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August 23, 2013

武蔵小山アゲインでのフランキー・ヴァリ・トーク・イベント無事終了

武蔵小山アゲインでのイベント、『ようこそフランキー・ヴァリ!フォー・シーズンズ来日記念トーク』は昨22日、無事に終了した。はっきり言って予想を大幅に上回る来客数で、アゲインの石川さんもびっくりといった感じ。ご来場くださったみなさん、本当にありがとうございました。

取り急ぎ、セットリストをまとめてみた。アナログ盤、CD、DVDを自分でとっかえひっかえしながらのしゃべりなので、スムーズに流れるよう、時間配分も計算しながら、その都度曲目を調整する感じで、予定していて紹介できなかった曲も多かったが(以下のリストも実際と順番が違っている箇所もあるかも知れない)、相方を務めてくださった高田和子さんの、いい意味でのミーハー精神にあふれる貴重なお話の数々に助けられ(というか、彼女の話がなかったら今回の企画は成り立たなかったとすら言える)、まあなんとかまとめることが出来たかな、と思う。

Part 1:
[01] The 4 Seasons "Opus 17 (Don't Worry 'Bout Me)"
From the single [Philips 40370]
私から、挨拶代わりにお気に入りの1曲を。

[02] Frankie Valli & The Four Seasons "Silence Is Golden"
From the DVD "The Very Best Of Frankie Valli & Four Seasons - Live In Concert" [Delta 82 170]
同様に高田さんのお気に入り。私がアップテンポを選んだので、スローな曲をと。

[03] Frankie Valli "Native New Yorker"
From the CD 『恋人たちの調べ』 [Rhino WPCR-15060]
高田さんがご覧になった昨年10月のブロードウェイ公演で演奏された曲。

[04] Frankie Valli "My Mother's Eyes"
From the single [Philips DJP-16] (Promo Only)
ここから"Jersey Boys"の話。ヴァリのデビュー曲(1953)の、これは1967年の再録音。

[05] The Four Lovers "You're The Apple Of My Eye"
From the CD "The Four Lovers 1956" [Bear Family BCD 15424]
トミー・デヴィートについての話に続けて、彼らの当時(1956年)の唯一のヒット曲を。

[06] Frankie Valli & The Four Seasons "A Sunday Kind Of Love"
From the DVD "Frankie Valli & Four Seasons" [Studio Gabia DVDM-029]
街角でのドゥーワップの様子を再現した1982年シカゴでのライヴ映像から。

[07] Bob Crewe "Crazy In The Heart"
From the LP "Crazy In The Heart" [Warwick W 2034]
プロデューサー、ボブ・クルーはどんな人だったか、歌手としての一面を紹介。

[08] Bob Crewe Presents The Village Voices "Too Young To Start"
From the single [Topix 45-6000-V]
クルーのプロデュースのもと、さまざまな変名で出したうちの1枚から(1960年)。

[09] Jonathan Marcus "What About Me"
From the single [M-G-M K 13580]
劇中では彼らとボブ・ゴーディオを引き合わせたことになっているジョー・ペシ(俳優)が変名で出したシングル(作・プロデュースはゴーディオで1966年制作)。

[10] Miss Frankie Nolan "I Still Care"
From the single [ABC Paramount 45-10231]
彼らがいやいやバック・ヴォーカルを務めた、謎の女性歌手のシングル(1961年)。

[11] Alex Alda "Little Pony"
From the CD "Frankie Valli & The 4 Seasons - The Fantastic First Years" [Sparkletone SP 99005]
ニック・マッシが変名でリード・ヴォーカルを務めた唯一の曲(1961年)。高田さんのニックへの想いも語っていただいた。

[12] The 4 Seasons "Sherry"
From the LP "Golden Hits of the 4 Seasons" [Vee-Jay SR 1065]
遂にブレークを果たした彼らの大ヒット曲のオルタナティヴ・ステレオ・ヴァージョン。何とか「シェリー」にたどり着いて前半が終了。

