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April 28, 2013

フランキー・ヴァリも参加したジュース・ニュートンのデュエット企画

1980年代前半にヒット・チャートを賑わせたアメリカの女性歌手、ジュース・ニュートンの現時点での最新アルバム(編集盤は除く)は、2010年10月にリリースされたデュエット集だ。

"DUETS: FRIENDS & MEMORIES" (FUEL 302 061 855 2)
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グレン・キャンベル、ウィリー・ネルソン、ゲーリー・モリス(カントリー歌手)とのデュオが2曲ずつ、あとはフランキー・ヴァリ、ランディー・マイズナー、ダン・シールズ、メリッサ・マンチェスターとのデュオが1曲ずつ収められている。

2009年に亡くなったダン・シールズ(イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリーの片割れ)と、ジュースの長年の音楽的パートナーでやはり同年に没したオサ・ヤングの思い出に捧げられ、ジュースからデュエット相手への2010年のコメントも掲載されているが、録音年に関する記載は一切ない。
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で、果たしてこれはいったいいつ録音されたものなのかというと、実は1995年だったのである。

デュオ作品としてのコンセプトを立て、アレンジとプロデュースを手がけたのは、1980年代のジュースの諸作でもアレンジを担当していたチャールズ・カレロで、レコーディングは1995年の8月から10月にかけてナッシュビルと西海岸で行われた。そして当時、少なくとも10組のアーティストと2曲ずつ、ヒット曲のカヴァーばかり計20曲が録音されたのである。

この20曲は当時2枚のCDに分けて収録され、形になるにはなった。その内の1枚を、本日ようやく入手出来たので、こうして記事にしているわけである。まずは、その内容をご紹介しよう。

"PLATINUM & GOLD - ALL TOP HITS! VOLUME TWO / All duets with JUICE NEWTON" (CD RECORDS VENTURE PARTNERS ONE CD1002)
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1. Come A Little Bit Closer - Pointer Sisters (7)
 オリジナルはジェイ&ジ・アメリカンズ(1964)
2. Touch Me - Willie Nelson (8) ★
 オリジナルはウィリー・ネルソン自身(1962)
3. Fooled Around And Fell In Love(愛に狂って) - Gary Morris (7) ★
 オリジナルはエルヴィン・ビショップ(1976)
4. You've Lost That Lovin' Feeling(ふられた気持) - Melissa Manchester (-) ★
 オリジナルはライチャス・ブラザーズ(1964)
5. Take It To The Limit - Randy Meisner (-) ★
 オリジナルはイーグルス(1975)
6. Somebody's Baby - Eddie Money (-)
 オリジナルはジャクソン・ブラウン(1982)
7. My Love - Frankie Valli (8)
 オリジナルはポール・マッカートニー&ウィングス(1973)
8. These Dreams - Dan Seals (8) ★
 オリジナルはハート(1985)
9. Baby I'm-A Want You(愛の別れ道) - Eddie Rabbitt (7)
 オリジナルはブレッド(1971)
10. Up Where We Belong(愛と青春の旅だち) - Glen Campbell (8) ★
 オリジナルはジョー・コッカー&ジェニファー・ウォーンズ(1982)

もちろんお目当ては、2010年版『DUETS: FRIENDS & MEMORIES』でオミットされたフランキー・ヴァリとの「My Love」だ。出来は最高とまでは言わないが、まあ聴けてよかった(詳しい分析はまたいずれ)。

★印が2010年版にも収録されている曲。聞き比べて、音質面も含め、特に手を加えた形跡はなく、まったく同じものであることが確認できた。(7)とか(8)とか(-)が何を示しているのかは、後で説明する。

これは第2集ということで、未入手の第1集も、次のような曲目のはずなので紹介しておく。ジャケット・デザインは"VOLUME TWO"の部分が"VOLUME ONE"になっている以外は同一。

"PLATINUM & GOLD - ALL TOP HITS! VOLUME ONE / All duets with JUICE NEWTON" (CD RECORDS VENTURE PARTNERS ONE CD1001)

