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June 29, 2009

エドゥアルド・ラゴス死去

本当に訃報ばかりでやりきれません。
モダン・フォルクローレのピアニスト兼作曲家であるばかりか評論家としても、また医師としても活躍したエドゥアルド・ラゴスが27日(別の記事では26日23時)に亡くなりました。享年80歳。アルゼンチンの日刊紙LA NACION電子版の記事では、5年以上苦しめられた"una enfermedad degenerativa"により死去とありますが、この言葉は辞書にはありません。日本語では「廃用症候群」となるのかな? 別の記事では2004年からパーキンソン病を患っていたとの記載があり、またアルツハイマー病という話も聞いたことがあります。いずれにしても悲しいことです。
ラゴスといえば、やはりピアソラが参加した『ASI NOS GUSTA~これが我々の好きなやり方』(LP時代の邦題は『フォルクロレッション』)の印象が強烈ですが(CD化された時にはライナーも書かせてもらいました)、87~88年に私がブエノスアイレスに滞在中、一度彼の家に呼ばれたことがあります。何かのパーティーだったのですが、どういうシチュエーションだったかは覚えていません。家に入ろうとしたら、ボンボを抱えたドミンゴ・クーラと鉢合わせしたこと、レコード棚や本棚にある貴重な資料を見せて貰ったことは覚えているのですが。
ご冥福をお祈りいたします。

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June 23, 2009

訃報:石川浩司さん

何で一月のうちに、2度も悲しい記事を書かなければならないんでしょう。黒田恭一さんに続いての訃報です。
タンゴ研究の大先輩でありながら、とても気さくで、パソコン通信のニフティサーブ時代から、私のような若い(とは、もう言えなくなってしまいましたが…)世代に対しても分け隔てなく接して下さった石川浩司(ひろし)さんが、昨晩亡くなられました(葬儀の予定など詳細は「タンゴの部屋」掲示板のご長女さんの書き込みをご覧下さい)。
古典からモダンまでこよなく愛し、柔軟な感性で的確な論評をされる石川さんの文章を、私は随分と参考にさせて頂いたものです。私がまだ駆け出しの頃、プグリエーセについて書いた文章を褒めて頂いたのも、嬉しい思い出です。それから、これは一般の人には触れる機会がなかったでしょうが、手書きの文字の整った美しさも、理路整然と物事を整理される、真面目で研究熱心なその性格をとてもよく表しているように思いました。貴重な資料を提供して頂いたことも、一度や二度ではありません。
雑誌「アンボス・ムンドス」4号(2000年1月)掲載の「ポスト・ピアソラ2」は、エドゥアルド・ロビーラとレイナルド・ニチェーレに関する特集でしたが(私も寄稿させてもらいました)、石川さんが書かれた「私たちは、こう聴いてきた」という記事の中から、忘れられない一文を転載しておきます。

まだ誰にも話していないのだが、私の葬式では読経はほどほどに切り上げて、途中から『タンゴ・ヴァンガルディア』に含まれる「友への挽歌」「コントラプンテアンド」「ピアノとオルケスタのための」の3曲をチェーンで演奏し焼香または献花して欲しいと思っている。だがこれはその時点で自ら演出出来るわけではないし、まだ女房にも息子にも、お寺の和尚さんにも相談したわけではないので、実現の可能性は不明だが、ロビーラの音楽はそれだけ純粋であり、魂を洗うものがある。言ってみれば私にとっての、あの世にまで持って行きたい音楽なのである。
1967年にポリドールから国内発売された『タンゴ・ヴァンガルディア』は、本国では"Tango vanguardia"(タンゴ・バングアルディア)として63年にMicrofonから発売された、Eduardo Rovira y su Agrupación de Tango Moderno(エドゥアルド・ロビーラと現代タンゴ集団)の3枚目のアルバム。長い間オリジナルの形では入手困難な状態が続いていたのですが、ちょうど今年になって(盤には(c)2008と書いてありますが恐らく発売が2009年にずれ込んだものと思われます)オリジナルに忠実な形で(しかも本国では当時モノラルのみだったのがステレオで!)復刻されたのです。ちょうど「ラティーナ」4月号に私が紹介記事を書いたので、一部引用しておきます。
61年の旗揚げ以降続いた弦楽4~5重奏入りの編成は本作が最後で、この後はギター入りトリオ編成に移行していくのだが、室内楽の響きを基調にしながら自在に展開していくあたりはロビーラの真骨頂と言え、その意味でも代表作。この上なく崇高でありながら「前衛」の気難しさなどこれっぽっちもなく、実は聴き手を選ばない音楽だったことに今改めて気付かされた。
というわけで、もちろん"Tango vanguardia"を聴きながらこれを書いています。
石川さん、いろいろとありがとうございました。どうぞ安らかにお眠りください。

