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May 25, 2012

フランキー・ヴァリとザ・フォー・シーズンズ(14)

第5回でオリジナル・アルバムのCD復刻状況を説明した中で、モーウェスト~モータウン時代の音源に関して、次のように書いた([ ]の番号は例によって第3回のリスト参照)。

Hip-O Select/Motown 2008年5月
[17]+[19](+9) "THE MOTOWN YEARS" (B0010777-02)
モータウンなどの音源の復刻を精力的に行っているヒッポ・セレクトによる、モーウェスト~モータウン時代の録音の集大成。『ジャージー・ボーイズ』以後の復刻で最も価値のあるものが、ヴァリとゴーディオの管理の及ばないところで行われたというのは何とも皮肉。

当時発売されたものを復刻した、という意味では確かに1曲の漏れもなく、未発表ヴァージョンも1曲あり、「最も価値のあるもの」という言い方は誇張ではないのだが、当時の状況を詳しく探っていくと、実は大きな問題が隠されていたことに気付く。1971年11月頃から1974年5月頃までにザ・フォー・シーズンズおよびフランキー・ヴァリが録音したマテリアルは膨大な数におよび、少なくとも45曲が未発表のままユニヴァーサル・モータウンの保管庫に眠っているというのだ。

何故そのようなことになってしまったのか。例によってUK鑑賞団体のテキストなどを参照しながら、当時の状況を見ていこうと思う。

1971年、ザ・フォー・シーズンズは、フィリップスとの契約が終了し、オリジナル・メンバーのギタリスト、トミー・デヴィートが脱退、そしてボブ・ゴーディオが作曲やプロデュースなどに専念するためにツアーからの離脱を決めた(同年秋のUKツアーが最後の参加となった)ことにより、バンドの建て直しを迫られていた。

1971年というのは、モータウンがデトロイトからロサンゼルス(ハリウッド)に本社機能を移した年とされている。最終的に移転が完了したのは1972年6月らしいが、モータウンは実際には1963年からLAにもオフィスを構え、レコーディングもその一部はハリウッドで行なわれていたことが明らかになっている(そのあたりの複雑な事情については、鶴岡雄二氏によるこちらの分析が興味深い)。

この年、モータウン社長のベリー・ゴーディー・ジュニアは、ハリウッドを拠点にした新たなレーベル、モーウェストを設立した。当初のプランでは、デトロイトから西海岸への移転が完了した時点でモータウンはモーウェストに取って代わられるはずだったようだが、すぐにモーウェストは白人アーティスト用の新レーベルという位置づけへ変更された。

ヴィー・ジェイの元社長でフランキー・ヴァリの友人でもあったイワト・アブナーは、当時モータウンの管理職となっていたが(1973年から75年まで社長も務める)、ヴァリから移籍先を探していることを聞くと、すぐさまゴーディーに電話を掛けた。フォー・シーズンズ・ファンだったゴーディーはこの話に乗り、フォー・シーズンズはモータウンと1971年10月に契約を結んだ。

フォー・シーズンズは白人ということで、設立されたばかりのモーウェストの所属アーティストとなる。そして11月から12月にかけて早速、ハリウッドのスタジオで15曲におよぶ一連の録音が行なわれたとのことだが、そこにはグループとしての録音とヴァリのソロ名義のもの、その双方のマテリアルが混在していた。

ヴァリのソロの曲は、ゴーディーがモーウェストに招いたプロデューサーたちが各自プロデュースするモータウン・クラシックスで構成されていた。

招かれたプロデューサーの一人目は、ニューヨークのセプター・レーベルでディオンヌ・ワーウィックらに作品を提供したりしたのちにモータウンのスタッフ・ライターとなり、スモーキー・ロビンスン&ザ・ミラクルズ「I Second That Emotion」やマーヴィン・ゲイ「What's Going On」などを共作したアル・クリーヴランド。ヴァリは彼のプロデュースで、スモーキー・ロビンソンの作でミラクルズのほかメリー・ウェルズやテンプテーションズも録音した「What Love Has Joined Together」や、マーヴァン・ゲイ(クリーヴランドも共作者の一人)の「Save The Children」を録音した。