1. I Hear You Knocking - Pointer Sisters (8)
 オリジナルはスマイリー・ルイス(1955)のはず
2. Funny How Time Slips Away - Willie Nelson (7) ★
 オリジナルはビリー・ウォーカー(1961)、ウィリー・ネルソンのセルフ・カヴァーは1962年
3. What You Want Do For Love(風のシルエット) - Melissa Manchester (8)
 オリジナルはボビー・コールドウェル(1978)
4. The Biggest Part Of Me - Frankie Valli (7) ★
 オリジナルはアンブロージア(1980)
5. Time After Time - Eddie Money (7) ★★
 オリジナルはシンディ・ローパー(1984)
6. Friends And Lovers - Eddie Rabbitt (8)
 オリジナルはグロリア・ローリング&カール・アンダーソン(1986)だが、エディ・ラビット&ジュース・ニュートンも同時期に「Both to Each Other」のタイトルでヒットさせている
7. Without You - Glen Campbell (7) ★
 オリジナルはバッドフィンガー(1970)、ニルソンのカヴァーは1971年
8. Still The One(一人のままで) - Gary Morris (-) ★
 オリジナルはオーリーンズ(1976)
9. Heart Of Gold(孤独の旅路) - Randy Meister (8) ★★
 オリジナルはニール・ヤング(1972)
10.If You Don't Know Me By Now(二人の絆) - Dan Seals (-)
 オリジナルはハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ(1972)

★★印は何かというと、『DUETS: FRIENDS & MEMORIES』のiTunes限定デラックス・エディションのボーナス・トラック。

第2集のブックレット内側には、詳細なクレジットが掲載されていて、録音年月日もここで判明したというわけだ。
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ところが、2010年版のブックレットでは、クレジットから録音年月日についてのデータが消されていることがわかる。新作としてリリースするには、15年も前の録音であることがはっきりわかってはあまりよろしくないという判断が働いたのだろうか。1995年版(と後述の1998年版)ではエグゼクティヴ・プロデューサーとしてジョセフ・デファルコなる人物がクレジットされているが、彼の名前と関連する記述も消されている。
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さて、1995年の『PLATINUM & GOLD - ALL TOP HITS!』リリースに際しては、さまざまなアーティストが参加したせいか、法的な問題が複雑に絡んでいたようで、ジュース・ニュートン本人の許可がないまま、テレビ通販の商品という形で少量が出回ったようである。CD RECORDS VENTURE PARTNERS ONE, L.L.C.という会社名も怪しげだし。

さらに話をややこしくしたのが、1998年に、今度はTV RECORDS ONE, L.L.C.という明らかに同系列の会社からでた、やはり『PLATINUM & GOLD - ALL TOP HITS!』という通販のシリーズ(ほとんど海賊盤?)で、今度は全8タイトルのうち第7集と第8集に、ジュース・ニュートンのデュオ集があてがわれることになった。

全8枚の内容については、チェコのこんな通販サイトで確認することが出来る。
All Top Hits! Volume 1 & 2: The Greatest Dance Hits
All Top Hits! Volume 3 & 4: All Time Feel Good Hits
All Top Hits! Volume 5 & 6: The Best of Love & Romance
All Top Hits! Volume 7 & 8: All New Dream Sessions
第1集から第6集まではテーマ別の単なるオムニバス・アルバムである。

ネットから拾った第7集の画像はこんな感じ。
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先ほど紹介した1995年版『PLATINUM & GOLD - ALL TOP HITS!』の曲目に付けた(7)は1998年版の第7集収録、(8)は第8集収録、(-)はどちらにも未収録、という意味だった。何曲かが削られ、ジュースのソロ曲が1~2曲ずつ加えられている。

同じタイトル、そっくりのデザインで第1集、第2集と銘打たれていても、1995年版と1998年版とでは内容がまったく異なるので、eBayなどで購入する場合は注意が必要だ(売り手側も混乱しているので)。

2010年版『DUETS: FRIENDS & MEMORIES』は、待望の本人公認のオフィシャル・リリースという位置付けになるわけだが、せっかくなので残りの曲も何らかの形で出して欲しいものだ。あとは、単純なミスだろうが、本来記載すべき作者名、出版社名が抜けているのは減点(1995年版では、スペルミスや漏れはあったが一応クレジットされていた)。

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April 24, 2013

ピアソラ 『ライヴ・イン・ウィーン』『AA印の悲しみ』本日再発売!

