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July 17, 2007

金沢で「ピアソラ黎明期 第2弾」 21日19時より

前回(またひと月以上開いてしまいましたが^^;)ちらっとお知らせしました、金沢蓄音器館での「SP盤で聴く、ピアソラ黎明期 第2弾」、もう今週末に迫ってしまいました。ちょっとは予告しないといけませんね。もちろん蓄音器館での催しですから、SP盤しか掛けません。前回もそうでしたが、今回も、一番新しい録音は、1961年のキンテートのレコードですから、ピアソラの初期の姿をお届けするわけです。特にテーマは決めていませんが、タイトル通りの黎明期ということで、アニバル・トロイロ楽団で編曲者として頭角を現わしてからキンテート結成までの歩みを追って行くことになります。
今回の目玉は、実は私の秘蔵盤の中でも、とりわけユニークなエピソードを持ったもの、これをお掛けしようと思うわけですが、その入手などの顛末について、ちょうど10年前の97年8月17日に、当時新旧タンゴ・ファンが集う重要な交流の場であったパソコン通信、ニフティサーブのFPOPULAR「ラテン大陸」会議室に書いたことがあります。今日は、それをここに再録してみたいと思います。

みなさんの中で、日頃SPレコード(昔の78回転盤)を聴いている人は、多くはないでしょう。タンゴやオールド・ラテンなどのファンでも、LPやCDになっていない音源にまで手を伸ばしている人は相当のものでしょうし。
私は未復刻のタンゴなどを聴く必要があるため、いくらか集めてきましたし、その中で骨太で凛々しい、LPやCDでは決して味わうことの出来ないSPならではの音の魅力にも惹かれるようになりました。
とはいっても、高いしモノはないしで、通常はほとんどLPやCDで間に合わせていますが。

SPなんて蓄音機で聴くの?なんて言われそうですが、コロムビアからはSPもかけられるポータブルな機種(昔風に言えば電蓄)も出ていますし、78回転対応のレコード・プレイヤーとSP用カートリッジがあれば、通常のオーディオ装置でも普通に聴くことが出来ます。

さて、先日友人某から、ピアソラの大変貴重なSPを分けてもらえることになり、お宅にお宅におじゃましました。そのSPというのは、ピアソラが1957年に弦楽オーケストラでオデオンに1枚だけ録音した"VANGUARDISTA"と"MARRON Y AZUL"で、その後一度も復刻されていないものです。"MARRON Y AZUL"はパリ時代にも録音しているし、オクテート・ブエノスアイレスでも録音していますが、チェロのホセ・ブラガート作の"VANGUARDISTA"はこれしかレコードがありません。それほど貴重なものです。友人某は自分の分は既にもっていて、また入手できたので1枚私に融通してくれることになったというわけです。
ところが何と、その友人某宅でそのSPは、不慮の事故により、真っ二つに割れてしまっていたのです! そう、SPは割れやすいのが欠点なんですね。とりあえず、せっかくなのでその盤は引き取ることにして持ち帰りました。

レコード・コレクターズ誌に連載されている岡田則夫氏の「蒐集奇談」(現在は「続・蒐集奇談」)は、SP蒐集家の苦労話や蘊蓄などが巧みな文章で綴られていて、いつも興味深く読んでいるのですが、どこかに割れたSPを修復した話がないかなぁとバックナンバーを探したところ、87年10月号掲載の第20回(この時点で一旦連載は終了し、その後「続・蒐集奇談」として再スタート、これは現在も連載中)に、以下の記述を見つけました。

 ヒビ、ワレ、カケはその道の名人の手にかかるとかなりのところまで修復が可能。まっ二つの盤も元通りになる。エポキシ系の接着剤を使う人が多いようだが、それぞれ秘伝がある。

肝心の「秘伝」については何も触れていないのですが、それでもやってみようと思い、半信半疑ながら東急ハンズで「ボンド超速エポキシ」というのを買ってきました。こなごなだったらあきらめるしかありませんが、きれいに二つに割れていたので、何とかなるかも知れないと淡い期待を抱きながら。
正方形のガラス板(以前、LPの盤反り修復用にあつらえたもの。当然2枚あります)に乗せて、神妙に作業開始です。最初、ぴったりと張り合わせられたのはよかったのですが、当然のように接着剤がはみ出して結構あせりました。どうしたものかと思いましたが、そのはみ出した分を指で擦ってみると、ポロポロと崩れるのですね。ちょっと擦ってはセロテープでペタペタはがし、そうするうちにはみ出した接着剤はほとんど取れました。

もちろん問題は、ちゃんとかかるかどうか。緊張しながら試聴です。
"VANGUARDISTA"の面はほとんどダメージがなく、綺麗に割れていましたので期待はしていましたが、完璧に再生! ノイズもほとんど気にならないレベル。
問題は"MARRON Y AZUL"で、割れるときにこちらの面に力が掛かったようで、割れた断面付近の溝と溝の間が欠けてしまったり、けっこうなダメージがありました。案の定、断面が溝にほとんど平行している部分では何カ所も針飛びしましたが、溝の修復作業(これはLPでもやってる私の「秘伝」?)にとりかかり、3時間かけて(ホントはこんなことやってるヒマはないのですが、やりだすと止まらないもので……)何とか針飛びは1ヶ所のみ、それもヘッドシェルに軽く指を添えてやると何とか通過するところまで漕ぎ着けました。

いやいや、SPというのは、なかなか大したもんです。修理すれば何年、何十年と使える昔の機械にも通じるところがあるようで。

今、ウチのプレーヤーとカートリッジだと、針飛びしながらも何とか聴けるわけなんですが、蓄音器だとどうなるか、試してみよう、というわけです。
ちなみに97年当時未復刻だったこの2曲は、その後98年に東芝EMI(この会社名も先日遂になくなってしまいました。何となくさみしい)から出た2枚組『ブエノスアイレスな夜 1945~1956』にて無事に復刻されましたが、現在では残念ながら廃盤となっています。
さらにその後、エアメールで海外から入手したアルフレド・ゴビ楽団のSPなど数枚が、やはり割れてしまっていたことがあり、同様の方法での修復を試みましたが、見事に失敗。盤の素材の微妙な質の違いが原因だったのか、気合いが足りなかったのかは、よく判らないのですが。

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