次はジャクソン5などを手掛けたジェリー・マーセリーノとメル・ラーソンのプロデューサー・コンビ。作品自体が未発表と思われる「My Heart Cries Out To You」は、もしリリースされていればヒットの可能性が高かったらしい。もう1曲は1960年代のモータウン黄金時代を支えたソングライター・チーム、ホーランド=ドジャー=ホーランドが書いたフォー・トップスの「Baby I Need Your Loving」。

そしてジャクソン5「I'll Be There」の共作者の一人であるハル・デイヴィスは、ブレンダ・ハロウェイが1967年にヒットさせた「Just Look What You Have Done」をプロデュースした。

だが、これらは当時はリリースされず、「Baby I Need Your Loving」と「Just Look What You Have Done」だけが、彼らがモータウンを離れた後の1975年10月になって[19]に収録され、なんとか日の目を見た。他の録音は現在に至るまで未発表のままである。

モーウェストにおける彼らの初リリースとなったのは、1972年2月のヴァリのソロ・シングル「Love Isn't Here (Like It Used To Be)」「Poor Fool」(MoWest 5011F)で、プロデュースは結局、1971年にソングライター/プロデューサーとしてもモータウンと契約を結んだボブ・ゴーディオが担当した。A面はゴーディオと当時の妻ブリットとの合作。B面はゴーディオの代わりに短期間グループ入りしたキーボード奏者、アル・ルツィッカ(スペルはRuzickaだが、読み方が正しいかどうかは判らない)の作。
(6/6追記:ルツィッカは正式メンバーではなく、1971年から72年にかけて参加したサポート・メンバーだったので訂正。詳しくは第15回参照)

そして5月にはアルバム[17]"CHAMELEON"が登場する。プロデュースはゴーディオ、アレンジはデイヴ・ブルンバーグ(Dave Blumberg)、チャーリー・カレロ、ジョー・スコット(Joe Scott)が担当した。先行シングル2曲のうちルツィッカが単独で書いた「Poor Fool」以外の全曲がゴーディオの単独作、もしくはルツィッカまたは妻ブリットとの合作。これらはこのアルバム用に用意されたものだが、A面の最初と最後に置かれた「A New Beginning」はボブ・クルーとの合作で、事情は判らないが(どこかに書いてあるのだろうがまだ見つけられていない)1年半前に喧嘩別れする前に書かれたものだった。

だが、せっかくシングルもアルバムもリリースされたというのに、モーウェストはまともにセールス・プロモーションができない状態だった。ラジオ局に強いコネを持つ人物もいなかったし、従来のモータウン・サウンドとは違った新しいイメージを打ち出す術を知らなかったのだ。

そればかりか、モーウェストは大きな判断ミスを犯す。アルバムの中で最もヒット・ポテンシャルの高かった「The Night」(ゴーディオとルツィッカの合作)のシングル・カットを予定しながら、白レーベルのプロモーション盤をプレスしたのみで、発売を見送ってしまったのである。

(続く)

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May 15, 2012

フランキー・ヴァリとザ・フォー・シーズンズ(13)

第9回で触れた武蔵小山のLive Cafe Againでのイヴェント「Good Old Boys~ザ・フォー・シーズンズ・ナイト」に行ってきた。どんな感じだったかは、主催者のひとり高瀬康一さんもブログで報告されているが、オリジナル・シングル(もちろんモノラル)を大音量で聴けたのが嬉しかった。さすがにCDとの差は歴然で、いろいろな聞き比べも楽しめた。

で、それを象徴するような出来事があった。しまMOONさんが「Rag Doll」をエース盤CDで掛けた時のことだ。お客さんのひとりが、「何だ、このエコーは?」と言った感じでブースに近づいたのだ…。