Part 2:
[01] The 4 Seasons "Big Girls Don't Cry" (From The Steve Allen Show, 1963)
[02] The 4 Seasons "Working My Way Back To You" (From Hullabaloo, 1966)
[03] Frankie Valli & The Four Seasons "I've Got You Under My Skin" (From Top Of The Pops, 1971)
[04] Frankie Valli & The Four Seasons "Dawn (Go Away)" (From Los Angeles Coliseum Concert, 1972)
[05] The Four Seasons "Rhapsody" (Promo Film, 1976)
[01]~[05]:From the DVD of "Jersey Beat - The Music Of Frankie Valli & The 4 Seasons" [Rhino R2 74852]
メンバー・チェンジの変遷をライヴ映像で比較。会場では曲目紹介を忘れてしまった。

[06] Frankie Valli "The Sun Ain't Gonna Shine (Anymore)"
From the single [Smash 1995]
ここからヴァリのソロ活動の紹介。アルバムとヴォーカルが異なるシングル・ヴァージョン。

[07] The Valli Boys "Night Hawk"
From the single [Smash 2015]
セカンド・シングル「(You're Gonna) Hurt Yourself」にカップリングされたインスト曲。

[08] Frankie Valli "Cry For Me"
From the single [Smash 2037]
サード・シングルのB面曲でアルバム未収録。"Jersey Boys"には、他のメンバーと引き合わされたボブ・ゴーディオがこの曲を披露する場面がある。

[09] Frankie Valli & The Four Seasons "Can't Take My Eyes Off You"
From the DVD "Frankie Valli & Four Seasons" [Studio Gabia DVDM-029]
大ヒット「君の瞳に恋してる」を1982年のライヴ・ヴァージョンで。客席の唱和も印象的。

[10] Frankie Valli & The Four Seasons "The Night"
From the single [Mowest MW 3002]
ここからモーウェスト~モータウン時代の話。イギリスのみでシングル・カットされた曲。

[11] Frankie Valli & The Four Seasons "The Night" (2012 Version)
From the CD "Working My Way Back To You" [Rhino 8122797259]
イギリスのみでベスト盤に追加収録された2012年の新録ヴァージョン。2012年と2013年のイギリス公演でも披露された。

[12] Frankie Valli "Listen To Yesterday"
From the single [Motown 1279F]
シングルB面曲だが、編集盤『Motown Years』に収録されたものとヴァージョン違い。

[13] Frankie Valli & The Four Seasons "My Eyes Adored You"
From the CD-R (unofficial)
契約の切れたモータウンから権利を買い取り、まだ発売される前の、後の大ヒット曲を、1974年6月の貴重なライヴ・ヴァージョンで紹介。

[14] Frankie Valli & The Four Seasons "Bridge Over Troubled Water / Long And Winding Road / McArthur Park"
From the CD-R (unofficial)
同じライヴ録音から、レコード化されていない驚愕のヒット・カヴァー・メドレーを。

[15] Frankie Valli "You To Me Are Everything"
From the single [Private Stock PS 45.098]
プライヴェート・ストックからの4作は国内CD化されたが、これは「We're All Alone(ふたりの面影)」のシングルB面でアルバム未収録。

[16] Frankie Valli & The Four Seasons "Beggin'"
From the DVD "The Very Best Of Frankie Valli & Four Seasons Live In Concert" [Delta 82 170]
ライヴ映像によるメンバーの変遷の紹介の続き。1992年アトランティック・シティ公演より。

[17] The Manhatten Transfer with Frankie Valli "Let's Hang On"
From the CD "Tonin'" [Atlantic 7567-82661-2]
マンハッタン・トランスファーが1994年に豪華ゲストを招いて制作した60年代ヒット曲集から、サルサっぽいアレンジのこの曲を。

[18] Frankie Valli & The Four Seasons "Swearin' To God"
From the DVD-R (unofficial)
まとまった映像としては最新のものである2008年のアイス・ショーとのコラボレーション"Tribute On Ice"から、佐藤有香さんも登場するこの大作でイベントを締め括り。

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August 21, 2013

明日は武蔵小山でフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズのトーク・イベント開催!