表題の通り、アストル・ピアソラの円熟期、1980年代の最重要ライヴ盤2作が、本日再発の運びとなった。

『ライヴ・イン・ウィーン』 (Victor VICC 75011) 1983年10月録音
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『AA印の悲しみ』 (Victor VICC-75012) 1986年11月録音
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選曲、演奏、録音と3拍子が揃ったこの2枚、いずれもドイツのMessidor原盤で、日本でも1990年代後半のピアソラ・ブームの折に学研のプラッツ・レーベルから発売され好評を博したわけだが、Messidorの倒産により原盤権の行方が判らなくなってしまい、長い間廃盤状態にあったものだ。

現在、この2作の権利はTermidor Musikverlag & Timba Recordsという会社が保有し、そこからビクター・エンターテインメントに話があったようで、私が担当者から連絡を受けた2月5日には、K2HD+HQCDフォーマットで4月に発売されることは、すでに決定していた。

『ライヴ・イン・ウィーン』の方は、1990年代の海外での再発盤である『The Vienna Concert(ウィーン・コンサート)』のタイトルとジャケットで出す予定だったので、日本のファンにも馴染み深い『Live in Wien』のタイトルとジャケットでオリジナルに忠実な形でリリースすることを私が提案し、了承された。

プラッツからのリリースの際には、デジパック仕様で、若干のデザインの変更が行われたが、プラケース仕様の今回は、上記写真のように、Messidorの(CDではなく)LPのアートワークをベースにデザインをしてもらった。

ライナー・ノーツは当然2枚とも新たに書き下ろしたが(2タイトル共通の部分もあり)、原盤についていたドイツ語ライナーも、翻訳してもらい、私が注釈を加える形で掲載した。原文は掲載しない予定だったが、最終的には、原盤CDのブックレットではなくLPのインナー・スリーブ(中袋)のものをCDサイズに縮小したものを投げ込む形にした(読みにくいが、雰囲気は味わっていただけると思う)。

続いて、紹介が遅くなってしまったが、去年から最近にかけての、これ以外のピアソラ関連作品の再発にも触れておこう。

雑誌『ラティーナ』3月号および4月号の輸入盤ディスコ・ガイドのコーナーでも紹介させてもらったが、昨年の10月から12月頃にかけて、アルゼンチンのUniversalが1960年代のフィリップスおよびポリドールへの全録音をCD3セットにまとめた。

"Completo en Philips y Polydor Volumen I 1964-1965" (Universal 3717078)
CD I: Astor Piazzolla 1944-1964/20 años de vanguardia con sus conjuntos (1964)
CD II: El tango (1965)
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2枚組のうち1枚目は、1964年に過去20年間の軌跡を回顧した企画アルバム『モダン・タンゴの20年』。日本では新星堂のオーマガトキ・レーベルからCD化されていたが、アルゼンチンではアルバム単位ではこれが初復刻となった。ただし「Orgullo criollo(クリオージョの誇り)」以外はモノラルだった(ラティーナ3月号ではステレオと書いてしまったので、改めてお詫びの上訂正しておきます)。

2枚目はホルヘ・ルイス・ボルヘスの詩と散文に音楽を付け、エドムンド・リベーロが歌った名盤『エル・タンゴ』で、過去のCDはすべてモノラルだったが、今回は世界初のステレオ・ヴァージョンによるCD化となった。