第11回で触れた、1965年11月のフィリップスからの初ベスト"THE 4 SEASONS' GOLD VAULT OF HITS"のステレオ盤LPが先日届き、「Let's Hang On!」「Rag Doll」「Silence Is Golden」「Dawn (Go Away)」「Girl Come Running」(収録順)がモノラルで、そして何故か「Ronnie」のみ擬似ステレオで収録されていることを確認した。擬似ステレオの「Ronnie」は、1968年のED-LP("EDIZIONE D'ORO (GOLD EDITION)"の2枚組LP)収録のものと同一のようである。

そして、ED-LPでステレオ化された「Rag Doll」も「Silence Is Golden」も、よく聴くとヴォーカルおよびコーラスのエコーがモノラル・ヴァージョンより若干深くなっていることに気付いた。もともとステレオ・ヴァージョンの存在した「Big Man In Town」「Save It For Me」ほど派手なエコーではないために、判りにくかったのだ。ちなみに「Silence Is Golden」はステレオ化に際し、フェイドアウトのタイミングも長くなっている。

Againでの大音量での再生は、このあたりもはっきりと示してくれたというわけだ。そう、エース盤のオリジナル・アルバム2 in 1のCDに収録されている「Rag Doll」「Silence Is Golden」は、オリジナル・ヴァージョンではなく、ED-LPが初出のリミックス・ヴァージョンだったのだ(オリジナルのモノラル・ヴァージョンの方はED-CDに収録されているということになるが、混乱を防ぐためには逆にすべきだった)。確か宮治淳一さんのお隣に座られていた件のお客さんは、「Rag Doll」をシングル・ヴァージョンで聴き込んでいらしたのだろう。突っ込まれたしまMOONさんは「オレがミックスしたわけじゃないから」とか言って笑いを誘っていたが。

先にモノラル盤で集めた[01]~[13]だが([ ]の番号は例によって第3回のリスト参照。[12]はステレオ盤を先に入手)、状態が悪くなくて値段が手頃なもの、という条件でステレオ盤も少しずつ集めている。[02]とベストを除いてステレオ盤をなかなか見かけないヴィー・ジェイ時代のオリジナルのうち[03]のステレオ盤を入手したところ、ステレオ・ヴァージョンの存在しない曲は、擬似ステレオではなく、モノラルのまま収録されていた。先の"GOLD VAULT OF HITS"もそうだが、ステレオと銘打ちながらクレジットも一切ないままモノラルで収録とはどういうこと?と怒るわけはもちろんなく、自然なモノラルのまま収録してくれたことを今は感謝したい。

次回からは、会場でも「判らない部分が多い」とされていたモーウェスト~モータウン時代の謎に迫る予定。

(続く)

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May 08, 2012

フランキー・ヴァリとザ・フォー・シーズンズ(12)

UK鑑賞団体最新ブログでアナウンスされたように、セッショングラフィーSection 4 - The Philips Era 1964 to Pre-Motown 1971 (Version 5)が公開された。私にとって不明の部分もいくつか明らかにされたが、まだまだ謎は残されている(明らかな誤りも散見される)。

まず、第10回でまとめた、1965年までのおおまかなセッションごとのエンジニアとスタジオの一覧を訂正しなければならない。[ ]の番号は例によって第3回のリスト参照。

> ●1964年2月 (E):? (S):?
> 「Dawn (Go Away)」以外の[06]全曲

これは1月のセッションと同じく(E):GC (S):SP(エンジニア:ゴードン・クラーク、スタジオ:ステア=フィリップス)が正解だったようだ。よって、

> データが記載されていない1964年2月の[06]用セッションはオルムステッドで行なわれた可能性もある。

という推測は外れた。

> ●1964年4月 (E):LS (S):AS
> 「Rag Doll」

これもステア=フィリップスとなっているが、となると、「Rag Doll」をツアー出発前日の日曜日に急遽録音することになったが「普段使っているどのスタジオにも入ることができなかった」ので、使えるスタジオを探してブロードウェイのアレグロ・サウンドという4トラック録音のデモ・スタジオを見つけた、という第8回第10回で参照したボブ・ゴーディオの述懐はどうなってしまうのだろうか。