表題の通り、武蔵小山のライヴ・カフェ・アゲインでのトーク・イベントが、いよいよ明日に迫ってきた。題して、

ようこそフランキー・ヴァリ!フォー・シーズンズ来日記念トーク

開場は19:00、スタートは19:30だ。入場料は1,000円(ほかにチャージが必要)。

お相手を務めてくださるのは、高田和子さん。彼女は、フォー・シーズンズを描いてロングラン中のミュージカル"Jersey Boys"のリピーターさんで、去年10月のフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズのブロードウェイ公演もご覧になり、今年はニュー・ジャージーのフォー・シーズンズゆかりの地も訪ねられたので、そのあたりのお話をいろいろと伺うつもり。

彼女のブログ"And This Is Not Elf Land"はこちら

私も、おなじみのヒット曲のほかに、いろいろと珍しい音源や映像も紹介するつもりなので、お楽しみに。
かける予定の曲の一部を予告しておこう。

Bob Crewe Presents The Village Voices 「Too Young To Start」(1960)
Turner Di Sentri 「Spanish Lace」(1960)
Miss Frankie Nolan 「I Still Care」(1961)
Alex Alda 「Little Pony」(1961)
Frankie Valli 「The Sun Ain't Gonna Shine (Anymore)」(Single Version) (1965)
The Valli Boys 「Night Hawk」(1965)
Jonathan Marcus 「What About Me」(1966)
Light 「Buena Vista」(1970)
Frankie Valli 「Circles In The Sand」(Stereo Single Version) (1970)
Frankie Valli 「Listen To Yesterday」(Original Single Version) (1973)
Frankie Valli & The Four Seasons 「My Love」(Unreleased Live Version) (1974)
Frankie Valli 「You To Me Are Everything」(1976)
Frankie Valli y Sandra Diego 「Fantasia de Amor (Bello sentimiento)」(1986)
The Manhattan Transfer with Frankie Valli 「Let's Hang On」(1994)
Frankie Valli with Juice Newton 「My Love」(Officially Unreleased) (1995)
Mary Griffin with Frankie Valli 「Can't Take My Eyes Off You」(1997)
Frankie Valli & The Four Seasons 「The Night」(2012 Version) (2012)

実際に全部かけられるかどうかは判らないが、これだけまとめて聴ける機会はなかなかないと思うので、ぜひ皆さん遊びに来て頂きたい。よろしくお願いします。


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August 07, 2013

フランキー・ヴァリとザ・フォー・シーズンズ(41)

明日8月7日は、フランキー・ヴァリ『君の瞳に恋してる』の発売日。新・名盤探検隊の4タイトルは来週8月14日の発売だが、こんなセットもあるんだね。このエコバッグ、ちょっと欲しいなぁ。

ところで、ワーナーミュージックのスタッフブログでは、「祝!初来日公演 フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ 黄金の24曲はこれだ!」と題して、定期的に曲紹介がアップされている。最新記事は『その11「くよくよするなよ」』。一応偽名だが正体バレバレのザ・ワンダー・フー?名義によるボブ・ディラン・カヴァー「Don't Think Twice」だ(当時の邦題は「ドント・シンク・トワイス」)。

ブログでもおわかりの通り、点つなぎのピクチャー・スリーヴになっていて、最後までつなぐと“We are your favorites”の文字が浮かぶ仕掛けとなっているが、そんなわけで中古で出回っているのはほとんどが線が引かれた状態。ということで、つなぐ前の状態のものをお見せしよう。
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一つ前の記事では「I've Got You Under My Skin(君はしっかり僕のもの)」が紹介されているが、掲載されたジャケット写真はフランス盤EPだったので、オリジナルのピクチャー・スリーヴ写真を載せておこう。私にとって、この曲こそが彼らの全録音の中でのベスト・ワンだ。
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以前にも報告したとおり、来週発売のレコード・コレクターズ9月号に記事を書いた。

フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ
奇跡の初来日が決定! 
60年代初頭の英国勢の猛攻に対抗し得た稀有なポップ・グループの足跡を辿り直す

というのが見出し。4段組6ページという本当に限られたスペースに、60年の歴史を無理やりぶち込んだ感じで、うち4ページの3段分はアルバム12選に割り当てられている。今月発売の5タイトルも、当然その中に含まれている。残り7枚に何を選んだかは、見てのお楽しみということにしておこう。残念だったのは、特に初期のアルバムをほとんどオミットせざるを得なかったことで、ヴィー・ジェイ時代の『AIN'T THAT A SHAME AND 11 OTHERS』ぐらいは入れておきたかった。

