アストル・ピアソラの芸術?
アルゼンチン・ワーナー盤"Tres minutos con la realidad"(Milan 5046-65598-2)が手元に届きました。内容はEU・ユニバーサル盤(Milan 198 178-2)とまったく同一でした。ピアソラの挨拶と「プレリュードとフーガ」はしっかり収録されています。ユニバーサル盤はあまり市場に出回っていないので、ラティーナがワーナー盤の取り扱いを開始したことで、入手しやすくなりました。
さて、某匿名掲示板で、少し前に話題になっていた(荒れる原因にもなってしまった)廉価盤10枚組ですが(ヤフーオークションで『アストル・ピアソラの芸術』などと題してよく出ています)、まず最初に、私はそのセットは持っていませんし、例え安かろうと、買う気もありません。だから実際に聴いていないことを前提に、解説しておきます。
買わなくても中身が判るのは、もちろん曲目を見れば想像がつくからですが、サイトに載ったボックス裏の写真のクレジットをみれば一目瞭然、Licensed by Pagani Srl/Bella Musicaと書いてあるではありませんか。
かつてのピアソラのマネージャーであり、ピアソラのイタリア・カローゼッロ時代のプロデューサーでもあったアルド・パガーニの悪行については、これまでもあちこちで散々書いてきました。特にピアソラの死後、手持ちの音源(合法的なものと明らかに非合法のものが混在しているから、また始末が悪い)を各国の様々なレーベルに売りさばいて、ファンを混乱に陥れてきたわけですが、そのまとめ的(?)なものが、98年にドイツのBella Musicaからリリースされた10タイトル。一応以下に記しておきます。Vol.10のみが2枚組。
Vol. 1 Piazzolla en suite (BM-CD 31.7031)
Vol. 2 Anos de soledad (31.7032)
Vol. 3 Maria de Buenos Aires (31.7033)
Vol. 4 Piazzolla concertant (31.7034)
Vol. 5 Piazzolla & el Conjunto electronico (31.7035)
Vol. 6 Piazzolla & Jose Angel Trelles (31.7036)
Vol. 7 Piazzolla & Amelita Baltar (31.7037)
Vol. 8 Piazzolla & the movies (31.7038)
Vol. 9 Roma 1972 (31.7040)
Vol. 10 Milano 1984 (14.7001)
このBella Musicaというのがまた怪しげな会社で、パガーニとどういう話になっているのかは判らないが、また別のレーベルに転売を繰り返している。例えば同じドイツのDigimodeという会社からも00年に同様に10タイトル出ています。アルゼンチンのTrovaからも出ちゃっている。もともと自社で持っている音源も含まれているのに、ライセンス料払ってCD出しているんだから、バカみたい。
話がややこしいですね。まず上の10タイトルの中身を検証しなければいけません。一番酷いのがVol.1。実はこれのアルゼンチン盤(Trova CD 5059、2004年)をラティーナがディスコガイドに載せようとして、私が書いたボツ原稿を載せておきます。
これは悪徳プロデューサー、アルド・パガーニによる編集盤の中でも特に問題の1枚(98年以降ドイツなどで同内容のものが発売済)。映画『エンリコ4世』サントラ(84年)からの4曲((5)~(8))は元々パガーニが権利を持っている音源なのでまぁ問題はない。《天使》連作のうち(2)~(4)は表記の通り84年のミラノでのライヴ録音だが、80年代キンテートによる録音が存在しない(1)は、メロペアにより発掘された63年の放送録音が無断使用されている。最も酷いのは《四季》で、表記の通りコンフント9のイタリアでの72年のライヴなのは(10)のみで、他の3曲はキンテートによる演奏。(9)(11)はRCAへの70年のスタジオ録音の無断使用で、しかも(11)は「秋」ではなく「冬」だ! そして「冬」と表記されている(12)は「夏」(エルミタージュ音源のルガーノ・ライヴ)で、しかも曲の途中(1:36)から始まっている。叩き割りたいほどの恥ずべき編集だ。斎藤充正Vol.2はめちゃくちゃな編集盤。Vol.3はTrova盤"Adios Nonino"+"Pulsacion"B面、すなわち『ブエノスアイレスのマリア』のインスト抜粋。Vol.4は「バンドネオン協奏曲」シリーズ。Vol.5はそれまでもパガーニが各種レーベルに売り歩いていたコンフント・エレクトロニコとの海賊ライヴ。Vol.6はホセ・アンヘル・トレージェスとのTrova盤(もともとパガーニのプロデュース)にそれまで未発表だったカラオケ3曲を追加。Vol.7はアメリータ・バルタールとの録音(パガーニ・プロデュースのスペインAriola盤LP+1曲)。Vol.8はコンフント9のニセ・ライヴ+『エンリコ4世』サントラからの粗悪編集盤。Vol.9はコンフント9の海賊ライヴ。Vol.10はキンテートの海賊ライヴ2枚組。
で、Bella Musicaはこれらの音源を、日本の各レコード会社にも売ろうとしたのです。
(この話、続きます)


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