> ●1964年2月~8月 (E):GCまたはTD (S):SPまたはAR
> 「Rag Doll」以外の[07]全曲

これはセッションごとに振り分けると、2月は「Ronnie」のみで(3月23日にシングル発売)ステア=フィリップス。「Save It For Me」はエース盤[06]+[07] (CDCHD 554)掲載のディスコグラフィーには8月3日録音と書かれていたが、シングルは確かに8月8日(!)発売でも肝心のアルバム[07]は7月発売なので、この日付は誤り。セッショングラフィーでは7月?とされ、スタジオもオルムステッドかステア=フィリップスかが特定できていない。残りの全曲は6月録音。セッショングラフィーではスタジオがステア=フィリップス、エンジニアがゴードン・クラークとトム・ダウドとなっているが、ジャケットにはアトランティック・スタジオの名前も書かれてあるわけだし、ダウドがステア=フィリップスまで出向くとは考えにくい。

> ●1965年7月 (E):TD? (S):AR
> 「The Sun Ain't Gonna Shine (Anymore)」「This Is Goodbye」(Frankie Valli)

これは私のケアレス・ミスで、7月ではなく6月だった。エンジニア名は記載なし、スタジオはアトランティック・スタジオ「かも知れない」と。

> そして、1966年1~2月頃録音のフランキー・ヴァリの「You're Ready Now」「Cry For Me」、3月録音のフォー・シーズンズの「Opus 17 (Don't Worry 'Bout Me)」(この3曲のエンジニアとスタジオについては、私はまだ把握できていない。チャーマー氏は「Opus 17」を8トラック録音と推測しているようだが)を経て

これは3曲とも1966年3月のステア=フィリップス・スタジオでのほぼ同一セッションでの録音だったようだ(ヴァリのシングル2曲は3月発売なのだが…)。そして7月のミラサウンド・スタジオでの「I've Got You Under My Skin」の録音までの間に、ザ・ワンダー・フー?名義の2枚目のシングルとして5月に発売された「On The Good Ship Lollipop」「You're Nobody Till Somebody Loves You」(Philips 40380)の録音が挟まるのだが、これは録音日、場所ともに不明のようだ(4月頃ではないかと思われるが)。

7月の「I've Got You Under My Skin」録音以降、ミラサウンド・スタジオでの(恐らく8トラックでの)録音にストレートに移行したわけではなかったようで、9月のヴァリの「The Proud One」「Ivy」(10月にシングル発売、後に[13]に収録)はステア=フィリップスで録音されている。

そして、セッショングラフィーでは、10月の「Tell It To The Rain」以降1970年8月のフィリップスにおける最終録音「Lay Me Down (Wake Me Up)」「Heartaches And Raindrops」までの全録音を録音場所「?」としている。少なくとも1968年秋ころまでは大半がミラサウンド・スタジオでの録音ではないかと思われるのだが。

1968年11~12月録音の[15]は、4月録音でクルーがプロデュースのシングル曲「Saturday's Father」を除き、初めてボブ・ゴーディオが単独プロデュースしたアルバムだが、エンジニアがロイ・シカラ(ニューヨークのレコード・プラント・スタジオのエンジニアを20年ほど務め、ジョン・レノンの1970年代のアルバムも数多く手掛けた)なので、レコード・プラントでの録音の可能性もありそうだ。

(続く)

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May 01, 2012

フランキー・ヴァリとザ・フォー・シーズンズ(11)

(5/1 11:35追記:できるだけ判りやすく書いているつもりだが、内容が煩雑なだけに、何度読み返しても納得がいかず、細かい修正を繰り返しているので、そのあたりご了承を)