それでは、長々とかかってしまった『BIG GIRLS DON'T CRY AND TWELVE OTHERS』の紹介を終わらせてしまおう。

6. Big Girls Don't Cry (Bob Crewe - Bob Gaudio)
これはファースト・アルバムからの再録。以前も書いたように、ステレオ盤でもこの曲のみ、何故かモノラルのまま収録されていた。これは日本でもビクターから発売された当時の国内盤『恋のハリキリ・ボーイたち』でも同様だったようだ。詳しくはJDさんのブログを参照のこと。

7. Goodnight My Love (John S. Marascalco - George Motola)

プロデューサーでソングライターのジョージ・モトーラは1940年代にこの曲を書き始めたが、当時は仕上げることが出来ず、ジェシー・ベルヴィンが完成させた。ところがベルヴィンはプロデューサーのジョン・マラスカルコに著作権を売り渡したので、上記のクレジットとなった。

ベルヴィンは、第25回で紹介した「The Girl In My Dreams」を歌ったドゥーワップ・デュオ、ザ・クリークスの片割れで、1956年にこの曲を録音しR&Bチャートの7位に送り込んだが、彼は1960年に27歳の若さで交通事故で死んでしまった。

このロマンティックなバラードは、DJアラン・フリードのラジオ番組でクロージング・テーマに使用され、レイ・ピーターソン(1959)、ザ・フリートウッズ(1963)、ポール・アンカ(1968)、ザ・ハニーズ(1969)など多くのカヴァーを生んだ。

(続く)

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August 02, 2013

映画『リリー』とその主題歌「Hi-Lili, Hi-Lo」

去年12月26日付けのブログで紹介を始めたザ・フォー・シーズンズのオリジナル・セカンド・アルバム(クリスマス・アルバムを挟めば通算3作目)『BIG GIRLS DON'T CRY and TWELVE OTHERS』の紹介が、まだ終わっていなかった! そしてB面の曲目紹介の途中、

次の5曲目は、1953年のMGM映画『リリー』のメイン・テーマ「Hi-Lili, Hi-Lo」のカヴァーだが、この映画とその音楽については、次回詳しく紹介する。

こう書いたのが5月22日のブログだった。ずいぶんと時間が経過してしまったが、ようやくご紹介が出来る。著作権の問題もあり、普段はYouTubeへのリンクや動画の埋め込みは行わないのだが、今回はテーマの性格上、聴き比べていただくのがよいかと考え、試しにいろいろと埋め込んでみたが、どうだろうか。

5. Hi-Lili, Hi-Lo (Helen Deutsch - Bronislau Kaper)
まずは女優レスリー・キャロン(Leslie Caron)の紹介から始めよう。彼女は1931年7月フランス生まれ。母親がアメリカ生まれのバレリーナで、彼女もコンセルヴァトワール・ド・パリでバレエを習っていたが、15歳の時ローラン・プティに見出され、彼が率いるシャンゼリゼ・バレエ団のプリマとなった。舞台上で踊る彼女を見てその才能を見抜き、映画界にスカウトしたのが、ミュージカル映画にモダン・バレエの要素を取り入れて成功したジーン・ケリーである。アカデミー作品賞、音楽賞など8部門を獲得した1951年のMGMミュージカル映画『巴里のアメリカ人(An American in Paris)』でキャロンはケリーとともに主役を務め、センセーショナルなスクリーン・デビューを飾った。

一躍MGMミュージカルのスターとなったキャロンにとって3本目の主演作となったのが、1953年3月公開(日本公開も同年)の『リリー(Lili)』(チャールズ・ウォルターズ監督)で、彼女はアカデミー主演女優賞にもノミネートされた。相方を務めたメル・ファーラー(Mel Ferrer)は舞台俳優、放送局ディレクターなどを経て1945年映画デビュー、監督業も務めた俳優で、1954年にはオードリー・ヘップバーンと結婚している(1968年に女性問題が原因で離婚)。