"Completo en Philips y Polydor Volumen II 1965-1967" (Universal 3721264)
Concierto de Tango en el Philharmonic Hall de New York (1965) + Melenita de Oro (EP, 1965) + Revolucionario y Retrato de Alfredo Gobbi (Single, 1967)
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第2集は1枚もので、1965年の金字塔『ニューヨークのアストル・ピアソラ』に、「Verano porteño(ブエノスアイレスの夏)」初演を含む舞台音楽『金の垂れ髪』(全4曲)、「革命家」と「アルフレド・ゴビの肖像」のシングル(1967年)を加えたもの。『ニューヨークのアストル・ピアソラ』はオリジナルとはステレオの低位が左右逆で、ピアノが左、ヴァイオリンが右となっている。いずれにせよこの盤はピアソラ・ファン必聴。

"Completo en Philips y Polydor Volumen III 1967-1969" (Universal 3725344)
CD I: La historia del tango Vol. 1/La guardia vieja (1967)
CD II: La histori a del tango Vol. 2/Epoca romantica (1967) + Vol.3/Epoca moderna(正しくはLos cuarenta) (1967) + Astor Piazzolla - Egle Martin (1967録音、1969発売)
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スランプ期に大編成オーケストラで録音された『タンゴの歴史』の第1集を1枚目に、第2集と、4曲録音したところで頓挫してしまった第3集(後にオムニバス盤で日の目を見た)、ブエノスアイレスのマリアになり損ねたエグレ・マルティンとの2曲(エグレとのいきさつについいてはナタリオ・ゴリン著・拙訳『ピアソラ 自身を語る』を参照されたし)などを2枚目に収録した2枚組。

今回の全曲集の第2集、第3集に収録された一連のオリジナル・アルバム未収録曲は、私が2000年に編集した『ブエノスアイレスの夏~ピアソラ・レア・トラックス』にまとめたものと同じだが、そちらも廃盤であり、今回のリリースは歓迎されるべきものだ。

で、日本のユニバーサルにも国内盤としてのリリースを打診してみたが、まともな返事はこないまま。過去にも、他のレコード会社がいろいろと動いてくれた中で、かつてのポリドール~ポリグラム、今のユニバーサルは、本当にやる気がないというか動いてくれない。困ったものだ。

国内盤のリリースが続いているのがワーナー・ミュージック・ジャパン。
ライヴ録音や映画のサントラを中心にピアソラの音源を持っているフランスのMilanは、過去にはBMGジャパン(当時)やビクター・エンターテインメントから国内盤が出ていたが、今年からワーナーに権利が移った。

ちょうどいいタイミングで、新しい2枚組ベスト"Collector"が海外リリースされたということで、2月20日に日本盤も登場した。

『ピアソラ・ベスト・コレクション』
(Milan WPCR-14826/7)
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こちらもライナーを書かせてもらったが、あいかわらずMilanはいい加減で、海外盤では曲名も間違っていたりしていた。
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過去の間違いがそのままで、セステートの「現実との3分間」が「カモーラII」になっていたり、協奏曲の楽章名も表記されなかったりだったので、国内盤では以下のように訂正した。
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ワーナーでは、現代クラシックのNonesuch(ノンサッチ)が今年設立50周年ということで一挙に代表作30作が1月23日に再発されたが、ピアソラ参加アルバムも次の2点が含まれていた。

『バンドネオン・コンチェルト』 (Nonesuch WPCS-16001)
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ラロ・シフリン指揮セント・ルークス・オーケストラとの共演で、自身が弾くコンチェルトの定番。今回の再発シリーズのライナーは原則過去のものの再録だが、本盤に関しては1996年の国内盤発売時に書いたライナーの内容が古かったので、今回新たに書き直し、原盤ライナー訳も付けてもらった。

『ファイヴ・タンゴ・センセーションズ』 (Nonesuch WPCS-16002)
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クロノス・クァルテットと共演したミニ・アルバムで、ピアソラの生涯最後のスタジオ録音。この盤はもともと原盤ライナーの訳のみで、私は書いていない。ピアソラが提供した「タンゴのための4人」を含む、クロノス・クァルテットの『冬は厳しく~弦楽四重奏曲の諸相II』(WPCS-16008)も、今回の再発ラインナップに含まれている。


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April 20, 2013

フランキー・ヴァリとザ・フォー・シーズンズ(33)