第7回で1968年の2枚組ベスト"EDIZIONE D'ORO (GOLD EDITION)"(以下ED-LPと表記)を紹介した際、それまでステレオ盤LPにも擬似ステレオもしくはモノラルでしか収録されていなかったシングル曲として「Ain't That A Shame」「Dawn (Go Away)」「Ronnie」「Girl Come Running」「Let's Hang On」の5曲を挙げたが、UK鑑賞団体のブログ、That 'Four Seasons' Soundこのエントリーによると、「Rag Doll」([07]収録。[ ]の番号は例によって第3回のリスト参照)「Silence Is Golden(沈黙は金)」([05]収録)もそうだったらしい(この7曲のうちヴィー・ジェイ録音の「Ain't That A Shame」を除く6曲が収められている1965年11月のフィリップスからの初ベスト"THE 4 SEASONS' GOLD VAULT OF HITS"のステレオ盤LPを現在取り寄せ中なので、届いたら改めて報告したい)。

ED-LPにオルタネイト・ミックス/テイク(「Ronnie」のみ擬似ステレオ)で収められた先の5曲は、オリジナル・アルバムを2 in 1でリイシューしたエース盤の一連のCD(第5回参照)にはそれぞれ元のモノラル・ミックスで収録されていたが(オリジナル・アルバム未収録で上記"GOLD VAULT OF HITS"が初収録の「Girl Come Running」「Let's Hang On」は[08]+[11](+3) (CDCHD 582)にボーナス・トラックとして収録)、後の2曲はED-LPでストレートなステレオ・ミックスが施されたためか、エース盤2 in 1にもそのまま採用されたので、気付かなかったのだ。なお、ED-LPで初めてステレオ・ミックスが登場した曲としては、アルバムへの収録自体が初だった「Watch The Flowers Grow」「Will You Love Me Tomorrow」(ED-LPでは「Will You Still Love Me Tomorrow」と表記)も該当することを付け足しておこう。

既にステレオ・ヴァージョンの存在していた曲のミックス違いとしては「Big Man In Town」のほかに「Save It For Me」もあった。「Big Man In Town」は元のステレオ・ヴァージョンでは楽器が左、コーラスが右、リード・ヴォーカルがセンターだったのが、ED-LPではコーラスがリード・ヴォーカルの後ろに配置されるような感じで中央に寄り、オケが左右にはっきりと分離。「Save It For Me」もコーラスが右からセンターへ移動。いずれもED-LPではリード・ヴォーカルとコーラスに深めのエコーが掛かり、オケから分離して聴きやすくなっている。

また、「Tell It To The Rain」は左チャンネルのオケのエコーがセンターにもかかり、やはりヴォーカルとコーラスのエコーもやや深めだ。また、1:17あたりからの ♪ Tell it baby...というコーラスとの掛け合いのあとの、フランキー・ヴァリの ♪ Yeah..., Yeah..., Yeah..., Yeah...の部分の歌い方が、シングルおよびアルバム[12]のモノラル盤と、[12]のステレオ盤とで異なるのだが、ED-LPのステレオ・ミックスは前者の歌い方になっていた。同じく[12]収録の「Beggin'」も、エコーの掛かりがED-LPの方が深い。

ボブ・クルーは(ボブ・ゴーディオもED-LPの編集に関わっていたという指摘もあるが、真偽のほどは定かではない)、マルチトラック・マスターがきちんと管理されていたならば、他の多くの曲にも様々な手を加えたかったのではないだろうか。

冒頭で紹介したED-LPに関するブログでは、エースからの再発CDのことにも触れられている。そう、エースからは、第5回で紹介した2 in 1を主体とする9タイトルの後にもう1種出ていたのだ。それが1997年9月発売の"EDIZIONE D'ORO" (Ace CDCHD 642)(以下ED-CDと表記)である(日本でも同年11月にPヴァインから輸入盤に帯解説付の『ザ・フォー・シーズンズfeat.フランキー・ヴァリ/26ゴールデン・ヒッツ』として発売)。