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映画『リリー』の音楽を手がけたのは、ポーランド出身の映画/舞台音楽作曲家ブローニスラウ・ケイパーで、演奏はハンス・ソマー指揮MGMスタジオ・オーケストラが手掛けている。ケイパーの経歴について、キネマ旬報増刊『世界映画音楽事典』(1978)(←かなり古いですが…)の記事を元にまとめてみると、彼は1902年2月5日、ワルシャワ生まれ。ワルシャワ大学で法律を専攻すると同時に音楽院で作曲法とピアノを学んだ。卒業後はベルリンへ行き、キャバレーなどで演奏していたが、ドイツのプロデューサー、サム・シーゲルの紹介で映画の仕事につき、ワルター・ユルマンと6年ほど共同で作曲した。1933年、ナチ台頭とともに妻とパリに移り、2年間映画の仕事をしつつ、「Ninon」などのヒット・ソングも書いた。1935年、この曲が休暇でパリに来ていたルイス・B・メイヤー(MGM=メトロ・ゴールドウィン・メイヤーの創立者の一人でもある映画プロデューサー)の耳にとまり、翌年ハリウッドに招かれた。映画のために歌曲を書き、4年後にスコアも担当する。1953年までMGM専属、その後はフリーとして各社の作品を手がけた。

ケイパーの有名な作品としては、1947年の『大地は怒る(Green Dolphin Street)』のテーマ曲で、1958年にマイルズ・デイヴィスが取り上げたことがきっかけでジャズ・スタンダードとなった「On Green Dolphin Street」などがある。

ミュージカル映画に分類される『リリー』だが、映画の中で実際に歌われるのはワルツの「Hi-Lili, Hi-Lo」1曲だけである。だがこの曲のメロディーは映画全体の主軸を成す重要なファクターであり、オープニングに流れるメイン・タイトルほかさまざまなモチーフで使われている。

この歌曲を作詞したのは、映画の脚本を担当したヘレン・ドイチュで、その脚本は作家ポール・ギャリコが1950年10月にサタデイ・イヴニング・ポストに載せた短編「The Man Who Hated People」を翻案したものだった。映画の成功を受け、ギャリコも1954年にこの短編をベースにした小説『七つの人形の恋物語(The Love of Seven Dolls)』(矢川澄子による邦訳は角川文庫ほか)を完成させている。

『リリー』の映画音楽は第26回アカデミー賞も獲得しているが、部門はミュージカル映画音楽賞ではなく、劇・喜劇映画音楽賞だった。音楽と一体化した重要な場面としては、主人公リリー(レスリー・キャロン)の空想による二度のダンス・シーンがある。途中からスキップ・マーティン編曲のスウィング・ジャズになる「Adoration」、二度目は「Hi-Lili, Hi-Lo」をモチーフにしたクラシカルな演奏で、どちらもダンサーとしての彼女が本領を発揮する場面になっている。

この「Hi-Lili, Hi-Lo」が登場するのは、映画の中のこんな場面だ。カーニバルでの給仕の仕事をクビになったリリー(レスリー・キャロン)は行く当てもなくなり、自殺しようと梯子を登り始める。彼女に思いを寄せながら気持ちを伝えられないでいた人形遣いのポール(メル・ファーラー)は、人形劇のキャラクターの一つキャロット・トップをとっさに演じ、リリーを呼び止める。人形たちとの掛け合いの中で歌を歌うよう促されたリリーは、「古い歌よ。父とよく歌っていたの」と前置きして、キャロット・トップ(を幕の後ろから操るポール)と一緒に、アコーディオンの伴奏に乗せてこのカーニヴァル風のワルツを歌う。

前述の通りアカデミー賞を獲得したにもかかわらず、当時MGMからオリジナル・サウンドトラック盤として出たのは「Adoration」「Hi-Lili, Hi-Lo」「Lili and the Puppets (Part 1)」「同(Part 2)」を収めた4曲入りEP(X1025)と、「Hi-Lili, Hi-Lo」「Lili and the Puppets」のシングル(78回転=30759、45回転=S34)だけで、後年リリースされたいくつかのLP(いずれも他の映画のサントラとのコンピレーション)にも、EPの4曲が収録されるにとどまった。

