で紹介したように、『EDIZIONE D'ORO (GOLD EDITION)』で初登場したステレオ・ヴァージョンは、スローなイントロなしでいきなりファズ・ギターから始まる。『STORY』ではオリジナル通りのモノラル・ヴァージョンに戻された。『EDIZIONE D'ORO』のCDには、モノラル・ヴァージョンのスローなイントロとステレオ・ヴァージョンの本編とを繋いだハイブリッド・ヴァージョンで収録され、これは『JERSEY BEAT - THE MUSIC OF FRANKIE VALLI & THE 4 SEASONS』にも流用されている。

スローなイントロの一番最初のスタート部分、マスターテープの頭出しをミスしたような感じで、ほんの僅かに音が立ち上がりきれていなくて、ふわっとピッチが上がって安定する箇所があるのだが、オリジナル・シングル(私の盤は送り溝の手書きのマトリクスがPHW1 137252-1)の段階ではほとんど目立たない。

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シングルは1967年以降、このような青いフィリップス・レーベルで再プレスされているが(手持ちの盤のマトリクスは37252-1 1-II)、収録された各LPやCDと同様、初期プレスとは異なり頭のピッチの変化は明らかで、音の鮮度も少し落ちている。とりあえずシングルを買うなら、黒いフィリップス・レーベルの初期プレスをお勧めする(その中でもプレスによる違いはあるかも知れないが)。

恐らく1966年、この曲の替え歌がBeech-Nutペパーミント・ガムのテレビ・コマーシャルに使われ、フォー・シーズンズ自身も画面に登場した(ベースはジョー・ロング)。

人気コーラス・グループ、ザ・マンハッタン・トランスファーの1994年のアルバム『TONIN'』(Atlantic 7597-82661-2)は、フィーリクス・カヴァリーア、スモーキー・ロビンソン、ローラ・ニーロ、ベン・E・キングら豪華ゲストとのコラボレーションによる60年代ヒットのカヴァー集だったが、1曲目が「Let's Hang On!」で、フランキー・ヴァリがゲスト参加して一緒に歌っている。サルサ風味のアレンジが楽しい。

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カップリングの「On Broadway Tonight」は、アルバム『RAG DOLL』からシングル・カットされた同名テレビ番組のテーマ曲。“ON BROADWAY TONIGHT”は1964年7月8日から1965年3月12日までCBSテレビでオンエアーされたバラエティー・ショーで、歌手/俳優/バンドリーダーのルディ・ヴァレーが司会を務め、毎回新人を含むタレント6組を紹介する1時間番組だった。

曲はクルーとゴーディオが書き下ろした。当時のテレビ番組のテーマ曲らしく、ビッグ・バンドをバックに全編コーラスで歌われる。アレンジと指揮はランデルが担当し、アルバムでは他の曲と毛色が違うこともあってかB面のラストに収められていた。

このオープニング・クレジットを観ると、同曲のインスト・ヴァージョンがオープニングに使われていたことがわかる。フォー・シーズンズの歌入りはエンディングに使われていたのだろう。それにしても、たとえB面だとしても番組終了後にシングル・カットというのも何だか間の抜けた話だ。

(続く)

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