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June 18, 2009

だまされた!(ピアソラの映画音楽)

ピアソラが生前に手掛けた映画音楽について、『アストル・ピアソラ 闘うタンゴ』に掲載のフィルモグラフィーにまとめたのはもう10年以上前のこと。その後、2006年に『ピアソラ 自身を語る』や日本盤CD『新婚旅行』で明らかになった通り、映画『新婚旅行』のための音楽は、実際には使われていなかったことが判明しています。
それ以外にもう一つ新たな謎として浮上したのが、『ヌードは御法度』なるブラジル製エロティック・コメディ映画に提供したという音楽のこと。これは、少なくとも私が調べた限りでは、それまでどの資料にも記述がなかったもので、やはり2006年に『ピアソラ その生涯と音楽』の中で明らかにされました(訳書では155ページ下段3行目から7行目)。ちょっと引用してみます。

一九七三年の彼の作曲の仕事のひとつは、ブラジルのアルナルド・ジャボール監督による映画のサウンドトラックだった。これはフランスでは『ヌードは御法度』と題されて公開された。

Dvd_2713「フランスでは…」とはどういう意味かというと、原書では"Released in France under the title Toute Nudité Sera Chatié"とフランス語題のことが書かれていただけの話で、ブラジルでの原題は"Toda Nudez Será Castigada"となります。73年という年代も気になり、幸いブラジルではDVD化されていることが判ったのですが(NTSC、リージョンフリー、英語字幕付)、なかなか手が伸びず、ようやく先日になって注文しました。
一昨日無事にブラジルから到着、早速ドキドキしながら掛けてみると、オープニングとともに流れて来たのは……、なんとコンフント9の「スム」でした^^;。演奏はレコードと同じ。音楽のクレジットも出て来ましたが、ピアソラはほかに「フーガ9」「孤独」が使われているだけで(こちらの2曲はまだ画面と音とで確認していませんが)、オリジナルの音楽は別の人でした。あ~あ、がっかり。「作曲」なんてしてないじゃん(怒)。

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June 14, 2009

アメリータのレコード その4

Dscf3703こちらはブラジルFermata盤のジャケット。使われているのはスペインAriola盤に使われたのと同じ写真ですが、裏焼きになってしまっています。

Dscf3702裏ジャケットには短いライナーノーツが載っています。ポルトガル語なのでうまく訳せないのですが、バイオグラフィー的な記述の後、次のように続きます。

“1974年にイタリアに戻り、私たちがお届けしている、そして恐らく彼女のキャリアで最高のレコードであろう、このLPを録音した。またアメリータは、彼女の大ヒット「ロコへのバラード」を再録音したほか、「3001年へのプレリュード」「みんなのビオレータ」「わが死へのバラード」「ブエノスアイレスの雨傘」「マティルデへの小さな歌」などマエストロ・ピアソラによる他の傑作を録音した”