Lili_e

『リリー』の完全版サントラ・アルバムは、公開から実に50年以上を経た2005年になってようやく、アメリカのターナー・クラシック・ムーヴィーズ・ミュージックというところから登場、3,000枚限定でリリースされた(タワー・レコードなどにはまだ在庫が残っていて、購入可能)。本編が12トラックで49分35秒、ボーナス・トラックが10トラックで22分31秒、トータルで72分21秒というボリュームで、歌入りの「Hi-Lili, Hi-Lo」も3ヴァージョン収められている。

“LILI” ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK (Turner Classic Movies Music FSM Vol.8 No.15)
Lili_a

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リリース当時、「Hi-Lili, Hi-Lo」はシングル・チャート上の成績は30位止まりだったが、世界各国で人気を博した。その結果、様々なタイプのカヴァー・ヴァージョンを生んでいるのだが、実はこの曲の初録音は上記サウンドトラックではない。ダイナ・ショアが1952年8月に録音し(伴奏はフランク・デ・ヴォル楽団)、同年11月にRCAビクターからリリースしていたのである。レーベルにはしっかり「MGM映画"Lili"より」と書かれているので、オリジナルよりもカヴァーが先に出たことになる。

レスリー・キャロンとメル・ファーラーの歌う“オリジナル”と、ダイナ・ショアの“カヴァー”では構成が違う。

キャロン=ファーラー版では、♪On every tree there sits a bird..から始まるヴァースの後、ワルツのテンポで♪A song of love is a sad song..以下のコーラス(リフレイン)部分が始まるが、ショア版にはヴァース部分がなく、いきなりワルツからスタート。そして中間部に、本来ヴァースだった♪On every tree there sits a bird..以下の歌詞とメロディーがワルツのテンポのまま挿入される。

もう一つの違いはサビの部分で、キャロン=ファーラーの歌が

Hi-Lili, Hi-Lili, Hi-Lo, Hi-Lo
Hi-Lili, Hi-Lili, Hi-Lo
Hi-Lili, Hi-Lili, Hi-Lo, Hi-Lo
Hi-Lili, Hi-Lili, Hi-Lo.

とシンプルな繰り返しになっているのに対し、ショアの歌には

I sit at the window and watch the rain,
Hi-Lili, Hi-Lili, Hi-Lo
Tomorrow I'll probably love again,
Hi-Lili, Hi-Lili, Hi-Lo.

と歌詞が付いている。そして、以後紹介するカヴァーはいずれも基本的にこちらの歌詞付きで歌われている。

ワルツのテンポで歌われる一般的なカヴァーとして、正統的なジャズ~ポピュラー畑ではコーラス・グループのフォー・エイシズ(1958)、男性歌手のジョニー・マティス(1963)、女性歌手のジョニ・ジェームズ(1959)やテレサ・ブルーワー(1964)などを挙げておく。女性アイドルのシェリー・ファブレー(1962)、カントリーのスリム・ウィットマン(1963)、歌う俳優リチャード・チェンバレン(1963)などの録音もある。ヴァースは付いていたり、付いていなかったりと、いろいろだが、ダイナ・ショアのようにもとのヴァースのパートをイン・テンポで挟み込むパターンのものは少ない。

驚いたのは、ポルトガルのファドを代表する大歌手となるアマリア・ロドリゲスが、若き日にこの曲を歌った映像なんていうものが残されていたことだ。1953年、彼女はポルトガルの歌手として初めてアメリカ合衆国のテレビに出演した。フランス映画『過去を持つ愛情』に出演して「暗いはしけ」を歌い、世界的に有名になる1年前の出来事である。

出演したのはエディー・フィッシャーがホストを務めるABCテレビの「Coke Time」という番組である。ついでに、フィッシャーらに紹介されて登場し、ファド「Coimbra(ポルトガルの四月)」を歌うシーンも観てみよう。

さすがにこちらは本領発揮。これが彼女の若き日の姿だ。本来のテイストではない「Hi-Lili, Hi-Lo」をサービスで歌ったということは(もちろんレコーディングはしていない)、それだけこの曲が当時ポピュラーだったということだろう。