ザ・フォー・シーズンズのオリジナル・セカンド・アルバム『BIG GIRLS DON'T CRY』、A面の曲目紹介を続ける。

4. Tonite, Tonite (William Nobles)

フランキー・ライモン&ザ・ティーネイジャーズの影響を受けて1956年に結成されたドゥーワップ・グループのザ・メロートーンズは、1957年4月にヘラルドからこの曲でデビューした。ところがまったく同じ名前のグループが近くに存在していたことに気付き(同じ月にジーから「Rosie Lee」をリリース)、急ぎザ・メローキングズと改名、レコードもプレスし直した。メローキングズの「Tonite, Tonite」はビルボード・ホット100の第77位までしか上がらなかったが、ドゥーワップ・クラシックの仲間入りを果たし、ディオンも「Tonight, Tonight」のタイトルで、1962年のアルバム『LOVERS WHO WANDER』でカヴァー(未聴だが)。フォー・シーズンズ版も、原曲のドゥーワップ感覚をそのまま生かした仕上がり。

曲を書いたのはヘラルド/エンバーのスタッフ・ソングライターだったWilliam Myles Noblesで、ここではウィリアム・ノーブルズと表記されているが、ビリー・マイルズの名が一般的。その名前で、シンガーとしても1957年に自作の「The Joker (That's What They Call Me)」をヒットさせているが、マイルズの最も有名な作品はフレディ・キングが1960年に録音した「Have You Ever Loved A Woman(愛の経験)」だろう。デレク&ザ・ドミノズの『LAYLA AND OTHER ASSORTED LOVE SONGS』に収録されているのをはじめ、エリック・クラプトンの定番レパートリーとして知られている。

5. Lucky Ladybug (Frank Slay, Jr. - Bob Crewe)

やはりフランク・スレイとボブ・クルーが書いたファースト・アルバム収録の「La Dee Dah」は男女デュオ、ビリー&リリーのデビュー曲のカヴァーだったが、この曲はビリー&リリーの3枚目のシングル(1959年)で、ビルボード・ホット100で14位まで上昇した。チャチャチャっぽいリズムのノヴェルティー感覚にあふれた楽しい曲で、オリジナルはブラスやハンドクラップを効果的に使ったコミカルな仕上がりだったが、フォー・シーズンズ版はシンプルというかコンパクトにまとめている。シングル「Walk Like A Man」のカップリング曲でもある。

6. Alone (Selma Craft - Morty Craft)

ここでは表記されていないが、正しくは「Alone (Why Must I Be Alone)」とサブタイトルが付く。オハイオ州ミドルタウン出身の4姉妹によるコーラス・グループ、ザ・シェパード・シスターズ(別名:ザ・シェップズ)唯一の大ヒット曲で、1957年11月にビルボード・ホット100の18位まで上昇。イギリスでは世界的に有名になる前のペトゥラ・クラークが同年にカヴァーし、全英チャート8位を記録した。シェパード姉妹の所属レーベル、ランスのオーナーでありプロデューサーだったモーティー・クラフトが曲を書き、妻のセルマが詞を付けた。

シェパーズ姉妹のヴァージョンは、ハモリもあるがユニゾン主体で元気よく歌われるという、アイドル・グループ的パターン。ペトゥラ・クラーク版にも♪ララララーラララ、と女性コーラスが絡む箇所があるが、フォー・シーズンズ版は♪ランラララランランランララという高速コーラスとフランキー・ヴァリとの絡みが決め手で、作品としての完成度は遥かに高く、この曲の決定版と言えるだろう。

フォー・シーズンズの「Alone」は、フィリップス移籍後の1964年5月になってから「Long Lonely Night」とのカップリングでシングル・カットされ(VJ 597)、ビルボード・ホット100で28位まで上昇した。

この曲は後年トレイシー・ウルマンもカヴァーしていた。1984年のシングル「Sunglasses」の12インチ・ヴァージョンにカップリングされているが、フォー・シーズンズ版を下敷きにしたカッコいい出来栄えになっている。この曲のカヴァーでは、山下達郎の『オン・ザ・ストリート・コーナー 1』(1980年)に収められたア・カペラ・ヴァージョンも忘れてはならないだろう。フォー・シーズンズ版がベースになっているのは、言うまでもなく。