あいまいな記述なんですが、この文章だけだと、全てが新録音のようにとれますよね。もちろん事実とは異なるわけですが。
曲名の下にあるクレジットは、
Produção:Aldo Pagani
Arranjos e regência:Astor Piazzolla
Foto:Franca Scarfiotti
と書いてあります。写真家の名前は、Ariola盤には記載がありませんでした(同じフォト・セッションからの別のカットが使われた、後述するアルゼンチンTrova盤シングルにはクレジットされています)。あと、レーベル面には"Lic. Aldo Pagani"とも書かれています。
ちなみにAriola盤の方は、ジャケットには上記のような記載がなく、盤面に
Arr. Musicales y Dir. de Orquesta: Astor Piazzolla
Producción: Aldo Pagani, Milán, para Ariola-Eurodisc, S.A.
とあります。Fermata盤のような「アルド・パガーニのライセンスにより」という記述ではなく、パガーニが「Ariola-Eurodiscのためにプロデュース」と書いてあるところが、他の盤とちょっと違うところです。どういう録音であるか、という記載はないわけですが。

判明している限り、"Las ciudades","Los paraguas de Buenos Aires","La primera palabra","No quiero otro","El gordo triste"の5曲は1972年にブエノスアイレスでアルゼンチンRCAのために録音された素材です。それをパガーニがコントロールできた理由は、パガーニ自身が『ピアソラ 自身を語る』の中で触れている通りで(302ページ)、ようするにイタリアRCAが“イタリア国内での”権利を譲渡した、というものですが、パガーニはこれを勝手に拡大解釈して、あたかも自分のプロデュース作品であるかのように、海外のレーベルに対してふるまったというわけです。

Tf1001こちらは、75年にアルゼンチンでTrovaから発売された"Pequeña canción para Matilde/Violetas populares"のシングル(TF-1001)。ジャケット・デザインは表裏ともまったく同一。"Publicado en Argentina bajo licencia de Produzione Aldo Pagani, Milán, Italia"(ミラノのアルド・パガーニ・プロダクションからのライセンスを受けてアルゼンチンで発売)と明記してありますが、この2曲は正真正銘パガーニのプロデュースで74年(私の推定では10月末もしくは11月)に録音されたもので、盤面には"Grabado en los Estudios Mondial Sound, Milán, Italia"(ミラノのモンディアル・サウンド・スタジオでの録音)ともはっきり書いてあります。このクレジットがあるのはこの盤のみ、ということですね。

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June 13, 2009

アメリータ・バルタールのレコードについて その3

Dscf3697アメリータのスペインAriola盤をどうしても入手したかったのは、実際の曲目、ジャケットのデザインやクレジットなどを確認したかったのももちろんですが、音もきっちり確認する必要がありました。というのも、研究家カルロス・クリの著書"Piazzolla - La música límite"や、歌詞集"Cancionero"のオラシオ・フェレール編所収のディスコグラフィ(いずれもピアソラの研究資料として欠かせないもの)では、"El gordo triste"や"La primera palabra"などについて、あたかもRCA Victor録音とAriola (España)録音の2種類が存在するかのような書き方がされていたからなんですね。実際には同じ録音であることが確認できました。
Dscf3699ちなみに雑誌"Los grandes del tango"No.85のアメリータ・バルタール特集では、「"Vamos Niña"(訳注:ここで「ニーニャ」になっているということは、現物にあたって書かれたことを裏付けているようです)を除いて、アルゼンチンのレーベル(RCAとTrova)からシングル盤で発売された」というコメントがありますが、こちらは正解。ただし発売年を1972年としているところが誤り。
なんでこんな混乱が起こるかというと、原因はプロデューサーのアルド・パガーニにあるわけなんですが、続きはまた。

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June 08, 2009

続・アメリータ・バルタール

あと2~3日か?と思ったアメリータのAriola盤、無事に届きました。わくわくしながら開封すると……。
ジャケットには曲目と作者以外、クレジットらしきものがない! しかも"Vamos Nina"(行こうニーナ)が"Vamos Niña"(行こうニーニャ)になってるし^^;、作者クレジットも"Horacio Ferrer/Astor Piazzolla"のはずが"Horacio Ferrer"になっているのが4曲もあるし。
88714aレーベル面の写真を載せておきますが(曲名や作者名の表記ミスはジャケット裏と同様)、わずかに「楽団編曲指揮アストル・ピアソラ」「制作アルド・パガーニ」などと地味~に書いてありますね。そう、ジャケットには作者名として以外、ピアソラの文字がないのです。ちなみにブラジルFermata盤の方は、ポルトガル語で"Arranjos e Direção de Orquestra ASTOR PIAZZOLA"って(スペルは間違っているが)大書きしてありますからね。この違いは大きい。
それよりも驚いたのが、(P)1975と書いてあったこと。そうか、75年に入ってからの発売だったんですね。てっきり74年だと思っていましたから。ジャケット写真も含め、続きはまた。 