エヴァリー・ブラザーズは、1961年5月31日に「Hi-Lili, Hi-Lo」を録音、同年のカヴァー・アルバム『THE EVERLY BROTHERS (Both Sides of An Evening)』に収録されたが、実は同日にまったく異なるアレンジのヴァージョンも録音していた。そちらはお蔵入りし、2005年のレア・トラック集『FROM NASHVILLE TO HOLLYWOOD』で日の目を見た。通常ヴァージョンの方はスローなワルツで、繰り返しなしで終わるが(ヴァース部分はなし)、オルタナティヴ・ヴァージョンの方はアップテンポのスウィンギーな4ビートで、ギターが大活躍するのだが、これが実にカッコいい。当時としては斬新過ぎたのがお蔵入りの理由か?

次の動画ではアップテンポ、スロー、スロー(1964年のテレビでのライヴらしい。映像つきの動画も別にあり)の3ヴァージョンがまとめて聴ける。

同じ1961年には、リー・ヘイゼルウッドとレスター・シルがプロデュースしたトニー・キャッスル&ザ・レイダーズというバンドのヴァージョンも出た。ドゥウェイン・エディっぽいギターをフィーチャーしたインストゥルメンタルで、8ビートで演奏されている。

そしてフォー・シーズンズのアルバム『BIG GIRLS DON'T CRY and TWELVE OTHERS』に収められた1962年末頃の録音がこれだ。

メロディーの解体振りが半端ではない。8ビートだがリズムも独特。サビの

Tomorrow I'll probably love again,
Hi-Lili, Hi-Lili, Hi-Lo.

の部分はすっ飛ばされている。そして本来のヴァース部分のうち、線で消した以外の4行分にまったく別のメロディーを付けたものが、中間部に挿入されている。

On every tree there sits a bird
Singing a song of love
On every tree there sits a bird
And every bird I've ever heard
Could break my heart without a word
Singing a song of love

ここまで変えてしまう大胆な発想は、どこから出てくるのだろうか。

1965年にはレイ・コニフによるソフト・ロック風のヴァージョンも登場。

だが何といっても1965年の注目すべきカヴァーは、6月10日に録音されたマンフレッド・マンのヴァージョンだろう。アルバム『MANN MADE』に収められたもので、ヴァースの最初の2行分だけが歌われてすぐに8ビートのコーラスへ突入。

これ以降、各国のビート・バンドによるカヴァーが続出するが、いずれもマンフレッド・マンのヴァージョンが下敷きになっている感じだ。まずはアラン・プライス・セット(1966年)。これもカッコいい。

続いてはスウェーデンのシェインズ(1966年)。

ウルグアイのロス・イラクンドスはスペイン語で歌っている(1967年)。"Hi-Lili, Hi-Lo"をそのまま♪イリリ、イロ..とスペイン語読みしているので、イナタいアレンジも含め、ちょっと間抜けな感じだ。

ジーン・ヴィンセントの1967年のヴァージョンはそれらとは違い、6/8のロッカ・バラード風にアレンジされている。

夭折したティム・バックリー、1999年の未発表録音集『WORKS IN PROGRESS』には「Hi Lily, Hi Lo (Take 7)」(1968年6月19日録音)が収められ、作者名もKaper/Deutschとクレジットされているが、歌い出しの

The song of love is a sad song
For we have loved and it's so

の部分以外は歌詞がまったく違い、リズムはワルツだがメロディーも別のものである。1990年リリースの発掘ライヴ盤『DREAM LETTER: LIVE IN LONDON』(1968年10月7日録音)には「Carnival Song (Buckley) / Hi Lily, Hi Lo (Deutsch)」として収められているようだが(持っていないので正確には未確認)、1967年の『GOODBYE AND HELLO』収録曲「Carnival Song」とも無関係で、このあたりの経緯は謎だ。

↓こちらは『WORKS...』収録のスタジオ録音の方。

最後に、印象的なカヴァーをもう一つ。リッキー・リー・ジョーンズの1991年のアルバム『POP POP』に収められた気だるいワルツ・ヴァージョンで、ロベン・フォードのアコースティック・ギター、チャーリー・ヘイデンのベース、そしてディノ・サルーシのバンドネオンをバックに歌われている(動画はなし)。

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