続いてB面の曲目紹介に移る。

1. One Song (Larry Morey - Frank Churchill)

ウォルト・ディズニー初の長編アニメ映画として1937年に公開された『白雪姫(Snow White and the Seven Dwarfs)』の挿入歌で、フランク・チャーチル作詞、ラリー・モーリー作詞。白雪姫(アドリアナ・カロセッティ)が歌う「I'm Wishing(私の願い)」に続いて、現れたプリンス(ハリー・ストックウェル)が白雪姫に歌いかけるのがこの歌。デイヴ・ブルーベック・クォーテットの1957年のアルバム『DAVE DIGS DISNEY』では、やはり『白雪姫』の挿入歌である「Heigh-Ho」や「Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)」と共に取り上げられていたが、その2曲に比べると、ポップス系アーティストも含めてカヴァーされる頻度はきわめて低いようで、フォー・シーズンズとしても珍しいカヴァーに含まれるだろう。ジャングル・ビート、とまでは言わないがパーカッシヴなアレンジにファルセットとコーラスが絡む、というフォー・シーズンズらしい仕上がり。

2. Sincerely (Harvey Fuqua - Allen Freed)

オハイオ州クリーヴランドでディスク・ジョッキー、アラン・フリードのバックアップを得て活動を開始、1952年にレコード・デビューした黒人ヴォーカル・グループ、ザ・ムーングロウズが1954年にチェス・レコード移籍第1弾としてリリースした名曲。リード・シンガーでメイン・ソングライターのハーヴェイ・フックァとフリードの合作で(フリードは名前だけだろうが)、ビルボード・ホット100の第20位まで上昇したが、より売れたのは白人女性ヴォーカル・グループ、ザ・マクガイア・シスターズのカヴァー・ヴァージョンで、1955年2月から3月にかけて第1位となった。

1961年8月にはザ・トーケンズがアップ・テンポにしてカヴァーしている(出来はよかったがチャートは120位が最高、ちなみに次のシングルが1位になった「The Lion Sleeps Tonight(ライオンは寝ている)」)。一方フォー・シーズンズの方はテンポはゆったりめで、ムーングロウズの温かみのある雰囲気を残しながらアップ・トゥ・デートな感覚で仕上げている。1964年8月に「One Song」とのカップリングでシングル・カットされたが(VJ 608)、最高位は75位だった。

(この項続く)

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April 18, 2013

フランキー・ヴァリとザ・フォー・シーズンズ(32)

去年の暮れ以来、いろいろあって4か月近くも間が空いてしまったが、ザ・フォー・シーズンズのオリジナル・セカンド・アルバム『BIG GIRLS DON'T CRY』の紹介を続ける。

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前回掲載したクレジットを見てもわかるように、このアルバムでついに全曲のオーケストラ・アレンジと指揮がチャールズ・カレロとなった。……と言いたいところだが、タイトル曲はファースト・アルバム『SHERRY & 11 OTHERS』およびセカンド・シングルからの再録であり、いずれにもカレロの名はなかった(アルバムにはアレンジャーとしてボブ・クルー、ボブ・ゴーディオ、シド・バースの3名を列記)。第23回では「Big Girls Don't Cry」について、シングル盤のレーベル写真を添えて、

ウィキペディアのシド・バースの項では「Big Girls Don't Cry」のアレンジも彼だとしているが、ご覧の通りクレジットはない。真相は如何に?
と書いたが、結局誰が担当したのかは不明のまま、ということになる。いずれにせよ、本盤の残りの12曲はすべてカレロのアレンジと考えて間違いないだろう。

それではA面の曲目を紹介していこう。

1. Walk Like A Man (Bob Crewe - Bob Gaudio)
ボブ・クルーとボブ・ゴーディオの合作。邦題は「恋のハリキリ・ボーイ」。フランキー・ヴァリのファルセットとメンバーのコーラスとの絡みも絶妙で、「Sherry」「Big Girls Don't Cry」以来の黄金のパターンここに極まれりといった感じだ。1963年1月に先行シングル(VJ 485)としてリリースされ、3月2日付から3週連続でビルボード・ホット100の第1位をキープした。