ED-CDはED-LPを単純にCD化したものではない。2枚組ではなくCD1枚に詰め込んだため、ED-LPの収録曲から3曲をカットした26曲入りとなっていたが、最も大きな違いは、ED-LPで初登場した別ヴァージョンのうちの5曲(全部ではない)を除く21曲を、モノラル・シングル・ヴァージョンで収録した点にあった。

「Let's Hang On」は、ED-LPではカットされていたスローなイントロ部分(=モノラル)と、ED-LPでのステレオ・ミックスとを編集で繋げたヴァージョンになっていて、これはライノ盤BOX"JERSEY BEAT"などにも使われている。

それまで未CD化だった貴重なモノラル・ヴァージョンを一挙に収録したのは、見方によっては快挙とも言え、歓迎する向きもあったが、この「改変」には別の理由もあった。従来のステレオ・ヴァージョンをもとに1968年にボブ・クルーが手を加えたED-LP用のオリジナル・マスターには、すでに失われてしまったものも多かったようなのだ。かといってモノラル・シングルのマスターが揃っているわけでもなく、実際にはステレオ・マスターをモノラルに変換したものも一部使用されているらしい。

収録時間の関係でED-CDからカットされた3曲は「Tell It To The Rain」「Watch The Flowers Grow」「Will You Still Love Me Tomorrow」で、エース盤の他のCDに収録されているから、と言い訳がされていたが、先に触れたようにED-LPの「Tell It To The Rain」はエース盤[09]+[12](+2) (CDCHD 620)収録のステレオ・ヴァージョンとはミックスが違う。あとの2曲([15](+4) (CDCHD 628)にボーナス・トラックとして収録)もステレオ・ヴァージョンであり、いちおうモノラルで統一するというED-CDの趣旨からは外れてしまう。逆にヴァージョンの違いを考慮せずに「他のCDに収録されている」ということであれば、ED-CD収録曲全曲が該当することになる。

「Big Man In Town」のオルタネイト・ミックスも、マスターが失われてしまったのかED-CDから漏れてしまい、モノラル・ヴァージョンと差し替えられてしまった。実は、「Big Man In Town」のこのミックスは、ED-CDに先駆けて1996年に日本のリアル・ミュージック・カンパニーがリリースしたオムニバスCD『US SOFT POP RARITIES』(Real Music RMD-1002)に、「Dawn」「Girl Come Running」「Let's Hang On」のED-LPヴァージョンと共に、LPからの板起こしで収められていたことがある(逆に「Save It For Me」などは未収録)。

ちなみにこのリアル・ミュージック盤には、前回ご紹介したザ・ワンダー・フー?の「Sassy」も収録されていた(ザ・ヴァリ・ボーイズの「Night Hawk」の方は全くの未CD化)。前回「正規にはCD化されていない」と紛らわしい書き方をしたのは、正規のライセンスを受けずにJASRACに使用料だけを払う形でリリースされたものだからである。

第5回でも触れた1975年の2枚組"THE FOUR SEASONS STORY" (Private Stock PS 7000)は、ED-LPから「Connie-O」「Girl Come Running」「Peanuts」をカットし、「Electric Stories」「And That Reminds Me」を加えたもので、私は持っていないので未確認だが、ED-LPと同一のヴァージョンが使われているようである。

ED-CDで試みられたモノラル・シングル・ヴァージョンを並べるやり方は、"JERSEY BEAT"に受け継がれた。CD-1の1曲目「Sherry」から23曲目「Girl Come Running」まではすべてモノラル。そして24曲目が「Let's Hang On」で、ED-CD同様編集でつなげられたモノラルのスロー・イントロから始まり、ステレオ版の本編へと突入していくのである。

(続く)

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