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アメリータ・バルタールのレコード、最後の(?)謎解き

このブログで、アメリータ・バルタールのスペイン盤LP"Amelita Baltar"の謎について、『アストル・ピアソラの芸術? その4』および『エドゥモンダ・アルディーニとアメリータ・バルタールとピアソラ(改定版)』という記事で触れてから、もう4年以上経つんですね。その中で「それにしてもAriola盤、もう長いこと探しているのですが、見つかりません。番号が88.714-1ということまでは判ったのですが」と書いていたその盤が、遂に見つかりました! 番号は88.714-1じゃなくて、88.714-Iでした^^; 実はスペインからのその国際書留、まだ手元に届いたわけではなく、今日現在大阪国際支店から発送されたところなので(そんなことまで判る今の検索ってすごいですね)、届くまであと2~3日だと思いますが(ここから後は、件の『アストル・ピアソラの芸術? その4』を再読してからお読み下さいね)、既に曲目は確認済み。なんとブラジルFermata盤とは異なる8曲入りでした。雑誌"Los grandes del tango"No.85のディスコグラフィーは正しかった!
Ariola盤の番号が「88.714-1」だと教えてくれたのは、実はナタリオ・ゴリンでした。そして彼も8曲入りだと言ったのです。なので、現物を持っているのか?ジャケット写真をくれないか?などと問い合わせたのですが、それには答えぬまま、彼は逝ってしまった。私は、本サイトのディスコグラフィーでは、未確認のAriola盤をFermata盤と同内容と仮定していましたが、『ピアソラ 自身を語る』のディスコグラフィーではゴリンの言を尊重して、別内容として扱いました(xlページ)。そんなこと、どこにも書きませんでしたが。

ということで改めて、両者の曲目を書いておきます。

"Amelita Baltar" (スペインAriola 88.714-I)
A (1) Vamos Nina (2) Las ciudades (3) Los paraguas de Buenos Aires (4) La primera palabra
B (1) No quiero otro (2) Pequeña canción para Matilde (3) Violetas populares (4) El gordo triste

"Amelita Baltar" (ブラジルFermata 304.1045)
A (1) Preludio para el año 3001 (2) Balada para mi muerte (3) Balada para un loco (4) Vamos Nina (5) Las ciudades
B (1) Los paraguas de Buenos Aires (2) La primera palabra (3) No quiero otro (4) Pequeña canción para Matilde (5) Violetas populares

エドゥモンダ・アルディーニの"Rabbia e Tango"収録トラックと同一オケの使われた、Fermata盤の冒頭3曲は、この盤自体が初出だったんですねぇ。Ariola盤が届いたら、また報告します。
それから、先日、RCAからのシングル(もともとこれがオリジナルですが、こちらはモノラル)"La primera palabra/No quiero otro"(31A-2059)はピクチャー・スリーブ付きだったことを知ってまたまたビックリ! 無事ゲットしましたので31a2059
載せておきます。付けまつげが何とも言えませんね。

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June 04, 2009

黒田恭一さん死去

ピアソラ好きでも知られる音楽評論家の黒田恭一さんが亡くなりました。実際にお会いしたのは数回、いや1回だけだったかも。雑誌の対談企画だったのですが、私がひどい風邪を引いていて声がほとんど出ず、ご迷惑をお掛けしてしまったことを覚えています。『アストル・ピアソラ 闘うタンゴ』の時も『ピアソラ 自身を語る』の時も、日経の書評で褒めて頂いて、恐縮したものでした。もっといろいろお話したかったな……。
実は、今進めているピアソラ関連の企画があって(近日中に公表予定)、これも喜んで頂けると思っていたのに、本当に残念です。ご冥福をお祈りいたします。

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