ステア=フィリップス・レコーディング・スタジオでこの曲をレコーディング中、同じビルの上の階にあるアビー・ヴィクトリア・ホテルで火災が発生した。煙や水がスタジオに染み出してきてからも、ボブ・クルーとメンバーたちは完璧なテイクを求めるのをやめようとせず、クルーはスタジオのドアをロック。斧でドアをこじ開けた消防士たちにつまみ出されるまでレコーディングを続けたという。

2. Silhouettes (Frank Slay - Bob Crewe)
ファースト・アルバム収録の「La Dee Dah」と同様、フランク・スレイとボブ・クルーが合作した曲。二人の関わりについては第24回の同曲の解説でも紹介したが、そこでも触れたこのコンビの最初のヒット曲がこの「Silhouettes」だ。

1957年5月、走る電車の窓から外を眺めていたクルーは、ブラインド越しに抱き合っているカップルの姿を見つけ、瞬時に曲のイメージを組み立てたという。歌詞を書いたスレイはこの曲が完成したところで、自分が働いていたカメオ=パークウェイにオーディションに来た黒人ドゥーワップ・グループ、ザ・レイズがこの曲を歌うのにふさわしいことに気付いた。クルーとスレイの独立レーベルであるXYZからリリースされ、カメオが配給を受け持ったレイズのシングルは、ビルボード・トップ100の第3位まで上昇、グループにとって唯一の大ヒット曲となった。カヴァー・ヴァージョンも数多く、1965年にはハーマンズ・ハーミッツもヒットさせている(全米、全英ともに第5位)。

フォー・シーズンズのヴァージョンは、クルーがプロデュースしているせいか、レイズのヴァージョンに比較的忠実な仕上がりだ。

3. Why Do Fools Fall In Love (Frank Lymon - George Goldner)

フランキー・ライモン&ザ・ティーネイジャーズ(13歳のライモンほか全員が実際に10代だった)、ライモンの自作による1956年2月のデビュー・ヒットで、R&Bチャート第1位、ビルボード・ポップ・チャート第6位、UKシングル・チャート第1位をそれぞれ記録。邦題は「恋はくせもの」。この曲のヒットで彼らは一躍50年代後半のニューヨークを代表するR&Bグループにのし上がる。共作者として発売元ジー・レコードの社主ジョージ・ゴールドナー(第27回参照)がクレジットされているが、権利をモーリス・レヴィーに売り渡してからは、共作者のクレジットもレヴィーとなった。ちなみにメンバーのハーマン・サンティアゴもソングライティングに関わったとのことだが、初期シングルや一部の例外を除いてクレジットから外され、法廷闘争に進展した。

この曲を録音当時のフォー・シーズンズのメンバーは、公称ではフランキー・ヴァリが25歳、トム・デヴィートが26歳、ニック・マッシが27歳、ボブ・ゴーディオが20歳だったが、なんとヴァリは3歳、デヴィートとマッシは8歳(!)も鯖を読んでいたので、実際にはヴァリは28歳、デヴィートは34歳、マッシは35歳だった。だからゴーディオ以外はティーネイジャーにはすでに程遠かったわけだが、ライモンたちを意識してか、実に若々しく快活なヴォーカルとコーラスを聴かせてくれている。

この曲のカヴァーでは、ザ・ビーチ・ボーイズのものもお馴染みだろう。1964年2月のシングル「Fun, Fun, Fun」のB面(オリジナル・シングル Capitol 5118 には作者クレジットが"Lymon-Goldner"のものと"Lymon-Santiago-Goldner"のものとがある!)および同年3月のアルバム『SHUT DOWN VOLUME 2』に収められている。以前レポートしたように、去年の彼らの千葉公演でもこの曲は演奏されたが、アル・ジャーディンを中心としたコーラス・ワークが感動的だった。

(この項続く)

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